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川上未映子さんによる新訳〈絵本ピーターラビット™〉全23巻が完結。翻訳・挿絵の見どころをご紹介!

2022年3月からはじまった、〈絵本ピーターラビット™〉全23巻の新訳プロジェクト。翻訳を手がけるのは、小説家・詩人の川上未映子さんです。
3か月に1度ほどのペースで2年間刊行し、今年(2024年)3月、ついに全23巻が完結しました! この機会に、新訳版の特色をたっぷりご紹介します!

ピーターラビットのおはなし
ビアトリクス・ポター 作・絵
川上未映子 訳
名久井直子 装幀
早川書房 好評発売中

ピーターラビット™とは?

『ピーターラビットのおはなし』より

いたずらっ子のピーターは、おかあさんの言いつけをやぶって、マグレガーおじさんの畑で大冒険。おいしい野菜をたべほうだい。ところが、おじさんに見つかり、さあたいへん! 

『ピーターラビットのおはなし』より

世界でいちばん有名な、いたずらっ子のうさぎを描く『ピーターラビットのおはなし』は、イギリスの絵本作家ビアトリクス・ポター(1866~1943年)によって書かれました。

うさぎのピーター、赤りすのナトキン、こねこのトムやモペットちゃん、あひるのジマイマなどの動物たちがおりなす全23巻の絵本です。

愛らしいキャラクターたち、繊細で美しい絵、遊び心のある文章、短いながらもくり返し読みたくなる物語は、刊行から100年以上が経ついまも、世界中で愛されつづけています。

挿絵が6点も追加! 色鮮やかによみがえる挿絵!

『ピーターラビットのおはなし』の冒頭では、ピーターのおとうさんが「にくのパイ」にされたという衝撃的な過去が語られます。この「にくのパイ」を持ったマグレガーおばさんの絵を知っていますか? 

「にくのパイ」にされたピーターのおとうさんの挿絵。『ピーターラビットのおはなし』より

この挿絵は、イギリスで刊行された初版に掲載されていたものの、「子どもの読者が怖がる」という理由で、1903年の5刷目から削除されていました。それ以来、文章によって、ピーターのおとうさんのことは語られてきました。
やがて2002年、イギリス版での改訂(後述)の際に、この挿絵が絵本に再録されました。
そして、この絵を第1巻『ピーターラビットのおはなし』のなかで見られるのは、日本では今回の新訳版が初めてです。
(挿絵の削除・再録の経緯、マグレガーおばさんの挿絵が2種類あることなどが、河野芳英氏の『ピーターラビット™の世界へ――ビアトリクス・ポター™のすべて』に詳しく記されています。)

さて、本国イギリスで絵本〈ピーターラビット™〉を刊行するフレデリック・ウォーン社は、2002年の初版刊行100周年を機に、全面的な改訂をおこないました。

その際、第1巻『The Tale of Peter Rabbit(ピーターラビットのおはなし)』に挿絵6点が復元・追加されました。また、水彩の色と細部は、かつてない精度で再現され、長い時間の経過のなかで生じた傷みなどを修繕することができました。

このたびの新訳版は、その挿絵、装幀、造本を活かしてつくります。また、ポターが作品を発表した順番とほぼ重なる作品番号も、イギリス版に準じています。

しげみに逃げ込んだピーター。英国で2002年にはじめて追加された。『ピーターラビットのおはなし』より。
ピーターとマグレガーおじさんのおいかけっこのはじまりです。 『ピーターラビットのおはなし』より

川上未映子さんによる新訳

翻訳を手がけるのは、小説家・詩人の川上未映子さん。
リズミカルで、ピーターのやんちゃさがイキイキと伝わる翻訳です。
ふりがなをつけた漢字をほどほどに使っているので、大人にとっても読みやすいです。小さなお子さんにとっては、漢字との出会いになるといいなと願っています。

『ピーターラビットのおはなし』より

おかあさんの言いつけを破って、畑めがけて走りだすピーター。この有名なピーターの絵も、本文の挿絵として復元されました。挿絵と新訳があわさって、躍動感が感じられますね。

そんないたずらっ子のピーターについて、川上さんはこう語ります。

ピーターはいわゆるドジっ子で、「行っちゃいけないよ」と言われた瞬間から走っていって、案の定とんでもない失敗をします。今だったら、「なぜあなたはこんなこともできないの?」「なぜそんなこともわからないの?」と言われてしまいそうなのに、ポターはそれをピーターのチャームとして描いている。そして読者もピーターのチャームとして受けとっている。これは本当にすばらしいことだと思います。人とちょっと違うところ、個性とはなにかということも、23巻を通してキャラクターが教えてくれます

名久井直子さんによる高級感のある装幀

本シリーズの装幀を手がけるのは、ブックデザイナーの名久井直子さん。
英国版にアレンジをくわえた、高級感のある仕上がりです。

1:箔押しカバー
英国版とおなじホワイトカバーに、日本版では特別に金の箔押しをほどこしています。

2:開きやすく丈夫な製本
読み聞かせのときに開きやすい丈夫な綴じ方に。永く受け継がれる絵本になってほしいとの願いを込めました。

3:表紙
カバー下の表紙の色味は英国版のシックな色合いを活かし、厚さもお子さまの手に持ちやすいように少し薄くしています。

著者紹介 ビアトリクス・ポター™ Beatrix Potter™
1866年~1943年。イギリス・ロンドン生まれ。幼少期から動物と植物を愛し、スケッチにはげむ。1902年に『ピーターラビットのおはなし』を出版すると、またたく間にベストセラーに。出版、農場経営、自然・文化保護と、多方面で活躍する。

訳者紹介 川上未映子(かわかみ・みえこ)
小説家・詩人。2008年、『乳と卵』で芥川賞を受賞。2019年に発表した『夏物語』は40カ国以上で出版が進み、欧米各紙誌で高く評価されるなど、国際的な活動を展開している。

書誌情報

絵本 ピーターラビット™ シリーズ 全23巻
ビアトリクス・ポター作・絵 川上未映子訳

◉第1巻 1650円/第2巻~第13巻、17、18巻 各1540円/第14巻~第16巻 各1760円/第19巻 2090円/第20巻~第23巻 各1430円(すべて税込)
全国の書店、ネット書店で、好評発売中です。

絵本〈ピーターラビット〉シリーズ全23巻

第1巻:ピーターラビットのおはなし
第2巻:赤りすナトキンのおはなし
第3巻:グロスターの仕たて屋
第4巻:ベンジャミン・バニーのおはなし
第5巻:2ひきのわるいねずみのおはなし
第6巻:はりねずみティギーのおはなし
第7巻:かえるのジェレミーのおはなし
第8巻:こねこのトムのおはなし
第9巻:あひるのジマイマのおはなし
第10巻:フロプシーのこどもたち
第11巻:ちっちゃなねずみふじんのおはなし
第12巻:つまさきティミーのおはなし
第13巻:まちねずみジョニーのおはなし
第14巻:きつねのトッドのおはなし
第15巻:こぶたのブランドのおはなし
第16巻:ひげねずみサミュエルのおはなし
第17巻:パイがふたつあったおはなし
第18巻:ジンジャーとピクルスのおはなし
第19巻:こぶたのロビンソンのおはなし
第20巻:いじのわるいうさぎのおはなし
第21巻:モペットちゃんのおはなし
第22巻:アプリイ・ダプリイのわらべうた
第23巻:セシリ・パセリのわらべうた
※作品番号と、早川書房版の刊行順番は異なります。

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『ピーターラビットのおはなし』出版120年となる2022年、早川書房が公式出版社になりました。
世界でいちばん有名な、いたずらっ子のうさぎを描く『ピーターラビットのおはなし』。その初版の刊行から120年をむかえる2022年、フレデリック・ウォーン社(ペンギン・ランダムハウスUK傘下)との提携により、早川書房は、日本におけるピーターラビットの公式出版社になります。
フレデリック・ウォーン社と協力し、シリーズの魅力を出版を通じて伝えるのが「公式出版社」です。


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