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【アーサー・ミラー編】ハヤカワ演劇文庫50冊を一挙紹介!~本を読んだら劇場へ、舞台を観たら本を手に。~

早川書房は演劇青年だった創業者・早川清の「自由に本が読みたい」という決意のもと、1945年8月15日に設立された出版社です。その創業の志をつなぐ演劇専門レーベル「ハヤカワ演劇文庫」は2006年に創刊。15年にわたり国内外の優れた戯曲をご紹介してきました。そしてハヤカワ文庫50周年にあたる今年、50冊目の演劇文庫「ピーター・シェーファーⅠ」を刊行いたします。この節目に、ハヤカワ演劇文庫の既刊をご紹介!今回はアメリカ現代演劇を代表する劇作家、アーサー・ミラー編。息を詰めて緊密なドラマの展開を追うもよし、詩情あふれる台詞に陶酔するもよし。あなただけの戯曲の楽しみ方を探してみてください。


アーサー・ミラー2


1.「アーサー・ミラーⅠ セールスマンの死」 倉橋健訳

ウイリー なぜ? この先、一文の収入もなく、ここでこうしていることのほうが、度胸があるんですか?

かつて敏腕セールスマンで鳴らしたウイリー・ローマンも、得意先が引退し、成績が上がらない。帰宅して妻から聞かされるのは、家のローンに保険、車の修理費。前途洋々だった息子も定職につかずこの先どうしたものか。夢に破れて、すべてに行き詰まった男が選んだ道とは……家族・仕事・老いなど現代人が直面する問題に斬新な手法で鋭く迫り、アメリカ演劇に新たな時代を確立、不動の地位を築いたピュリッツァー賞受賞作。

解説/岡崎凉子 本体1000円。


2.「アーサー・ミラーⅡ るつぼ」 倉橋健訳

プロクター それがわたしの名前だからです! 一生ほかに名前を持つことができないからです! わたしは嘘をつき、その嘘に自分で署名した! わたしは絞首刑になる人たちの足の塵にもなれない人間だ! 名前なしに、どうして生きてゆける? 魂は渡した、名前は残してくれ!

実直な農夫プロクターは召使いの少女アビゲイルと一夜の関係を持ってしまう。少女はプロクターを我がものにすべく、神の名のもと彼の妻を「魔女」として告発。折しも村人の悪魔憑きへの恐怖や日頃の相互不信と相まって、村には壮絶な魔女狩りの嵐が吹き荒れる……17世紀の実話に基づく本作は、1953年に発表されるやマッカーシズムに揺れる米国に衝撃を与えた。峻厳すぎる正義の暴走と人間の尊厳に鋭く迫る、巨匠不朽の代表作。

解説/岡崎凉子 本体1000円。


3.「アーサー・ミラーⅢ みんな我が子/橋からのながめ」 倉橋健訳

ジム クリスにしてみれば、あんなことがあって、どうして生きてゆけばいいか、わからないでしょうね。嘘をとおすのは……一つの才能ですからね。あなたにはそれがある。わたしにもある。だが、彼にはない。(みんな我が子)

第二次大戦後のアメリカ。特需により事業を成功させたジョーと、息子の戦死を受け容れられないケイト夫婦のもとへ、一家の恐るべき秘密を知る人物が来訪し……(「みんな我が子」)。ブルックリンに暮らすエディは、不法移民の従兄弟ロドルフォを匿う。だが溺愛する姪とロドルフォが恋仲になると、エディは正気を失っていくのだった――(「橋からのながめ」)。戦争や家族の問題を描く傑作2篇を収録。

解説/広田敦郎 本体1500円。


4.「アーサー・ミラーⅣ 転落の後に/ヴィシーでの出来事」 倉橋健訳

クェンティン 無視しているつもりはないけど――現に昨夜だって、裁判の準備書面を読んで聞かせたじゃないか?
ルイーズ 裁判の書類を読むことが、話し合うことなの?(転落の後に)

赤狩りと二度の離婚で心に深い傷を負ったクェンティンは、激動の半生を顧みる――著者とマリリン・モンローの結婚をはじめ、私生活に多く材を取った自伝的傑作「転落の後に」。親ナチス政権下の留置場。強制連行された男たちが身分を証明するため待機している。しかし取調室に呼び出されたまま帰らない者が多く……ユダヤ人狩りの実相を描き、衝撃の結末へとなだれ込む一幕劇「ヴィシーでの出来事」。

解説/一ノ瀬和夫 本体1500円。


5.「アーサー・ミラーⅤ 代価/二つの月曜日の思い出」 倉橋健訳

ビクター おれは駆け引きのしかたを知らんものでね。それに、今さらおぼえようとも思わんね。
エスター そんなにお高くとまっていないでよ。あたしたち、はたちじゃないのよ。このお金がいるのよ。(代価)

マンハッタンのアパート。父を看取った弟夫婦のもとに、医師として成功した兄が、数十年ぶりに訪ねてきた。父を見捨てられず、自分の人生を犠牲にした弟に兄が告げた衝撃の真実とは――「代価」。ニューヨークのとある部品工場の事務所。18歳の新人バートの“ありふれた月曜日”が、様々な人間模様とともに鮮やかに描かれる。著者の若き日を投影した自伝的作品「二つの月曜日の思い出」。傑作二篇。

解説/有泉学宙 本体1500円。


アーサー・ミラー

1915年ニューヨークに生まれる。ミシガン大学で演劇を学び、在学中からラジオ・ドラマの脚本を執筆。1944年『幸運な男』でブロードウェイ・デビュー。1947年『みんな我が子』で注目を集める。『セールスマンの死』(1949年)は、エリア・カザン演出で、トニー賞、ピュリッツァー賞を受賞。『荒馬と女』など映画脚本、小説や評論と幅広く活躍した。1965?69年、国際ペンクラブ会長を務めた。私生活では女優のマリリン・モンローと結婚していたことでも知られる。2005年2月没。 


>第一回【アメリカ現代演劇編】

>第二回【渡辺えり編】

>第三回【フランス近代演劇編】

>第四回【三好十郎と秋元松代編】

>第五回【別役実とケラリーノ・サンドロヴィッチ編】

>第六回【イギリス現代演劇編】

>第七回【群像劇編】

>第八回【岸田國士編】

>第九回【ニール・サイモン編】

>第十回【歴史劇編】

>第十一回【ハロルド・ピンター編】


次回は最終回【劇作家のことば編】です。



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