見出し画像

【ハロルド・ピンター編】ハヤカワ演劇文庫50冊を一挙紹介!~本を読んだら劇場へ、舞台を観たら本を手に。~


早川書房は演劇青年だった創業者・早川清の「自由に本が読みたい」という決意のもと、1945年8月15日に設立された出版社です。その創業の志をつなぐ演劇専門レーベル「ハヤカワ演劇文庫」は2006年に創刊。15年にわたり国内外の優れた戯曲をご紹介してきました。そしてハヤカワ文庫50周年にあたる今年、50冊目の演劇文庫「ピーター・シェーファーⅠ」を刊行いたします。この節目に、ハヤカワ演劇文庫の既刊をご紹介!今回はノーベル文学賞受賞の劇作家、ハロルド・ピンター編。息を詰めて緊密なドラマの展開を追うもよし、詩情あふれる台詞に陶酔するもよし。あなただけの戯曲の楽しみ方を探してみてください。


ハロルド・ピンター2



1.「ハロルド・ピンターⅠ 温室/背信/家族の声」 喜志哲雄訳

ルート おれは代表だ!(彼の胃袋をなぐる)
  おれは委託された!(彼の胃袋をなぐる)
  おれは代表だ!(彼の胃袋をなぐる)
  おれは任命された!  ――「温室」

病院とおぼしき国営収容施設。患者6457号が死亡、6459号が出産していたという報告に、怒れる最高責任者は職員らを質す。だが事態は奇妙な方向へ……全体主義の暴力を描く『温室』。陳腐きわまりない情事の顛末を、時間を逆行させて語り強烈なアイロニーを醸す代表作『背信』他一篇。日常に潜む不条理を独特のユーモアと恐怖のうちに斬新に抉り出し、現代演劇に革命をもたらしたノーベル賞劇作家による後期作品集。

本体1200円。



2.「ハロルド・ピンターⅡ 景気づけに一杯/山の言葉ほか」喜志哲雄訳

ロジャー あと二百万。そうしたらもう一杯おごるよ。二百万上乗せでもう一杯だ。
スティーヴン (ゆっくりと)駄目だな、ロジャー。二千万だよ、死人の数は。
ロジャー 丁度かい?
スティーヴン そうだ、死人の数は。丁度だよ。 ――「丁度それだけ」

そわそわと何度もウィスキーを啜りつつ、監禁中の反体制者を饒舌にいたぶる拷問者ニコラス。彼は何に怯えているのか……『景気づけに一杯』。二人の高級官僚が核戦争の死者数を楽しげに予想する『丁度それだけ』。少数民族にたいする言語弾圧を鋭く突く『山の言葉』他。類稀なる詩人の感性で全体主義体制の暴力を告発し続けた、闘うノーベル賞劇作家ハロルド・ピンター。政治劇を中心とする渾身の八篇を収録。

収録作品:『いわばアラスカ』『ヴィクトリア駅』『丁度それだけ』『景気づけに一杯』『山の言葉』『新世界秩序』『パーティの時間』『月の光』

本体980円。



3.「ハロルド・ピンターⅢ 灰から灰へ/失われた時を求めてほか」  喜志哲雄訳

ジーン つまりね、それはそれとして、君はどうなんだい、ほんとのところ?
レイク おそろしく元気だ。
ジーン うん、確かに元気そうな声をしてる。
レイク 元気なんだよ。ただ、その……ほら、分るだろ……
ジーン うん。分るよ。 ――「それはそれとして」

ホロコーストの記憶に苛まれる女。その悪夢はどこまで真実なのか。彼女を問い質す男の真意はどこにあるのか……『灰から灰へ』。二十世紀文学の最高傑作を、斬新な手法で脚色した『失われた時を求めて』。著者最後の劇作『それはそれとして』他。現代世界を覆う「巨大な嘘の綴れ織り(タペストリー)」に、詩性煌めく劇の言葉は屹然と対峙する。本国に先駆け書籍化する二篇を含む、現代英国演劇界屈指の鬼才による珠玉の六篇を収録。

収録作品:『灰から灰へ』『祝宴』『失われた時を求めて』『記者会見』『声』『それはそれとして』

本体1000円。


■ハロルド・ピンター Harold Pinter

1930年、ロンドン生まれ。俳優としてキャリアをスタートし、57年、処女戯曲『部屋』で劇作家に転身。同年に『誕生日のパーティ』『料理昇降機』を発表後、『管理人』(59)で注目を集め、その後『帰郷』(64)などの作品で地位を確立。追いつめられた人間をめぐる不条理を、恐怖とユーモアのうちに描く独特の作風は、その名を冠して"ピンタレスク"と呼ばれる。初期の心理的リアリズムを指向する作風から、『風景』(67)などの詩的な作品を経て、とりわけ『景気づけに一杯』(84)以降は政治色の強い作品を次々と発表。ラジオ・テレビドラマ、映画の世界でも活躍し、《フランス軍中尉の女》(81)《スルース》(2007)などの映画脚本で知られる。人権活動家としても著名で、イラク戦争開戦時にも積極的な反戦活動を展開した。他の代表戯曲に『誰もいない国』(74)『灰から灰へ』(96)など。05年ノーベル文学賞受賞。08年12月24日、78歳で逝去。


>第一回【アメリカ現代演劇編】

>第二回【渡辺えり編】

>第三回【フランス近代演劇編】

>第四回【三好十郎と秋元松代編】

>第五回【別役実とケラリーノ・サンドロヴィッチ編】

>第六回【イギリス現代演劇編】

>第七回【群像劇編】

>第八回【岸田國士編】

>第九回【ニール・サイモン編】

>第十回【歴史劇編】


今後も【アーサー・ミラー】など、随時アップしていきます。

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!