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最新作『ハウ・トゥー』(来る1月23日発売!)でも大活躍、マンロー・ワールドの住人たちを紹介。マンロー特集その2

前回ご紹介したランドール・マンロー氏のマンロー・ワールドには、バルザックの〈人間喜劇〉シリーズや手塚治虫のマンガ(ヒゲおやじやハムエッグ、アセチレンランプですね)でおなじみの、いわゆる「スターシステム」があって、それが魅力の一環となっているように思います。『ハウ・トゥー』刊行&『ホワット・イフ?』文庫化記念特集第2回の本記事ではそこに注目し、マンローの諸作品を違った角度からご紹介します。

来年1月に出る『ハウ・トゥー』も、

ハウ・トゥー(仮)

既刊の『ホワット・イフ?』も、

ホワット・イフ_文庫2冊セット

ウェブマンガ家を名乗る著者手ずからのマンガイラストが魅力の多くをなしています。目鼻立ちなど、極限まで特徴を削ぎ落とした棒人間マンガですが、それでもそれぞれは個々にキャラをもち、キュートな魅力でいっぱい。どの人物も、あれこれのマンガをつうじて一貫した、確固たる人格があるわけでは決してありませんが、おもに外見に基づいてなんとなく名前がつけられていて、xkcd(前回の記事をご覧ください)ファンのあいだではその名前で呼びならわされている模様です。以下、前回の特集でご紹介したファンサイト、explainxkcd.comでの解説を参考に、主要キャラとその魅力をご紹介しましょう。なお、以下の解説もexplainxkcd.comの解説同様、著者自身の見解ではないことを申し添えます。

※以下のランドール・マンロー自身によるマンガイラストはすべて、『ホワット・イフ?』Q1Q2(ランドール・マンロー著、吉田三知世訳、ハヤカワ・ノンフィクション文庫)より。

キューボール
『ホワット・イフ?』でも最多登場回数を誇る、xkcdの特徴なき「エブリマン」。『ホワット・イフ?』や『ハウ・トゥー』だけを読んだ感じでは、じっと何かを見つめたり考え込んだり、突拍子もないことを思いついて実行しようとする(ので、けっこうひどい目によく遭う)けれど、邪悪なことを目論んだり、ひとにツッコミを入れたりはあまりしないタイプとお見受けします。explainxkcd.comでは、呼び名がないと話が進まないせいか、キューボールと呼ばれているようです。ちなみに、cueball とは英語で「ビリヤードの手玉」のことですが、俗語で「ハゲ頭」という意味もあるとか。

キューボール

(『ホワット・イフ?』Q1、「ニューヨーク・スタイルのタイムマシン」より)

メガン
xkcdではキューボール君に次ぐ登場回数を誇る、女性版「キューボール」ともいうべきキャラクター。『ホワット・イフ?』や『ハウ・トゥー』を読んでいる限りでは、キューボール君ほどトンデモな言動はしないようですし、けっこうあちこちでツッコミ役にまわっているような。最も「フツーな」キャラクターであるように思いますが、xkcdのマンガの描写によれば、「一風変わった癖があり、目的のためにまわりが目に入らない様子のことがままある」そうです。メガン(Megan)という名前があるのは、これもxkcdのマンガのなかで、何度かそういう名前で呼ばれたからだとか。ちなみに、『ホワット・イフ?』『ホワット・イズ・ディス?』『ハウ・トゥー』を通じて、名前で呼ばれていたことはなかったはず。

ベレー帽とメガン

(『ホワット・イフ?』Q1、「半分空のコップ」より。メガンは向かって右)

ポニーテール
私見では『ホワット・イフ?』『ハウ・トゥー』でもひときわ目を引くキャラクターで、ブロンドのポニーテールが目印。女性としてはxkcdではメガンさんに次ぐ登場頻度とのこと。キャラクターとしては、メガンさんより日常の「視野狭窄度」が低く、教養ある「役柄」で登場することや、「警官」「セキュリティポリス」など、特定の役職をもつ女性としての起用も多数。博士の設定で白衣を着て登場することも多いようですね。『ホワット・イフ?』『ハウ・トゥー』などではそんな姿を見せてはくれませんが。『ホワット・イフ?』では、「世界をちょっとだけ壊してみようかな……」というような物騒な言動(下のマンガを参照)や、Eruという書きかけの単語(英語話者ならeruptionを必ず連想する文脈で)を見て「ERUDITE(学識がある)かな?」と推測する、斜め上の教養の深さを垣間見させる発言(「ツイッター」という章)が印象的です。

ポニーテール

(『ホワット・イフ?』Q1、「元素周期表を現物でつくる」より)

『ハウ・トゥー』ではハイジャンプやスケートボード、サッカー(フットボール)の選手として、世論調査の電話オペレーターとして、さらに国際宇宙ステーションのクルーとして活躍し、さらに航空業界をパニックに陥れかねない危険行為も披露してくれますので乞うご期待。

黒帽子
『ホワット・イフ?』でも忘れがたい、「もっとパワーを挙げてみたらどうなんだい?」と、無責任にレーザー・ポインターの出力を極限まであげて月を危機に陥れようとする人物。やはりxkcd本篇でも、「混乱や社会規範に反する事態を巻き起こしたいがためだけに邪悪な企みを画策する」キャラクターとして定着している模様です。explainxkcd.comによれば、子供のころからこの黒帽子をかぶっていたらしい(ちなみに、現在はこのポークパイハットスタイルに落ち着いていますが、登場最初期には黒いトップハットだったそうな)。メガネにカンカン帽がトレードマークだった月亭可朝を思い出します。
『ホワット・イフ?』には登場していないようですが、xkcdには黒帽子の帽子が白になった、白帽子というキャラも頻出します(こちらの帽子こそカンカン帽〔boater〕なのだそうですが)。白帽子はxkcd本篇では「論理的に見当違いの発言をして、マンガの論点をはっきりさせる」キャラクターだそうで、黒帽子とはずいぶん違いますね。『ハウ・トゥー』ではこの白帽子、数カ所に登場しますが、冷静なツッコミ役だったり、アヤしい金勘定でポニーテールを丸め込もうとする、黒帽子寄りのキャラになったりもしています。

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(『ホワット・イフ?』Q1、「レーザー・ポインター」より)

ベレー帽男
上のマンガの、メガンさんの向かって左にいるのが「ベレー帽男」です。explainxkcd.comの説明では、「ナイーブな楽観主義者だが、マンガのなかで犠牲者にはならない」キャラとされていますが、まさに上のマンガで楽観主義者として登場しています。犠牲者にはならない、というのも大事なポイントで、この「半分空のコップ」という章のオチをごらんください。xkcd本篇では「実存主義者」「ニヒリスト」としても登場するそうですが、『ホワット・イフ?』『ハウ・トゥー』ではそんな素振りはないですね(じつはこちらにはそんなに出てこない)。そんな彼もちょっと見てみたい。

ブロンディー
個人的に好きなキャラなので気になっていました。『ホワット・イフ?』ではニュースキャスターとして現れる彼女は、xkcd本篇でもキャスターとして何度も登場しますが、長めのブロンドの髪が特徴。xkcdでは「自分の過去をタキオンビームで消去した」と、番組中で大胆告白しています。

ブロンディ

(『ホワット・イフ?』Q2、「リヒター・マグニチュード15」より)

『ハウ・トゥー』でもお目にかかれるかな、と楽しみにしていたら、驚くような側面を垣間見ることになりました……くわしくは『ハウ・トゥー』収録の「ツリーを飾るには」をごらんください。

リス
explainxkcd.comを興味本位であちこち見ていて「なるほど」と思ったのが、この「リス」でした。xkcd本篇やwhat if?では、リスは「リアルすぎる描写を緩和したり避けたりしたいときに持ち出される」キャラクターなのだそうです。『ホワット・イフ?』の「マシンガンでジェットパックをつくる」という章にいきなりリスが出てくるのですが、なるほどそういう、「リアリティー回避役」だったと知って納得がいきました。単に好きだから出したわけじゃなかったんですね……それにしても、『ホワット・イズ・ディス?』15ページ、洗濯機の解説ページの右下にも脈絡なくリスが出てきますが、これはどういうことなのか……?

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(『ホワット・イフ?』Q1、「マシンガンでジェットパックをつくる」より)

以上、マンロー・ワールドのレギュラー陣とその魅力について簡単にご紹介しました。マンロー氏の著作に親しんでいるかたにも、これからお読みくださるかたにとっても、ご興味を高める読み物になれば幸いです。

『ホワット・イフ?』については、ここここ、あるいはここで試し読みができますので、ご覧になってみてください。

次回は年明け、1月8日ごろになる予定です。

All illustrations by Randall Munroe


ハウ・トゥー』(ランドール・マンロー、吉田三知世訳、46判並製、本体予価1600円)は、2020年1月23日、早川書房より発売予定です。


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