「ケラリーノ・サンドロヴィッチ自選戯曲集」発売記念!(No.004) 「陥没」作品紹介
不条理劇からウェルメイド劇まで、振り幅の大きい作品群を精力的に発表し続ける現代劇の鬼才、ケラリーノ・サンドロヴィッチ。
著者初となる自選戯曲集(全2巻)では、広がりのある作品世界を一望する8作品を一挙収録します。
「ケラリーノ・サンドロヴィッチ自選戯曲集1 ナイロン100℃篇」
(書影をタッチすると、amazonページにジャンプします)
収録作品:
「シャープさんフラットさん 」
「2番目、或いは3番目 」
「社長吸血記」
「ちょっと、まってください」
「睾丸」
「ケラリーノ・サンドロヴィッチ自選戯曲集2 昭和三部作篇」
(書影をタッチすると、amazonページにジャンプします)
収録作品:
「東京月光魔曲」
「黴菌」
「陥没」
解説:徳永京子[ナイロン100℃篇]
嶋田直哉[昭和三部作篇]
装幀:はらだなおこ
写真:平塚篤史
発売:6月18日
定価:4,600円+税[ナイロン100℃篇]
3,800円+税[昭和三部作篇]
*著者直筆サイン入りをお求めの方はこちら!
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発売に向けた特別企画として、早川書房のnoteでは、
自選戯曲集に収録する全8作品を、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)のコメントとともに紹介。
今回は「昭和三部作篇」収録の「陥没」の紹介です。
◎「陥没」作品紹介
光作 本心を聞きたいんだよ。本当の気持ちを。ヒトミとサダハルくんから。だからもうちょっとだけ待っててくれ、な。私二人の夢枕に立って胸の内を聞き出すから。(…)
下倉(若い神) あれ使っちゃいますか?
ツマ子(女神) ......持ってきてるの?
下倉(若い神) 一応、七つ道具は。(…) 本心を聞き出せばいいんでしょ。夢枕なんかに立つよりこっちの方がずっと手っとり早いですよ。効果は一〇分。サッサと聞いてサッサと諦めてください。(「陥没」)
「昭和三部作」のラストを飾る「陥没」は、2017年にシアターコクーンで上演。
「東京月光魔曲」が昭和4〜5年の”世界大恐慌”を、「黴菌」が昭和20年の”戦争”をモチーフとしていたのに対し、「陥没」は日本の戦後復興の象徴とも言える昭和39年(1964年)開催の”東京オリンピック”をモチーフとしている。
舞台となるのは、東京の代々木。オリンピックをあてこんで建設された、複合娯楽施設のラウンジである。
施設を計画した父・光作は完成前に他界。今は娘のヒトミがその遺志を継ぎ、オープンに向けて切り盛りをしている。
プレ・オープンのある1日。ヒトミの元夫であり、父の部下でもあったサダハルが、再婚の婚約パーティーをするために施設を訪れる。しかし、祝いの場にはどこかギクシャクした空気が漂う(なお、ヒトミとサダハルの元夫妻役は、小池栄子と井上芳雄が演じた)。
ラウンジには様々な人々が訪れる。ヒトミの現在の夫、サダハルの若い婚約相手、その友人のテレビタレント、サダハルの弟と母、余興に招かれた奇術師、そして……
この世に未練をのこした男と、この世ならざるものによって巻き起こされる、”秋の夜の夢”。
KERAののびやかなヴォイスが天衣無縫につむいだ、ファンタジックな恋愛喜劇!
◎ケラリーノ・サンドロヴィッチ コメント
(本書収録「あとがき」より)
正直言って、七年も間が空くと、もう今更完結編もないんじゃないかと悩んでいたのだった。二〇一三年九月に東京オリンピックの再招致が決まったことが背中を押したと言ってよい。二〇一六年の年末から執筆と稽古が始まった。年を越して本格的に執筆と稽古。当初は、「日本人がもっとも希望をもったであろう高度成長期の裏側を、暗いトーンで描く」つもりだったのに、完成してみたらこんなに明るい芝居になってしまうのだから、まったくアテにならない。『陥没』なんて題名も、なんかそぐわなくなってしまった。後半、犬山イヌコ演ずる鳩が、山西惇演ずる八雲に語る、少し長めの告白が、『陥没』というタイトルを思いついた時、頭にあった風景である。良し悪しは別にして、第一作と対称的に、いかにも自分らしいトーンの作品だと思う。執筆後半は、さして悩まずとも、登場人物たちが勝手に喋ってくれた。
今回で「昭和三部作」すべての紹介を終えましたので、次回から「ナイロン100°C篇」のご紹介にうつります!
◎バックナンバー
「シャープさんフラットさん」
「東京月光魔曲」
「黴菌」
◎著者略歴
ケラリーノ・サンドロヴィッチ
劇作家、 演出家、 映画監督、 音楽家。1963年1月3日生まれ。82年、 ニューウェイヴバンド「有頂天」を結成。またインディーズ・レー ベル「ナゴムレコード」を立ち上げ、70を超えるレコード・CDを プロデュースする。85年、「劇団健康」 を旗揚げ、 演劇活動を開 始。92年解散、93年に「ナイロン100°C」を始動。99年、『フロー ズン・ ビーチ』 で第43回岸田國士戯曲賞を受賞し、 現在同賞の選 考委員を務める。2018年秋の紫綬褒章を始め、 第66回芸術選奨文 部科学大臣賞、 第24回読売演劇大賞最優秀演出家賞、 第26回読売 演劇大賞最優秀作品賞(ナイロン100°C『百年の秘密』)、 第4回ハ ヤカワ「悲劇喜劇」 賞(世田谷パブリックシアター+KERA・ M A P # 0 0 7 『 キ ネ マ と 恋 人 』) な ど 受 賞 多 数 。 音 楽 家 と し て は 、 ソ ロ活動の他、「有頂天」(2014年再結成)、鈴木慶一とのユニット 「No Lie-Sense」、ケラ&ザ・シンセサイザーズなどで、ライブや 新譜リリースを活発に展開中。