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「ケラリーノ・サンドロヴィッチ自選戯曲集」発売記念!(No.003) 「黴菌」作品紹介

不条理劇からウェルメイド劇まで、振り幅の大きい作品群を精力的に発表し続ける現代劇の鬼才、ケラリーノ・サンドロヴィッチ。
著者初となる自選戯曲集(全2巻)では、広がりのある作品世界を一望する8作品を一挙収録します。

「ケラリーノ・サンドロヴィッチ自選戯曲集1 ナイロン100℃篇」

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(書影をタッチすると、amazonページにジャンプします)

収録作品:
「シャープさんフラットさん 」
「2番目、或いは3番目 」
「社長吸血記」
「ちょっと、まってください」
「睾丸」

「ケラリーノ・サンドロヴィッチ自選戯曲集2 昭和三部作篇」

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(書影をタッチすると、amazonページにジャンプします)

収録作品:
「東京月光魔曲」
「黴菌」
「陥没」

解説:徳永京子[ナイロン100℃篇]
   嶋田直哉[昭和三部作篇]
装幀:はらだなおこ
写真:平塚篤史

発売:6月18日
定価:4,600円+税[ナイロン100℃篇] 
   3,800円+税[昭和三部作篇]


*著者直筆サイン入りをお求めの方はこちら!
http://www.e-fanclub.com/cube/webshop/search.asp?search_kwd=%83P%83%89%83%8A%81[%83m


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発売に向けた特別企画として、早川書房のnoteでは、
自選戯曲集に収録する全8作品を、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)のコメントとともに紹介。
今回は「昭和三部作篇」収録の「黴菌」の紹介です。

◎「黴菌」作品紹介

 俺が四つの時だよ......等(ひとし)兄貴が死んだ日だ......俺はそこの病院の裏で犬と遊んでた......ノラ犬だよ......
(…)その日俺、そんなことになるなんて夢にも思わねえで犬と遊んでたんだよ......きったねえ犬だったな......だけどなついてて可愛かった......ボール投げるとくわえて戻ってくんだ......その犬がボール追っかけてったままいなくなっちまったんだよ......呼ぼうにも名前がねえ......しょうがねえから犬!犬!ってさ......声が嗄れたよ......
(…)「どうしたんだ?」って声が聞こえて、ふり向くと等兄貴だった......必死に涙ふいたよ...... 言ったろ。やさしい兄貴だったんだよ、他の二人と違って......(「黴菌」)

「昭和三部作」の2作目は、「東京月光魔曲」から1年後、同じくシアターコクーンで2010年に上演された「黴菌」。
時代設定は、「東京月光魔曲」の昭和4〜5年から下り、昭和20年の3月から12月までを扱っている。日露戦争の軍需景気で財を成した五斜池(ごしゃいけ)家が、戦局の悪化・敗戦によって斜陽していく様が描かれる。
「東京月光魔曲」がテンポのいい場面転換によって展開されていたのに対し、「黴菌」には場面転換がほとんどなく、五斜池家の広大な敷地にある屋敷のリビングで物語が展開されている。

ドラマの中心となるのは、五斜池家の三兄弟(なお、上演では、長男を山崎一、次男を生瀬勝久、四男を北村一輝が演じた)。この兄弟にはかつて、三男の等(ひとし)がいたのだが、幼くして亡くなっている。
屋敷には次々と訳ありげな人物がおとずれる。長男が営む脳病院の患者、軍部の要人、三兄弟の父の妾の兄……。
複雑を極める人間関係と、劇的要素を水面下に隠すことによって語られた、”アウトロー”たちの敗戦物語。


◎ケラリーノ・サンドロヴィッチ コメント
(本書収録「あとがき」より)

まずは、戦争に支えられて生きている三兄弟の話を書こうと決めた。そうするとおのずと彼らの周囲に集う人々も、所謂「平均的な戦争への意識」とは異なる感覚をもつことになろうから、こりゃ群像劇として抜群に面白くなる、というのが構想段階での勝算だった。三部作において自らに課した共通のルールは、「昭和史のうち書きたい時代を切り取り」、「ヒーローとして表舞台に出ることのないアウトロー達を描く」ということ(この点は本作が最もうまくいったと思う)と、もうひとつ、「作品毎にテイストを大きく変える」ことだった。転換のない密室劇にしたのは、回り舞台を使って東京の街をパノラミックに描いた『月光魔曲』との差異を大きく意識したからだ。演出面でもスタイルが大きく異なる。もっとも、第三作に至って、時間が空いたこともあって、そんな差異なんぞどうでもよくなってしまうのだが。


次回は「昭和三部作」のラストを飾る「陥没」をお届けします。


◎バックナンバー
シャープさんフラットさん
東京月光魔曲


◎著者略歴
ケラリーノ・サンドロヴィッチ
劇作家、 演出家、 映画監督、 音楽家。1963年1月3日生まれ。82年、 ニューウェイヴバンド「有頂天」を結成。またインディーズ・レー ベル「ナゴムレコード」を立ち上げ、70を超えるレコード・CDを プロデュースする。85年、「劇団健康」 を旗揚げ、 演劇活動を開 始。92年解散、93年に「ナイロン100°C」を始動。99年、『フロー ズン・ ビーチ』 で第43回岸田國士戯曲賞を受賞し、 現在同賞の選 考委員を務める。2018年秋の紫綬褒章を始め、 第66回芸術選奨文 部科学大臣賞、 第24回読売演劇大賞最優秀演出家賞、 第26回読売 演劇大賞最優秀作品賞(ナイロン100°C『百年の秘密』)、 第4回ハ ヤカワ「悲劇喜劇」 賞(世田谷パブリックシアター+KERA・ M A P # 0 0 7 『 キ ネ マ と 恋 人 』) な ど 受 賞 多 数 。 音 楽 家 と し て は 、 ソ ロ活動の他、「有頂天」(2014年再結成)、鈴木慶一とのユニット 「No Lie-Sense」、ケラ&ザ・シンセサイザーズなどで、ライブや 新譜リリースを活発に展開中。

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