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「ケラリーノ・サンドロヴィッチ自選戯曲集」発売記念!(No.002) 「東京月光魔曲」作品紹介

不条理劇からウェルメイド劇まで、振り幅の大きい作品群を精力的に発表し続ける現代劇の鬼才、ケラリーノ・サンドロヴィッチ。
著者初となる自選戯曲集(全2巻)では、広がりのある作品世界を一望する8作品を一挙収録します。

「ケラリーノ・サンドロヴィッチ自選戯曲集1 ナイロン100℃篇」

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(書影をタッチすると、amazonページにジャンプします)

収録作品:
「シャープさんフラットさん 」
「2番目、或いは3番目 」
「社長吸血記」
「ちょっと、まってください」
「睾丸」


「ケラリーノ・サンドロヴィッチ自選戯曲集2 昭和三部作篇」

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収録作品:
「東京月光魔曲」
「黴菌」
「陥没」

解説:徳永京子[ナイロン100℃篇]
   嶋田直哉[昭和三部作篇]
装幀:はらだなおこ
写真:平塚篤史

発売:6月18日
定価:4,600円+税[ナイロン100℃篇] 
   3,800円+税[昭和三部作篇]   


***


発売に向けた特別企画として、早川書房のnoteでは、自選戯曲集に収録する全8作品を、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)のコメントとともに紹介していきます。
前回は、今企画の第1弾として、KERAの”私戯曲”とも言える稀有な作品「シャープさんフラットさん」を取り上げました。
今回は順番を少し変更し、KERAの「昭和三部作」の1作目「東京月光魔曲」をご紹介いたします。


◎「東京月光魔曲」作品紹介

 ゆうべ、夢にかあさんが出て来た......。
澄子 ......へえ......どんな夢?
 地震の夢。(...)かあさんがね、瓦礫の下から手をのばして言うんだ......「おとうさんを殺した人は見つかったかい?」って。泣きながら言うんだよ......。血だらけの顔で、それでも目だけはしっかり見開いててさ、その目から大きな涙がボロボロこぼれてた......(「東京月光魔曲」)

「昭和三部作」の1作目は、2009年にBunkamuraシアターコクーンで上演された「東京月光魔曲」。
舞台は1929年〜1930年の東京。関東大震災以後変貌した都会風俗は、 世界大恐慌の影もあいまって、終末的な不安や喧騒に包まれている。
日露戦争で父親を、関東大震災で母親を亡くし、二人で身を寄せ合って暮らす姉弟、澄子と薫。この姉弟を軸に、動物園で爬虫類の研究をしている男とその妻、この夫婦の家に居候として住むことになる田舎から上京した兄弟らがスケッチ的なテンポの良さで活写される。
なお、姉弟役は松雪泰子と瑛太が演じた。
モダニズム時代の〈東京〉の風俗を随所に盛り込み、当時のポピュラーソング〈月光価千金〉をレビュー形式で取り入れ、さらに谷崎潤一郎や江戸川乱歩的な甘美なあやしさをリミックスした〈魔曲〉。
それまで劇団での自由奔放な創作に軸足を置いていた著者が、シアターコクーンという「大きな空間」と、「昭和」という時代に真正面から挑戦した一作。

◎ケラリーノ・サンドロヴィッチ コメント
(本書収録「あとがき」より)

谷崎と乱歩と夢野久作を一緒くたにしたりしたら、いろんな人に怒られるだろうし、当人たちもたまったもんじゃなかろうが、そうした世界を目指してしまったのだから仕方ない。稽古初日に、例によって、冒頭の屋根裏部屋のシーンと戦場での回想シーンぐらいしか台本がなかったから、時間を埋める意図もあって、昭和最初期の記録映像を皆に見せた。想像よりずっと楽しそうな当時の庶民の姿や、活気溢れる浅草や銀座の風景を共有しておきたかった。この明るさと背反する闇こそが、作品で描きたかった世界だからだ。この度読み返してみると、よくもまあ、自分の柄にない領域で奮闘したものだと思う。俳優も戸惑ったのではないか。もうすっかり忘れていたから、意外な展開(自分らしくない展開)にスイスイ読んだ。


次回は、1945年の日本敗戦を背景にした三兄弟のドラマ「黴菌」を紹介します。



◎「ケラリーノ・サンドロヴィッチ自選戯曲集」作品紹介バックナンバー
第1回:「シャープさんフラットさん」


◎著者略歴
ケラリーノ・サンドロヴィッチ
劇作家、 演出家、 映画監督、 音楽家。1963年1月3日生まれ。82年、 ニューウェイヴバンド「有頂天」を結成。またインディーズ・レー ベル「ナゴムレコード」を立ち上げ、70を超えるレコード・CDを プロデュースする。85年、「劇団健康」 を旗揚げ、 演劇活動を開 始。92年解散、93年に「ナイロン100°C」を始動。99年、『フロー ズン・ ビーチ』 で第43回岸田國士戯曲賞を受賞し、 現在同賞の選 考委員を務める。2018年秋の紫綬褒章を始め、 第66回芸術選奨文 部科学大臣賞、 第24回読売演劇大賞最優秀演出家賞、 第26回読売 演劇大賞最優秀作品賞(ナイロン100°C『百年の秘密』)、 第4回ハ ヤカワ「悲劇喜劇」 賞(世田谷パブリックシアター+KERA・ M A P # 0 0 7 『 キ ネ マ と 恋 人 』) な ど 受 賞 多 数 。 音 楽 家 と し て は 、 ソ ロ活動の他、「有頂天」(2014年再結成)、鈴木慶一とのユニット 「No Lie-Sense」、ケラ&ザ・シンセサイザーズなどで、ライブや 新譜リリースを活発に展開中。

ありがとうございます!今日のおすすめは『息吹』です。
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