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【日本語版メッセージ公開】『千個の青』&『わたしたちが光の速さで進めないなら』巻頭掲載の、著者から日本の読者へのメッセージを公開します!【韓国新世代SF作家登場】

チョン・ソンラン『千個の青』2021年10月18日刊行記念!

2020年12月刊行のキム・チョヨプ『わたしたちが光の速さで進めないなら』に続き、チョン・ソンラン『千個の青』を刊行! 韓国科学文学賞の第2回にて中短篇部門で大賞と優秀賞を受賞した作品を収録した『わたしたち~』、そして第4回の長編部門で大賞を受賞した『千個の青』。

同じ賞のウィナーであるふたりは、どちらも1993年生まれ。
それぞれが日本語版に寄せてくれたメッセージには、これまで日本のSF作品に触れてきたふたりによる、日本の読者への熱い言葉が記されています。
どちらも全文公開! 是非読んでください。

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チョン・ソンラン(©307studio)

●『千個の青』巻頭収録

日本の読者のみなさまへ
 韓国で、創作するうえで影響を受けた作品はなにかと訊かれるたびに、必ず挙げるのが『デジモンアドベンチャー』です。この言葉を日本の読者のみなさまにお伝えできることをとても嬉しく思います。
 いつか自分も選ばれし者としてデジタルワールドに招待されるかもしれないと胸を高鳴らせていたわたしは、のちに、世界の均衡と平等について悩む大人、そして、招待されなかった世界への未練を書き綴る小説家へと成長しました。
 メディアに囲まれて育った同年代の読者なら、言語や国境を超えた共通のときめきと、世界への期待をもっているのではないでしょうか。
『千個の青』は、わたしが世界に期待するものを詰めこんだ小説です。どうかこの世界が、日本の読者のみなさまにとっても健やかで、温もりあるものでありますように。
 そしてもう一つ、わたしはまだ、デジタルワールドへ行けるという希望を捨てていません。
 チョン・ソンラン

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キム・チョヨプ

●『わたしたちが光の速さで進めないなら』巻頭収録

日本語版への序文
 人は誰しも、この世界の外のどこか別の場所、遠くて美しいもの、広大で圧倒的な何かを希求する心を、少なからず持っているのではないでしょうか。きっと、そうしたものに人一倍強く惹かれる人たちが、SFを読んだり書いたりするのだと思います。わたしもまた、宇宙にある無数の星と惑星、宇宙人との遭遇、過去と未来を行き来する奇妙な冒険、変わり者の科学者の実験室で誕生する不思議な生命体といったものが大好きです。現実からはるか遠くへ想像を馳せると、まるで飛行機が離陸するときのようにぴりっと張り詰めたときめきを感じます。この本に収録されている作品には、そういった遠い場所や見知らぬ存在に長年抱いてきた愛情が込められています。
『わたしたちが光の速さで進めないなら』は、わたしの初の作品集です。この本が出る前、デビューしたばかりの新人作家だったわたしは、SFというジャンルに慣れ親しむために、韓国語に翻訳されたSF本をほとんど読み尽くしました。そのなかには、同時代の日本のSF作家たちの小説もたくさんありました。言語と文化は違っても、SFというジャンルが持つ魅力はやはり世界共通なのだと思い、日本で今SFを書いている作家の方々に親しみを感じました。
 何より、今この本を開いてくださっている日本の読者の皆様に感謝しています。わたしの物語が海を越えて皆様のもとに届くのだと思うと、驚異さえ覚えます。たとえ光の速さで行くことはできなくても、物語を通じてお互いに触れられるということをとても嬉しく思います。そしていつか、読者の皆様に直接お会いできる日を心待ちにしています。
 二〇二〇年十月     キム・チョヨプ

【千個の青】廃棄寸前の競走馬とロボット騎手を救おうとする少女たちの、近未来青春小説!【韓国新世代SF作家登場】

「生きることの意味を問いかけている」「SFが苦手な人にもぜひ手にとってほしい」「こういう話こそ今必要とされている」『わたしたちが光の速さで進めないなら』レビューと感想