東京いきもの散歩

いくつ知ってる? 「東京」の名前がついた生き物 【連載】『東京いきもの散歩』(川上洋一)



東京23区でたくましく暮らす生き物たちを訪ね歩く『東京いきもの散歩』。新宿生まれの生物研究者・川上洋一さんが案内役です。
第1回目 新宿にタヌキ!? 生息地には意外な歴史あり
第2回目 工場跡地がトンボの楽園に大変身!?

本書には、都内のガイドとともに、読めば誰かに話したくなるコラムも満載。今回、特別に公開するのはその1つ。

トノサマガエルに間違えられたカエルや、正体不明だった哺乳類が登場します!

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ご当地の名前がついた生き物といえば、イリオモテヤマネコ(沖縄県・西表島)やヤンバルクイナ(沖縄県・山原)がいます。でも、「トウキョウ」の名前をもつ生き物も意外と多いのです。

トウキョウダルマガエル(写真:川上洋一)

最もなじみ深い種類といえば、トウキョウダルマガエル。ただ「そんなカエルは見たことも聞いたこともない」という反応も多いようです。

実はこのカエル、東京近辺では「トノサマガエル」と呼ばれていました。本当のトノサマガエルは、仙台平野から関東地方には分布していません。この2種類、外見はよく似ていますが、トノサマガエルには、より後脚が長い、オスは繁殖期に黄金色になるといった特徴があります。

トノサマガエルが東アジアに広く分布するのに対して、トウキョウダルマガエルは日本の固有種。大陸と日本がつながっていた時代に渡ってきた前者が、もともとすんでいた後者の生息域に勢力を伸ばしてきたとも考えられています。

トウキョウサンショウウオ

両生類では、トウキョウサンショウウオも知られています。有名なオオサンショウウオよりはるかに小さく10㎝ほど。東京西部の西多摩郡多西村(現在のあきる野市)で発見されました。

生息地は、丘陵の雑木林と谷間に谷戸田があるような「里山」。山の手にはすんでいません。春になると水たまりで、クロワッサンのような形をしたゼリー状の袋に入った卵を産みます。開発や水場の乾燥化で、絶滅が心配される種類です。

トウキョウヒメハンミョウ

庭や公園でも見かけることがあるのはトウキョウヒメハンミョウ。7~8月ごろに現れる、体長10㎜にも満たない地味な色をした甲虫。近づくと、短い距離だけ飛んで逃げます。

こんなに小さくても、じつは肉食。幼虫も裸地に穴を掘って潜み、通りかかったアリなどを捕らえます。

分布域が東京の周辺と九州の一部に限られていることから、人間によってもちこまれた移入種ではないかとも考えられています。

トウキョウトラカミキリ

トウキョウトラカミキリはかなりレアな昆虫です。10㎜前後と小型で、灰色に黒いしま模様という地味な装いのうえ、都内では山地や丘陵地のみに生息。春にだけ現れて、カエデのような花や伐採された広葉樹の材に集まります。見つけたら、上級の昆虫好きといえるでしょう。

トウキョウコシビロダンゴムシ

危険を感じると体を丸め、ボール状になることで有名なダンゴムシ。都会で見られるのは、ほぼ移入種のオカダンゴムシです。日本在来種のトウキョウコシビロダンゴムシは、落ち葉が厚くつもって湿度が高い、自然が豊かな森林でしか見ることができません


世界最小の哺乳類として有名なトウキョウトガリネズミは勘違いによって長らく正体不明だった動物。1905年に「東京」で採集されたものをもとに、新種として記載・発表されました。しかし再発見されることなく50年が経過。よく調べてみると、標本に添付されているラベルに「Yezo(蝦夷=現在の北海道)」を、「Yedo(江戸=東京)」と間違えて記入していたことが判明しました。その後、本来の採集地である北海道での生息も確認され、一件落着となりましたが、だれがなぜ間違えたのかはナゾのままです。

(写真:佐久間聡・原島真二・吉田譲・川上洋一)

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●川上洋一(かわかみ・よういち)
1955年、東京都新宿生まれ。生物研究者。1970年代から環境教育に携わる。自然のしくみや豊かさを紹介する執筆活動のかたわら、講演や観察会、地上波のバラエティ番組などで活躍。里山にすむ生物の調査研究や保全活動にも取り組む。日本鱗翅学会会員・トウキョウサンショウウオ研究会会員。著書に『世界珍虫図鑑』、『東京 消える生き物 増える生き物』など多数。


川上洋一『東京いきもの散歩——江戸から受け継ぐ自然を探しに』は2018年6月19日に早川書房より刊行予定です。

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