そして夜は甦る2018

原尞の伝説のデビュー作『そして夜は甦る』全文連載、第16章

ミステリ界の生ける伝説・原尞。
14年間の長き沈黙を破り、ついに2018年3月1日、私立探偵・沢崎シリーズ最新作『それまでの明日』を刊行します。

刊行を記念して早川書房公式noteにて、シリーズ第1作『そして夜は甦る』を平日の午前0時に1章ずつ公開いたします。連載は、全36回予定。

本日は第16章を公開。

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そして夜は甦る』(原尞)

16

 彼女の第一印象は強いていえば哀しい明るさとでも形容するしかないようなものだった。ブザーに応えてアパートのドアを細めに開けた海部雅美は、四十才前後の顔色のすぐれない女だった。化粧をしていれば、五年前なら男好きのする顔だったろうと思わせるような女だった。五年前には、三年前なら……と思わせたかも知れない。女としての魅力は見る者の好みにもよるだろうが、今日出会った三人の若い娘たちに較べると、遙かに女としての存在感があった。バルザックは〝三十才を過ぎなければ、女には顔がない〟と書いているそうだが、そういう言葉も実例を見なければなかなかピンと来ないものだ。三十女や四十女が必ずしも女としての顔を持っているとは限らない。
「どなた?」と、彼女は訊いた。
「電話をした、沢崎です」と、私は告げた。
 彼女はドア・チェーンをはずして、「どうぞ、お入りになって」と言った。私は玄関に入って靴を脱ぎ、コートを脱ぎながら、彼女についてアパートの奥へ進んだ。居間兼客間とダイニング・キッチンの境目で立ち止まって、彼女が言った。「台所のほうが暖かくて、何かと便利がいいんですけど、構わないかしら?」
 私はうなずいた。きれいに片づいたダイニング・キッチンに入って、彼女のすすめる椅子に腰をおろした。彼女は私のコートを受け取って、壁際の棚の上にあるテレビの隣りに置いた。ついでに、天気予報を映していたテレビのスイッチを切った。彼女の頭のうしろで束ねた髪が、動くたびに上下に揺れていた。
「彼から連絡はありましたか」と、私は訊いた。
「まだです」と、彼女は答えた。「こんなことは初めてなので、あの人の身に何かあったのではないかと心配です」
 彼女は寒くもないのに、黒のVネックのセーターの肩を自分で抱くような仕種をした。小柄だが痩せ型なので、すらりとした身体つきだった。
「あなたのおっしゃったような電話もかかってきませんわ」彼女は、キッチンで湯気を立てている琺瑯のポットから、二人分のコーヒーをカップに注いで、テーブルに運んで来た。「砂糖とミルクは、ご自分でどうぞ」と言って、彼女は私の向かいの椅子に腰をおろした。
「ありがたい」私は何も入れずにコーヒーをすすった。眠気が覚めるような、美味いコーヒーだった。
 私は上衣の内ポケットから都民銀行の封筒を取り出し、中身が見えるように半分引き出して、彼女の前のテーブルに置いた。「これが、昨日の午前十時頃、海部氏が私の事務所に来たときに預けていったものです。その伝票のお蔭で、どうにかあなたにたどり着くことができた」
 私は、彼が事務所の前で私を待っていたことから、事務所を出ていくまでのことを詳しく話した。続けて、佐伯名緒子から夫捜しの依頼を受けた経緯を、電話の時より詳しく説明した。
「今日の午後、依頼人と私は佐伯氏のマンションへ行ったのです。海部氏もやはり昨日の昼過ぎに、佐伯氏のマンションを訪ねるということでしたね?」
「ええ。最後にかけてきた電話で、そう言ったのです」
 私は声を落とした。「いいですか。これから話すことは、どうか気持を落ち着けて聞いてもらいたい。私たちがマンションへ行ってみると、入口のドアが開いたままで、明かりも昨夜からつけっぱなしになっているようでした。それだけでなく、たぶん二人以上の人間が激しく争ったと思われる形跡が残っていたのです」
 私は敢えて死体のことは言及しなかった。私の話を聞くうちに、海部雅美の顔色がますます蒼ざめ、コーヒー・カップを音を立てて受け皿に戻した。「激しく争った形跡ってどういうことですか」
 私は軽く咳払いをした。「申しわけないが、それ以上のことは言えないのです。すでに、その件については警察が捜査を始めており、私もいささか微妙な立場に置かれています。ただ、一つだけはっきり言えることは、その争いがあったときに、海部氏がその場にいたということを示すようなものは何もありません」
 彼女の顔にわずかながら安堵の色が浮かんだ。
「いずれにしても」と、私は続けた。「佐伯氏は先週の木曜日から行方不明で、海部氏も昨日の午後から消息を絶っている。これは、二人が何か共通のトラブルに捲き込まれていると考えるほうが筋が通っています。私の仕事は佐伯氏を捜し出すことだが、それが海部氏やあなたの利害と対立するとは思えない。そうではないですか。私も海部氏が無事ここへ戻って来られることを望んでいるし、彼が佐伯氏の捜索に協力してくれることを望んでいます」私は自分の言ったことが彼女によく伝わるように、少し間を取った。「私の話に納得がいかれたら、海部氏のこと、そして彼と佐伯氏の関係について、あなたがご存知のことを教えてもらえませんか」
「わたしにはどうしたらいいのか判りませんわ」彼女は途方に暮れたような声で言った。椅子から立ち上がって、自分のコーヒー・カップを流しに運んだ。「あの人のことを話すことは、それだけで彼にとって大変不利な状況を招きそうに思えるのです」
 彼女はテレビのある棚から〝カティサーク〟のボトルを取って、酒の準備をはじめた。ほとんど、無意識にそうしているように見えた。
 私は言った。「事務所で見た海部氏は、確かに何か深刻な問題を抱えている様子だった。しかし、こう考えるわけには行きませんか。佐伯氏が失踪するようなことがなければ、彼と佐伯氏は一緒に私の事務所を訪れて、私に何か仕事の依頼をしたと思われる。そのときは、たぶん彼は自分でその問題を私に明かしたはずです。ところが、佐伯氏の失踪で予定の歯車が狂った。彼の抱えている問題が、あなたの懸念しているようなことであればなおさら、彼があなたに電話もかけて来ないという状態でほうっておいていいとは思えませんよ」
 彼女は食器棚からグラスを出しながら、私を振り返った。私の最後の言葉はかなり効き目があったようだが、決心がつくまでに至らなかった。
「わたしは少し飲みます。どうも落ち着かなくって。あなたは何をお飲みになる? 水割りかロックですけど」
「いや、結構です」私はコーヒーの残りを飲んだ。
「車ですか」と訊いて、彼女はポットのコーヒーを注いでくれた。
「それもあるが──」当たり障りのない話をしていても、彼女から何かを訊き出すことはできないだろう。「私は酒は一人で飲むことにしている」
「まァ、ほんとに? 寂しい酒だこと」彼女は水割りのグラスを手にして、私の向かいに戻った。
「習慣になって七年も経てば、それが普通の酒です」
「共にグラスを傾ける相手がないわけじゃないでしょう?」
「七年前まではね。私に探偵の仕事を教えてくれた男で、五十才を過ぎるまでは一滴の酒も飲まない男だった」
 渡辺賢吾の細君が癌で死亡した夜、長年絶縁状態にあった一人息子が妻と子供──つまり、彼の孫をつれて通夜の席に現われた。学生運動家だった一人息子の逮捕が原因で彼が警察を辞職して以来の、父子の再会だった。二人は遺体の前で十数年ぶりに和解した。だが、翌日の葬式に息子たちは参列できなかった。着替えのために自宅に戻る途中、交通事故に遭って三人とも即死したからだ。彼はたった二日ですべての血縁者を失った。息子たちの葬式がすんだ夜の、彼の最初の酒から、ほぼ三年間私は彼と共にグラスを傾け合った。三年後には、見事なアルコール依存症患者ができあがった。
「一人の信頼すべき人間が典型的なアル中になる過程を、私は見届けることになった。そうなるのに酒の量は大して必要ではなかった……七年前のある夜、彼と私は何かのはずみで禁酒を誓い合った。実にくだらない誓いだった。どちらが言い出したのかも憶えていない。その夜以来、彼は少なくとも私の前では一滴の酒も飲まなくなったし、私も人前では酒を飲まなくなった──それだけのことです」
「わたしはお客さんにお酒を飲ませる商売で二十年も生きて来たのよ。悲惨な話ならほかにいくらでも知ってるわ」
 私は微笑した。「不幸な人間のチャンピオンを決めようと言うのではないのです。端で見ると意味のない習慣にも、なにがしかの理由はあるということです」
「そうね。でも、わたしはアル中なんかじゃありませんから、ご心配は無用よ。付き合ってくれても、あなたに変な罪悪感を与えたりはしないわ」彼女はグラスの中身を半分ほどあおって、顔をしかめた。
「私が何かを心配しているとすれば、むしろ自分が誰かの前でアル中になることを、だと思う。だから、一人で飲む」
「そんなことは、わたしの知ったことじゃないわ」
「共にグラスを傾け合う──洒落た科白だが所詮はそういうことです。誰かがアル中になるのを防ぐことはできない。誰かがアル中になるのに手を貸すのは実に簡単なのに」
「何だか、折角の酒がまずくなって来たわ」彼女はグラスをテーブルに戻した。
「人を肴に飲む酒はそんなものです」と、私は言った。
 彼女は苦笑した。「あなたも変わった人ね。黙って一緒に飲んでくれたら、あの人のことを話したかも知れないのに」
「酒を過大に評価しすぎるね。過小評価するのも間違いだが。飲めば話すという人間は、待っていればいずれ話しはじめる」
 彼女は私を睨みつけると、グラスを取って残りの酒を飲みほした。そして、お代わりをつくるために立ち上がった。私はテレビの下の棚で赤い合成樹脂の灰皿を見つけると、タバコを出して火をつけた。
 その部屋は明らかに女の住居だった。どこにも男が同居しているという気配がなかった。彼女は、海部氏は夏以来ここに住んでいると言った。三カ月も生活している場所に何の痕跡も残さないような人間がいるだろうか。ここに男が住んでいるというのは、海部雅美という女の妄想にすぎないのではないか──私はハッとして、頭を左右に振った。一瞬の睡魔に襲われて、妄想に取り憑かれているのは私のほうだった。
 一杯目より色の濃いグラスを手に戻って来た彼女が、タバコの煙に鼻をうごめかして言った。「あなたも、そのタバコなの?」
 私はテーブルの上に置いた濃紺のパッケージを手に取った。「そういえば、彼も私の両切りのタバコを苦にせずに喫っていたな」
「あの人が、まるで大変な発見でもしたみたいに、そのタバコを買ってここへ駈け込んで来たときのことを思い出すわ」
 彼女は急に酔いがまわったように、額に手を当てた。「あの頃は何もかもうまく行くような気がしていたのに……」
「このタバコがどうしたんです?」と、私は訊いた。
 彼女は私の問いを無視した。「探偵さん、わたしが話せば、あの人がここに帰って来れるようにすると約束できる?」
 私は頭を振った。「約束はできない。しかし、私に彼の安全を左右する機会があり、しかも佐伯氏を捜すという仕事に支障がない限り、あなたの要望に沿うよう全力を尽くそう」
 彼女は私の言葉を値踏みするように、じっと私を見つめた。
「分かったわ」彼女はグラスの中身を流しにあけた。「あの人に最初に会ったのは、七月の後半だったと思う。調布の駅の近くでわたしがやっているバーにふらりと入って来たの。喧嘩でもしたように絆創膏や繃帯だらけの身体を薄汚れた夏服に包み、黒いアタッシュ・ケースを金庫みたいに大事に抱え込んでいたわ。それから、毎晩九時頃に現われて看板まで、一言も口をきかずに酒を飲んで行くの。一度トイレで気分が悪くなって倒れていたことを除けば、判で押したような毎日だったわ。あの人は一週間経っても自分からは何も喋らないし、こっちが何か話しかけると一所懸命に考えて一言、二言答えるってふうだった。だから、手はかからないし、外見はハンサムだし、お酒は結構飲んでくれるし、黙ってても翌日は必ず来てくれるし、理想的なお客さんだったわね。あれは、通いはじめて十日ほど過ぎた頃で、確か定休日の前の晩だったと思う。お店を閉めて外へ出てみると、彼が店の表でまた気を失って倒れていたの。介抱するとすぐに気がついたけど、とてもそのままほうってはおけないので、結局ここへ連れて来て寝かせたの……それが、あの人とあの黒いアタッシュ・ケースがわたしの人生に割り込んで来た、そもそもの馴れ染めってわけ」
「定休日の前の晩と言ったね」と、私は口を挟んだ。
「そうよ。だから……第四日曜の前の晩だわ」
 私はタバコを消し、ポケットから手帳を出してカレンダーのページを開いた。「七月の第四日曜は二十八日。その前の晩で、彼が通いはじめてすでに十日は過ぎていた?」
「ええ、そうよ」
「だとすると、彼があなたの店に初めて顔を出したのは、七月の十七日か十八日頃ということになる」
「そういうことね。たぶん、間違いないわ」
 佐伯直樹に宛てた〈府中第一病院〉の朝倉某の手紙に書かれている患者は、七月十四日に入院し、十五日に無断で退院していた。
「彼がここに住むようになってからのことを話してもらいたい」
「初めの一カ月位、わたしはあの人のことは何も知らないと言ってよかったわ。彼は何も話さないし、わたしも何も聞かなかったから……見れば分かると思うけど、わたしは彼より五つは年上のはずです。四十二ですからね。そこらの若い娘みたいに彼を質問攻めにする気はなかったし、どうせすぐにいなくなる男なら、何も知らないほうがいいとも思った。わたしが彼について知っていたことと言えば、毎日遅めの朝食をすませるとアタッシュ・ケースを持ってどこかへ出かけること。夜の九時から看板までのあいだに調布のお店に戻ってくること。働いているのかどうかは分からないけど、金には困っていないこと。週に一度くらいはひどい頭痛に悩まされて、無理に歩きまわると意識を失って倒れるらしいこと──」
 彼女は言葉を切って、テーブルの上の私のタバコを指差した。「お願いだから、タバコを喫って下さいよ。わたしはその匂いにつられて話しているんですから」
 私は苦笑して、二本目のタバコに火をつけた。近頃、タバコを禁じられる機会はむやみに多いが、タバコを喫えと言われることは滅多になかった。
「八月の終りのある夜」と、彼女は話を続けた。「あの人はお店が看板になっても姿を見せなかった。わたしは夜中の二時まで待ち続け、恐れていた時がとうとう来たのだと思ったわ。そして、彼がどれだけわたしの心の中に入り込んでいたかを思い知らされたの。これで何もかも終わった、これでよかったんだ、あなたは子供じゃないんだから──そう自分に言い聞かせようとしたけど駄目だったわ。すっかり取り乱してここへ帰ってくると、彼が入口のドアの前で待っていたの。わたしは本当はとても嬉しかったのに、反対にひどいヒステリーを起こして彼に食ってかかったわ。「あなたはなんて男なの。一カ月以上も一緒に暮らしていながら、自分の名前さえ教えようとはしない」って。それまで抑えていた気持が一度に噴き出したみたいに。あの人は途方に暮れたように言ったわ。「教えられるものなら教えたいが、ぼくは自分で自分の名前を知らないんだ」……あの人が記憶をなくしていて、自分のことを何も知らないということを、わたしはその夜初めて聞かされたわ」
 彼女は私を見つめた。私はうなずいた。彼女は私のコーヒー・カップを流しに運んで、言った。「新しいコーヒーを淹れるわ」
「彼が憶えているのは、いつのことからだろう?」と、私は訊いた。
「あの人は、わたしの店に初めて顔を出した夜の数日前に、どこかの病院で眼を覚ましたらしいわ。それ以前の記憶はまったくないのよ。身体中傷だらけで、その痛みで眼が覚めたらしい。翌朝、病院を抜け出したことは憶えているけど、それからわたしの店に通うようになるまではまた記憶が曖昧だと言っていたわ」
 彼女は琺瑯のポットに水を入れて、レンジにかけた。府中第一病院を無断退院した患者が、彼女と同居している記憶喪失者と同一人物であることはほぼ間違いないようだ。
「一つだけ疑問がある」と、私は言った。
 ドリップ式のコーヒー沸かしのフィルターにコーヒーを入れようとしていた彼女の手が止まった。
 私は続けた。「専門的なことは判らないが、普通記憶を失った人間はそういう行動を取らないものだ。とくに、病院のベッドで自分のそういう状態に気づいたとすれば、まず医者に頼りきりの行動不能な人間になるはずだ。彼が病院を抜け出すには、よほどの理由がなければならない」
 彼女は私を振り返った。「やはり、それを訊くのね。結局、話さないわけにはいかないわね……あの人が病院で気がついてしばらくすると、看護婦が来て「やっと眼が覚めましたね。あなたのお名前は?」と訊ねたの。彼が分からないと答えると、彼女は本気にしないで「明日はどうせ答えなきゃいけないんですから、ちゃんと思い出しといて下さい」と言ったわ。看護婦がいなくなった後、彼はだんだん不安が増してきて、大声で助けを呼びそうになったらしいわ。そのとき、自分のものらしい薄汚れた衣服が病室の壁に掛けてあるのに気がついたの。痛む身体を起こして急いで調べてみたけど、身分を証明するようなものはもちろん、お金も何も見つからなかった。ただ一つ、血で汚れたワイシャツのポケットから、小さな鍵が出てきたの。次ぎに看護婦が来たときに、「ぼくの所持品はどこにある?」と訊くと、「どうぞ、ご心配なく。あなたのアタッシュ・ケースは看護婦センターで預かっています。本当は事務局で保管するんだけど、今日は日曜日で事務局が閉まっていたから」という返事だった。彼が、あれには大事なものが入っているから至急持ってきてくれと頼むと、別に抵抗もなく運んできて「やけに重たいけど、札束が一杯詰まってるのかしら」と冗談を言ったそうだわ。看護婦がいなくなってから、その鍵を使ってアタッシュ・ケースを開けてみると、まさに手の切れるような一万円札を百枚ずつ束にしたものが七つ、しめて七百万円が入っていたの」
 彼女は椅子から立って、沸騰するポットの火を消した。私は彼女の話の先を待った。長い沈黙が続いた。
「それだけかな」と、私は訊いた。
 彼女は私に横顔を見せたままで小さくうなずいた。ポットを取って、コーヒーに熱い湯を注ぎはじめた。部屋中にコーヒーの香りが漂った。彼女の首筋のあたりが突っ張ったような感じで、私のほうを見るのを頑なに拒否しているように見えた。
「それだけかな」と、私は繰り返した。
 彼女は激しく首を振って言った。「拳銃が一つ、入っていたわ」

次章へつづく

次回は2月26日(月)午前0時更新

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