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2017年9月の記事一覧

「歴史改変SF? パラレルワールド物? ウラジーミル・ナボコフ『アーダ』の幻惑的な世界設定とは?」『アーダ〔新訳版〕』若島正・訳者解説、全文公開 Part 2

「歴史改変SF? パラレルワールド物? ウラジーミル・ナボコフ『アーダ』の幻惑的な世界設定とは?」『アーダ〔新訳版〕』若島正・訳者解説、全文公開 Part 2



Part1はこちら。

※本書を未読の方のために、一部伏せ字になっております。

ウラジーミル・ナボコフ『アーダ〔新訳版〕』
訳者解説 Part2(全2回) 

若島正

 それではここから、『アーダ』の内容をざっと眺めていこう。
『アーダ』の小説世界は、「アンチテラ」および「テラ」と呼ばれる双子惑星(もしくは兄妹惑星)からできている。物語中の出来事のほとんどが起こるのはアンチテラにおいてであ

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「どこを切ってもナボコフだらけ。この『アーダ』は、ナボコフ度200パーセントと言ってもかまわないほどだ」『アーダ〔新訳版〕』若島正・訳者解説、全文公開 Part 1

「どこを切ってもナボコフだらけ。この『アーダ』は、ナボコフ度200パーセントと言ってもかまわないほどだ」『アーダ〔新訳版〕』若島正・訳者解説、全文公開 Part 1



ウラジーミル・ナボコフ『アーダ〔新訳版〕』
訳者解説 Part1(全2回)

若島正  

 本書は、1899年にロシアに生まれ、ロシア革命が起こってから、主にベルリンを中心とするヨーロッパでの亡命生活を経た後、1940年にアメリカに渡り、ロシア語作家から英語作家へと転身した稀代の多言語作家ウラジーミル・ナボコフの最大の長篇 Ada or Ardor: A Family Chronicle(1

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【今年必読の一冊】日経新聞、読売新聞に書評掲載! 話題のスパイ・サスペンスにしてピュリッツァー賞受賞長篇『シンパサイザー』、訳者あとがきを特別公開

【今年必読の一冊】日経新聞、読売新聞に書評掲載! 話題のスパイ・サスペンスにしてピュリッツァー賞受賞長篇『シンパサイザー』、訳者あとがきを特別公開

ピュリッツァー賞、アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀新人賞をはじめ、文学賞八冠に輝いた驚異の大作、ヴィエト・タン・ウェン『シンパサイザー』。訳者の上岡伸雄・学習院大学教授による「訳者あとがき」を特別公開します。

【注意:終盤のストーリー展開に触れる部分があります】

 アメリカの現代文学や文化を研究してきた者として、ヴェトナム戦争には高い関心を抱いてきたつもりだが、よく考えれば私のおも

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