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日本統治下の台湾と現代日本を往還しながら描かれる、日本人の娘と原住民の青年の恋――『台湾文学コレクション2 風の前の塵』(施叔青/池上貞子訳)

日本統治下の台湾と現代日本を往還しながら描かれる、日本人の娘と原住民の青年の恋――『台湾文学コレクション2 風の前の塵』(施叔青/池上貞子訳)

『台湾文学コレクション2 風の前の塵』

●あらすじ

険しい山々に抱かれた花蓮の町の近くで、あたしの級友の真子さんは原住民の青年ハロクに恋をしたのよ――日本統治下の東台湾で生まれ育った亡き母が、一人娘の琴子に語った古い恋物語。そのどこまでが真実だったのか? 戦前の台湾と戦後の日本を生きる人々の歩む道と思いが交錯する、幻惑に満ちた文芸長篇

●著者について

 施叔青(シー シューチン)

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『侍女の物語』の著者マーガレット・アトウッドによる傑作作品集『老いぼれを燃やせ』(鴻巣友季子訳)、9/19発売!

『侍女の物語』の著者マーガレット・アトウッドによる傑作作品集『老いぼれを燃やせ』(鴻巣友季子訳)、9/19発売!

早川書房は、カナダの作家、マーガレット・アトウッド『老いぼれを燃やせ』(原題 Stone Mattress)を2024年9月19日に刊行します。

予言的ディストピア小説『侍女の物語』で知られるアトウッドによる短篇が9本収められた作品集です。復讐譚からゴシックホラー、社会批評まで、収録作品はバラエティに富んでいます。

たとえば、高齢者を口減らしすべく介護施設をつぎつぎ襲撃する若者と、待ち受ける老

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忘れられた兵士たちの声がよみがえる、戦争文学の傑作『夜、すべての血は黒い』(ダヴィド・ディオップ、加藤かおり訳)訳者あとがき。7/18発売

忘れられた兵士たちの声がよみがえる、戦争文学の傑作『夜、すべての血は黒い』(ダヴィド・ディオップ、加藤かおり訳)訳者あとがき。7/18発売

早川書房は、フランスの作家、ダヴィド・ディオップ『夜、すべての血は黒い』(原題 Frère d'âme)を2024年7月18日に刊行します。
本書は、世界的に権威のある英国の文学賞、ブッカー賞の翻訳部門「ブッカー国際賞」を受賞した小説です。

本書の読みどころを、訳者の加藤かおりさんに語っていただきます。

訳者あとがき加藤かおり

本書はセネガル系フランス人、ダヴィド・ディオップ著Frère d

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【ブッカー国際賞受賞】戦場で親友を失った青年兵の叫び。第一次大戦の極限状況に迫る、戦争文学の傑作『夜、すべての血は黒い』(ダヴィド・ディオップ、加藤かおり訳)7/18発売

【ブッカー国際賞受賞】戦場で親友を失った青年兵の叫び。第一次大戦の極限状況に迫る、戦争文学の傑作『夜、すべての血は黒い』(ダヴィド・ディオップ、加藤かおり訳)7/18発売

早川書房は、フランスの作家、ダヴィド・ディオップ『夜、すべての血は黒い』(原題 Frère d'âme)を2024年7月18日に刊行します。

フランスでは「高校生が選ぶゴンクール賞」を受賞し、その英訳が「ブッカー国際賞」を受賞した、戦争文学の新たな傑作です。

◉あらすじ友よ、おまえの魂はどうすれば救われるのか?

セネガル歩兵のアルファは、瀕死の友をまえに決断を迫られていた。

第一次世界大戦

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優等生の弟がなぜ見捨てられた? 移民社会の孤独を描く文芸ミステリ『偽りの空白』(トレイシー・リエン、吉井智津訳)訳者あとがき 6/19発売

優等生の弟がなぜ見捨てられた? 移民社会の孤独を描く文芸ミステリ『偽りの空白』(トレイシー・リエン、吉井智津訳)訳者あとがき 6/19発売

オーストラリア出身の作家、トレイシー・リエンによる文芸ミステリ『偽りの空白』を2024年6月19日に早川書房より刊行します。

本書は、2023年本屋大賞翻訳小説部門第1位に選ばれた『われら闇より天を見る』著者のクリス・ウィタカーと、『消失の惑星【ほし】』著者のジュリア・フィリップスが熱い賛辞を送っています(後述)。

さらに、2022年に原書が刊行された当初から注目を集め、パブリッシャーズ・ウィ

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2023年ノーベル文学賞受賞、ヨン・フォッセの代表作『三部作』(岡本健志・安藤佳子訳)9月発売。小説は初邦訳!

2023年ノーベル文学賞受賞、ヨン・フォッセの代表作『三部作』(岡本健志・安藤佳子訳)9月発売。小説は初邦訳!

早川書房は、ノルウェーの作家、ヨン・フォッセによる小説『三部作【トリロギーエン】』(原題 Trilogien)を2024年9月に刊行します。

本作は、2023年にノーベル文学賞を受賞したヨン・フォッセの代表作のひとつと言われる小説です。2015年には北欧文学会の最高峰である北欧理事会文学賞を受賞しています。
三篇の作品を通じて、アスレとアリーダという恋人たちの半生を描いた連作短篇集です。

フォ

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【6月19日発売】野崎歓氏、絶賛!アフリカ文学の最先端にして、英国最高峰ブッカー賞受賞作『約束』(デイモン・ガルガット/宇佐川晶子訳)

【6月19日発売】野崎歓氏、絶賛!アフリカ文学の最先端にして、英国最高峰ブッカー賞受賞作『約束』(デイモン・ガルガット/宇佐川晶子訳)

●あらすじアパルトヘイト以前・以後――
社会変革の渦中で激動する「奇跡の国」南アフリカ。
プレトリアで農場を営む白人のスワート一家と
その黒人メイドとの間に交わされた土地をめぐる約束が、
30年以上にわたり一家の運命を翻弄する。

●評価「過去を水に流すことのできない人びと」とともにあること。それが文学にとっていかに大切なことかを実感させてくれる小説(本書解説より)──野崎歓(フランス文学者)

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弟の事件の謎と重い後ろめたさがヒリヒリする文芸ミステリ『偽りの空白』(トレイシー・リエン、吉井智津訳)6月19日発売

弟の事件の謎と重い後ろめたさがヒリヒリする文芸ミステリ『偽りの空白』(トレイシー・リエン、吉井智津訳)6月19日発売

〈優等生の弟の不審な死。事件現場に友達といたはずなのに、目撃証言はない。記者の姉が調査の果てに見たものは――〉
早川書房は、オーストラリア出身の作家、トレイシー・リエン『偽りの空白』(原題 All That’s Left Unsaid)を2024年6月19日に刊行します。

『偽りの空白』は、2022年に原書が刊行された当初から注目を集め、パブリッシャーズ・ウィークリーなど有力媒体による年間ベスト

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ブッカー国際賞を受賞した、戦争文学の新たな傑作『夜、すべての血は黒い』ダヴィド・ディオップ、加藤かおり訳、刊行(2024年7月)

ブッカー国際賞を受賞した、戦争文学の新たな傑作『夜、すべての血は黒い』ダヴィド・ディオップ、加藤かおり訳、刊行(2024年7月)

早川書房は、フランスの作家、ダヴィド・ディオップ『夜、すべての血は黒い』(加藤かおり訳、原題 Frère d'âme)を2024年7月18日に刊行します。

本書は、フランスで「高校生が選ぶゴンクール賞」を受賞し、英訳版At Night All Blood is Blackでブッカー国際賞を受賞しました。若き兵士の極限状態にある心理を描きだす文芸作品です。

◉あらすじ仏軍セネガル兵のアルファは、

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ノーベル賞作家のエッセンスが味わえる作品集『若い男/もうひとりの娘』(アニー・エルノー)。訳者・堀茂樹氏によるあとがき

ノーベル賞作家のエッセンスが味わえる作品集『若い男/もうひとりの娘』(アニー・エルノー)。訳者・堀茂樹氏によるあとがき

アニー・エルノーのノーベル賞受賞後邦訳第1作となる小説『若い男/もうひとりの娘』。親子ほど年の離れた男との熱愛、自らの誕生につながった姉の死の秘密――生と性と死を書き続けて半世紀となる著者の最新作ふくむ2篇を所収しています。
これらはどのような作品で、いかに書かれたのか。アニー・エルノーの作品の数々を訳し、その魅力を日本の読者に伝えつづけてきた訳者の堀茂樹氏が語ります。

訳者あとがき堀 茂樹

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アニー・エルノー、ノーベル賞受賞後邦訳第一作! 『若い男/もうひとりの娘』(堀茂樹訳)5/22発売

アニー・エルノー、ノーベル賞受賞後邦訳第一作! 『若い男/もうひとりの娘』(堀茂樹訳)5/22発売

アニー・エルノーの小説『若い男/もうひとりの娘』(原題 Le Jeune Homme / L'autre Fille)を早川書房より5月22日に刊行します。
2022年にノーベル文学賞を受賞したエルノーよる自伝的小説の精華を示し、入り口ともなる作品集です。


◉あらすじ個人的な記憶を掘り起こしながら、社会的な抑圧と不平等を明らかにし、2022年にノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノー。その半

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今こそマーティン・エイミスの文学を読むとき──東京大学教授・武田将明氏による『関心領域』巻末解説

今こそマーティン・エイミスの文学を読むとき──東京大学教授・武田将明氏による『関心領域』巻末解説

A24製作、ジョナサン・グレイザー監督の最新作で、第76回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞、そして本年のアカデミー賞で〈国際長編映画賞〉〈音響賞〉を受賞した映画「関心領域」。「今世紀最も重要な映画」と評されたこの映画がついに日本でも5月24日(金)から公開となります。

早川書房ではマーティン・エイミス(北田絵里子訳)の原作小説を同月22日に刊行します。まったく異なる手法で、映画と同じ主題に迫る

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劇団四季による大人気ミュージカル『ウィキッド』の原作小説、好評発売中!(グレゴリー・マグワイア著、市ノ瀬美麗訳、ハヤカワ文庫)

劇団四季による大人気ミュージカル『ウィキッド』の原作小説、好評発売中!(グレゴリー・マグワイア著、市ノ瀬美麗訳、ハヤカワ文庫)

大人気ミュージカルの原作小説『ウィキッド――誰も知らない、もう一つのオズの物語』(グレゴリー・マグワイア、市ノ瀬美麗訳、上下巻)を5月9日より発売します。

本書は、『オズの魔法使い』に登場する「悪い魔女」と「善い魔女」の若き日を描いた小説です。二人の魔女は、かつて親友でした。そんな二人の道を分けた事件とは――? 

1995年に著者グレゴリー・マグワイアによって発表され(原題 Wicked: T

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壮絶な喪失から立ち上がる女性を描いた雄大かつ優しい物語『川が流れるように』(シェリー・リード著)訳者・桑原洋子によるあとがき

壮絶な喪失から立ち上がる女性を描いた雄大かつ優しい物語『川が流れるように』(シェリー・リード著)訳者・桑原洋子によるあとがき

アメリカでは発売前から話題になった『川が流れるように』(シェリー・リード、桑原洋子訳)。17歳の女性を主人公に、喪失と再生を経て自立していく姿を描いた感動作です。その読みどころを、訳者の桑原洋子さんに語っていただきます。

訳者あとがき桑原洋子

『川が流れるように』はシェリー・リード(Shelley Read)著Go as a River(2023)の全訳である。

物語の主人公は、桃農園の娘で

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