芦沢央が描くビデオゲームの世界。赤野工作による「ゲーマーのGlitch」解説!
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本日ご紹介するのは、作家・赤野工作さんによる「ゲーマーのGlitch」解説です。書店員さんの応援コメントとともにご一読ください。
「ゲーマーのGlitch」解説:赤野工作
救いのある話なんですよね、この作品。ビデオゲームを最速で攻略する遊び〝RTA〟の大会を描いた話なんですけど、多くの人にとってRTAってのは大抵「最果て」にある遊びなんですよ。ゲームがどれだけ好きでたまらなくても、ゲーマーはゲームを遊ぶことしかできない。だから何度もプレイを繰り返すうち、かつて好きだったはずの演出や遊び方をバグ技で無視したり壊したりしてしまうこともある。RTAってのは、そういう繰り返される輪廻の「最果て」にあるはずの遊びなんです。でも、この話に出てくるゲームにはとある重大なバグがあって、そのバグ技によって作中世界のRTAには「「最果て」の次」が存在している。言わば、輪廻からの解脱です。面白いでしょ?……いや、輪廻から逃れられるから救いがあるって言いたいわけじゃないんです。RTAに手を出す人なんて、むしろ嬉々として輪廻に執着してる人の方が多くて。私だって、この作品がゲームにおける「「最果て」の最果て」を描いてくれたからこそ救いがあると感じてるクチですから。