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5回にわたってご紹介してきた豪華作家陣による解説ですが、今回が最終回です。本日ご紹介するのは作家・青崎有吾さんによる「九月某日の誓い」解説です。書店員さんの応援コメントとともにご一読ください。
「九月某日の誓い」解説:青崎有吾
「九月某日の誓い」は、固い絆で結ばれた二人の少女の物語だ。
絆とはいかにして構築されるのか。年月か、恩か、契約か。畢竟、唯一の方法は「対話」である。多くの言葉を交わし、好きな点を見つけ合い、苦手な点に関しては付き合い方を工夫していく。蕗の薹のおいしい食べ方を探るように。
しかし絆を構築してもなお、いや構築したからこそ、人間には隠れた部分が存在する。本作では、ある超常現象にまつわる謎を主軸としながら、万華鏡的に変わり続ける人間心理の妙が描かれる。その反転が素晴らしい。心理的サプライズを得意とし、読者を翻弄してきた芦沢央だが、まだこんな「裏切り方」があったとは。三重、四重の意味で驚かされる作品である。
SF、ミステリ、シスターフッドと複数のフックを持つ作品だが、ご本人とこの短篇について話したとき、ジャンルは意識したくない、と仰っていたのが印象的だった。確かにこれは、唯一無二の読み味だ。
書店員さんからの応援コメントをご紹介!