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新書創刊の舞台裏:滝沢カレンさんの言葉のセンスが光る『馴染み知らずの物語』担当編集者が語る

早川書房があらたに立ち上げる新書レーベル「ハヤカワ新書」。早川書房の強みであるSFやミステリなどの視点も生かした、独自の切り口の新書を多数予定しています。
第一弾は2023年6月20日(火)発売。どんな内容の新書が読めるようになる? そもそも新書の「創刊」って何を準備するの? ……そういった疑問にお答えすべく、『馴染み知らずの物語』(著:滝沢カレン/モデル)の発売に向けて原稿整理や関連イベントを仕込んでいる担当編集者(新書編集部:加藤千絵)に話を聞きました。現在進行形で進んでいる舞台裏と、本の内容を一部早出しでご紹介します。

『馴染み知らずの物語』滝沢カレン、ハヤカワ新書(早川書房)
『馴染み知らずの物語』ハヤカワ新書

『変身』も『わたしを離さないで』も全部、カレン流!
ある朝、目が覚めたら自分がベッドになっていた――!? カフカの『変身』や与謝野晶子の『みだれ髪』、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』が大変身。古今東西の名作のタイトルをヒントに、滝沢カレンさんが新しい物語をつむぎます。オリジナルを知らない人も楽しめる一冊。各作品の解説付き。

滝沢カレンさんが新書を? きっかけは……

編集担当・加藤千絵(以下同):『馴染み知らずの物語』は、本の情報サイト「好書好日」での連載(滝沢カレンの物語の一歩先へ)がベースになっています。このウェブサイトを2018年に新しく立ち上げる時に、看板となるような連載を書いてくれる人を探していて、真っ先に浮かんだのが滝沢カレンさんでした。
滝沢さんがテレビなどのメディアで話す言葉や、インスタグラムなどSNSで発信する言葉がその頃注目されていて、独特の言葉づかいの面白さを活かして読書にちなんだ何かを執筆していただけたら――と思ったのがきっかけです。

でも実は、すぐにはよい返事がもらえなかったんです。というのも、滝沢さんがおっしゃるには、「読書は好きだけど、一文を読むだけで自分の想像のほうが先にどんどん広がってしまって、なかなか読み進めることができない」という理由。じゃあ、それを逆手にとって、滝沢さん流の物語を作ってしまうのはどうだろうと再提案したところ、引き受けていただきました。

連載時は、編集部から本のタイトルとストーリーに関するちょっとしたヒントをお題としてリスト化して、そこから滝沢さんが作品を選び物語を紡ぐ、といった形で進めてきました。人気連載として四十数話ほど蓄積されたタイミングで、わたしも縁あって転職した先でハヤカワ新書の立ち上げに関わり、これを「一冊の本にできれば」と思って実現したものです。

怖い話や青春ものも……オススメは?

『馴染み知らずの物語』は、連載の中から傑作14話を収録しています。早川書房のベストセラー『ザリガニの鳴くところ(ディーリア・オーエンズ)』を元に滝沢さんに書き下ろしてもらった物語を含めて、計15話あります。ゾッとするような怖い話もあれば、ハートウォーミングな話、青春もの、ミステリやSFテイストのものなど、一冊のなかにいろんな感情が詰め込まれているので、読み応えがあると思います。

『馴染み知らずの物語』(滝沢カレン、ハヤカワ新書)ゲラとオリジナル本のいくつか
『馴染み知らずの物語』は、他にない「ブックガイド」としてもオススメです!

切なくて、滝沢さんが泣きながら書いたとおっしゃっていたのは『あしながおじさん(同、ジーン・ウェブスター)』『妻が椎茸だったころ(同、中島京子)』。読んだ人が仰天するような結末が待っているのは、『号泣する準備はできていた(同、江國香織)』とやはり『あしながおじさん』、私個人としては、『みだれ髪(同、与謝野晶子)』『九月が永遠に続けば(同、沼田まほかる)』が好きです。読者の方にもぜひ、気に入った物語をSNSなどで教えていただきたいです。

ストーリーだけでなく、文章一つひとつを取り上げても、既存の言葉にとらわれていない、フレッシュな表現を味わっていただけると思います。

「強気にも強気な雨が地面に到着し始めた」
「頭の中が服いっぱいの洗濯機みたいにこんがらがる」
「コモロウはタライみたいに笑った」
「何かを考えるよう地面と目を合わせた」
「髪の毛がこんがらにもこんがり合う、絡まりボサボサ頭の女」

ちょっとした比喩にもユニークな感性が込められていますし、モノの擬人化もごく自然に登場します。前作の『カレンの台所』でも食材への愛情があふれていましたが、今作も身の回りのものに愛情を注ぐ滝沢さんの人柄が、すみずみによく表れているんじゃないでしょうか。登場人物の名前や地名などのネーミングのセンスにもぜひ、ご注目いただきたいと思っています(笑)。

オリジナル作品との読み比べも楽しい

元の文学作品を知っている人には「馴染み知らずの物語」とのギャップを楽しんでいただけると思いますし、そうでない人にとっては知らなかった名作に出会うきっかけになると思います。気になる物語があったら、ぜひオリジナルも手に取っていただきたいです。本の中には、「好書好日」編集部によるオリジナルの作品についての解説も入れています。

短篇ですからどこからでも読めますし、移動中の電車などすきま時間に一篇だけ、という読み方ができるのもいいところ。「本を読みたいけど、どんなジャンルの本を読んだらいいかわからない」「ふだんあまり新書売場に行かない」という方にもぜひ、滝沢さんの『馴染み知らずの物語』を手に取っていただければと思います!


6月20日発売予定の新刊は現在ご予約受付中です。創刊ラインナップは全5作品。それぞれの作品の読みどころを随時note記事などで発信していきます!

記事で紹介した本の概要

『馴染み知らずの物語』(ハヤカワ新書)
著者:滝沢カレン
出版社:早川書房
発売日:2023年6月20日(火)

滝沢カレンさん近影

■著者プロフィール
滝沢 カレン
(たきざわ・かれん)/1992年、東京生まれ。2008年、モデルデビュー。現在は雑誌「Oggi」の専属モデルを務めるなど活躍している。「沸騰ワード10」「行列のできる相談所」「全力!脱力タイムズ」などテレビ出演も多数。朝日新聞社のウェブサイト「好書好日」で「滝沢カレンの物語の一歩先へ」を連載中。著書に『カレンの台所』。

ハヤカワ新書は6月創刊! ほかのラインナップ紹介


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