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【連載09】《星霊の艦隊》シリーズ、山口優氏によるスピンオフ中篇「洲月ルリハの重圧(プレッシャー)」Web連載中!

銀河系を舞台に繰り広げられる人×AI百合スペースオペラ『星霊の艦隊』シリーズ。
著者の山口優氏による、外伝の連載が2022年12/13より始まっています!
毎週火曜、木曜の週2回、お昼12:00更新、全14回集中連載の連作中篇。

星霊の艦隊 外伝 洲月すづきルリハの重圧 プレッシャー

ルリハは洲月家の娘として将来を嘱望されて士官学校にトップの成績で入学し、自他共に第一〇一期帝律次元軍士官学校大和本校のトップを自認していた。しかし、ある日の無重力訓練で、子供と侮っていたユウリに完全に敗北する……。

星霊の艦隊 外伝 
   洲月すづきルリハの重圧 プレッシャー

山口優

Episode 5 「高次元攻撃(前編)」

Part1

 一方。ククリとやや激しめのダンスをしていたルリハ。

「敵襲! ダンスは後」

 ククリはそう短くつぶやき、ルリハの細い腰をつかんで彼女をリフトしていた姿勢から、やわらかく彼女を着地させた。ひざを折る形で無理なくルリハは着地。ドレスのスカートが、風で勢いよく巻き上がる。

「どうしたのですククリ……? いったい……敵襲って……?」

 答えず、ククリはたっと駆け出し、どこかに行ってしまった。

 取り残された形になったルリハはあたりを見渡す。

 そこにけたたましい警報が聞こえてきた。ホールのアナウンスから。そして、左手の端玉から。 

――「高次攻撃情報。繰り返します。高次攻撃情報。高次攻撃情報が軍務省より発令されました。本日、帝歴三三〇三年三月三〇日午後六時三三分軍務省情報。人類圏所属航擁戦隊から発進したとみられる大規模敵高次元爆撃隊は、オリオン銀海方面より帝律圏に接近しつつあり。軍務省は帝律圏全域に高次攻撃情報を発令す。全市民は速やかに最寄りの産土神社に退避してください。繰り返します、高次攻撃情報――」 

(そうか……ククリたち星霊はこれを事前に察知したんだ……)

端玉が引き続き音声を流し始める。

「軍令部より帝律圏在住全将兵へ。帝律圏近傍高次元領域に侵入しつつある高高度爆撃隊に対し、帝律圏全軍を以て現在迎撃中である。本通信は指揮命令系統上にない全将兵に送達されている。各員に全状況を送達す。各員は帝律圏市民防衛のため、自分の信ずる最適の行動を執れ」 

(そうか……もう逃げる側じゃないのですわね――)

 ルリハは思う。 

 彼女らはこの卒業記念パーティの前に士官学校卒業式を終え、その卒業式の場で既に辞令を受け、練習艦隊所属となっている。練習艦隊とは、全ての尉官が所属する訓練組織である。実際に戦場に出るまでの間、訓練を重ねるための部隊だ。訓練成績が良好ならば、すぐに練習艦隊を「卒業」となり、少佐の階級を与えられて小型艦の指揮官か、艦載飛航隊の指揮官となる。しかし、卒業までの期間には莫大な個人差がある。短ければ一年。長ければ一〇年以上。一〇年を過ぎれば強制引退だ。

(しかし、練習艦隊に配属が決まったばかりのわたくしに何ができるわけでもないですし……)  

 ここに民間人がいて、軍人が彼女一人なら、避難誘導ぐらいはできたかもしれない。だが、ここにいるのは全て軍人。彼女が誘導しなくても、みな、それぞれ自分のすべきこと、行くべき場所は分かっている。 

(わたくしたち士官学校卒業生が、やはり一番何もできないんのでしょうね……) 

 成績が主席の彼子――ユウリすら、戸惑った顔をしている。その他の士官学校卒業生たちも、ただ周囲を見渡している者が大半だ。 

 だが、一人だけすばやく動く者がいた。 

 ナオだ。 

「教官殿!」 

 彼女は教官のところに駆け寄っている。 

「演習用の高射砲陣地をオレたち士官学校生に預からせてください」 

 士官学校の敷地には高射砲陣地があった。旧式のもので、大した高度には届かないものだが、一応現役の兵器である。 

 尚、「高射砲」とは、正確には対高次元微弾投射砲という。「微弾」とは超次元人工マイクロブラックホールであり、その表面の事象の地平面のホログラフィック回路には、「意味爆弾」が仕込んである。意味爆弾が実装されたマイクロブラックホールは銀河時代の今日では一般的な攻撃手段である。微弾と同様、回転ブラックホールのペンローズ過程を経てブラックホールから高次元に投射するものには、その質量によって、微弾のほか、微惑星級弾道弾、惑星級弾道弾、巨惑星級弾道弾などの弾種がある。これとは別に、高次元または深次元を時空延展航法と呼ばれる超光速航法によって自走可能な弾種として、微惑星級誘導弾、惑星級誘導弾、巨惑星級誘導弾なども存在する。 

 ナオが駆け寄った教官は、訓練艦「天神」の艦長も務める余津谷アズサ中佐だった。 

「科戸少尉。落ち着きなさい。訓練高射砲の高度はせいぜい三〇〇〇GIM。迎撃に上がる味方機の行動を邪魔することにしかなりませんよ」 

 行動力のあるナオすら、にべもなく断れてしまう状況だった。

ユウリはそれが分かっていたから、何も言い出さなかったのだろう。

(だったら私は何を言い出すのかしら?)

 ルリハは自分に問う。

 こんなとき、じっと黙って、ただ手をこまねいているような人間だと祖母のシオンがしったら、きっとがっかりするだろう。「お前は洲月家の恥です」といって。

(あんな教育用の一世代前の兵装で迎撃するわけがない。とすれば、迎撃は――この星律系でもっとも優れた機動要塞から為されるのではないか……)

「閣下!」

 教官に向けて臆さずに言う。

「機動要塞〈大和〉の超高高度弾道弾迎撃のため、観測機を出してはいかがでしょうか。無論、私がその任にあたりたく」

「……観測機」

 アズサ中佐はふっと、ほおを緩めた。

「――そうね。そうなる可能性が高いでしょうね。しかしそれに対応する部隊はすでに〈大和〉から発進しているでしょう。戦意だけ旺盛で未熟、しかも指揮系統にない部隊がいきなり出撃しても混乱するだけです。しかも、君たちは練習艦隊所属。前線に出る資格はありません」

 ルリハは答えに窮した。

 全くその通りだったからだ。

(何を焦っていたのでしょう。ナオの無謀さにあてられてしまったようですわ……恥ずかしい……)

「閣下」

 そこに、別の声がする。

 天色の髪の星霊がそこにいた。

(確か……ユウリと踊っていた……しかしこの髪の色。まさか)

「アルヴ――星霊で話をまとめてきました。ここにいるのはみな戦闘機制御の星霊。みなで編隊を組み、機動要塞大和の戦闘機隊と共同して迎撃する作戦です。現在の〈アメノヤマト〉では不可能な高高度迎撃が私には可能です」

 その横顔に、ぞくっとするほどの美しさをルリハは感じた。造形美だけなら、銀河時代には誰しも――星霊・人間を問わず――どこまでも追求することが可能だ。人間の場合親次第、星霊の場合はその製造の任にある星霊次第だが。故にルリハが感じたその星霊の横顔への畏怖とも呼べる感情は単なる造形美への関心ではない。

(……何か、私たち人類を超越するという意思の下に造られた……そんな冷たさがある……)

 さっきまで一緒に踊っていたククリがその隣にいる。

「――彼女の言うことは私が保障します。――彼女は〈アルヴヘイム〉の星霊であり、新型機〈ファグラレーヴ〉の構成アルゴリズムを保有しています」

「高高度迎撃機能……」

 アズサ教官は押し黙った。そこに柔らかな印象の星霊が現れる。

 天神イヅナ。訓練艦「天神」の制御を担う星霊だ。やや濃い菫色の、肩まで伸ばした髪と、同色のぱっちりした双眸が印象に残る。一〇代後半程度の外見年齢を持っており、これは士官学校生徒に親しみを持たせるため――と言われていた。

「イヅナ。どう思う」

 アズサが問うと、イズナはアルフリーデとククリを交互に見つめた。

「……間違いではないようね。兵は拙速を尊ぶ。やりましょう」

 アルフリーデ、ククリが頷きかけたとき。

「お待ちいただこう。この問題は高度に外交的な処理を必要とする」

 氷のような薄い青の髪をした星霊が会話に割り込んでくる。

「我が〈アルヴヘイム〉の利益に関わる問題だ。この星霊アルヴの構成アルゴリズムの全解放には、我が国の許可が必要だ」

(ゲルトルード・グルヴェイグ参事官……!)

 ゲルトルードが卒業パーティに来賓として参列していることは当初から把握しており、その挙動はちらちらと目で追っていた。ユウリと議論になったときにはひやりとしたが、特に問題もなく離れていったようで安堵していた。

〈アルヴヘイム〉――このアルフリーデという星霊は、やはりあの国家の出身だったのだ。

(あの冷たい印象……この星霊を造った星霊の意思を反映していたのね……)

 アルフリーデ、という亡命星霊の存在は、どこかで聞き知っていた気がする。ユウリと踊っていた、ということは、彼子と彼女の間には何か関わりがあるのだろうか? それとも、この場で知り合っただけか。

 それを強く知りたいと思ってしまったルリハは、その一瞬後、自嘲せざるを得なかった。

(結局、再び訪れたこの帝律星の危機に際しても、私は――この優れた構成アルゴリズムを持つという星霊とユウリの関わりを気にしてしまうのね)

 ルリハの感情とは別に、その場に集った人間と星霊たちの会話は進行している。

「なるほど……それも道理ですね」

 アズサはゲルトルードの言葉に少し考えを改めたようだ。だが彼女の配偶官のイヅナは彼女を強く――寧ろにらむように見ていて、その言葉に同意しているようには見えない。

 彼女は指をパチンと鳴らした。

 その瞬間、ダンスホール全体の空間が一瞬、菫色の光りに包まれたような気がした。

「緊急時に際し議論の時間を確保するため、この場を私の霊域と同調させたわ。現在一万分の一の時間で進行しています」

 続いて彼女は、ダンスホールの天井に手を差し出す。

 天井は大きく開いていき、ドームの天井、そして、その上の漆黒の空、その中央に輝く恒星玉〈大和〉が見えた。

「陛下。ご沙汰をお願いしますわ」

 親しみを込めて、イヅナは恒星玉に静かに語りかけた。第四惑星雷大星から恒星玉までは四天文単位、光の速度でも三四分ぶん離れているが、雷大星も大和帝律星の星域の中に含まれており、その全てはこの帝律星を制御する星霊――皇后であるミツハが光の速度を超えて感知する範囲である。

 そして、その瞬間。

 人と星霊の環の中央に、一人の星霊がいた。大元帥の純白かつ壮麗な軍服に身を包んだ流麗な雰囲気の女性で、大きく開いたデコルテには、ひときわ大きな星勾玉がある。その色は美しい藤色。 

「イヅナ。お呼び出しありがとう」

「き、気をつけ! 皇后陛下に敬礼!」 

 アズサが慌てて叫んだ。 

 そう。そこにいたのはアメノヤマト帝律圏皇后――皇帝の妃であり、かつ、この大和帝律星という星律系を制御する星霊であった。名はミツハ。星霊が、制御する圏界や艦艇を姓とするという習わしに則れば、「大和ミツハ」となろう。だが、帝室には姓がない、というのが、星霊が出現するはるか昔、未だ「アメノヤマト」という国号を名乗っていなかった昔からの帝律圏の伝統だ。 

ミツハは帝律次元軍に所属した戦闘機の星霊で、撃墜女王として名を馳せたていた。皇嗣の配偶官として選ばれ、皇嗣とともに出世し、皇嗣が即位するころには、皇后に相応しい神祇院議員の地位を得ていたため、極めて順当に皇后になったと言える。 

その長い藤色の髪の流麗さは見る者を惹きつけずにはいられない。同じ色の双眸の美しさ、すっきりとした鼻筋、上品な口元、整った輪郭の顔立ちといった特徴は、帝律圏の象徴たるカップルの片方としての条件を備えていた。彼女は純白の帝律圏大元帥の軍服を着用しているが、大元帥のそれと言えど、ミツハの着用するのは星霊用の軍服なので、胸元の星勾玉が露出したデザインとなっている。 

ミツハは大和帝律星を制御する星霊として、この一〇億の人々が暮らす圏界を安定的に維持することが第一の任務である。そのため、彼女の主人格を含む本体は現在も大和恒星玉内で防衛指揮を執っているはずである。ここに出現したのは分人格であろう。 

 皇后ミツハは、アズサの命令で反射的にびしり、と敬礼した周囲の人々を見渡す。怒りを含む視線をゲルトルードに向けながらもスマートに敬礼したアルフリーデ、そして相応の敬意を以て直立し目礼するゲルトルードを順番に見渡し、アズサに視線を戻した。 

「みな、楽にして。アズサ、この状況で仰々しい真似はやめなさい。あなたたち士官学校の教官が規律を重視することを皇帝陛下も私も嘉するものですが、この状況では私は礼式よりも時間を惜しみます。それと」

 と、イヅナにも視線を向ける。

「帝室への過度の礼は不要ですよ。それは凝集人格構造の宿痾にとらわれすぎた行動です。我々は人類の歴史に鑑み、凝集人格構造にとらわれすぎないようにと考え星霊と人類の共生による社会を構築したはずです。……配偶官をしっかり教育なさい」

「――承りましたわ、ミツハ様」

 イヅナは軽く礼をした。

「申し訳ありません……閣下」

 アズサが言う。

(あのアズサ教官がこんな風に恐縮している様子を見るのは初めてですわね……)

 ルリハは思った。

ミツハは優しく微笑む。

「別によいのです。ただ、我ら星霊は人類と共存する社会を構築したはずなのに、そのように距離を取られては寂しいというだけです」

「ナオ、ククリ、そしてルリハ。あなたたちもありがとう。アズサ、よい教育をしてくれました」

「とんでもございません、陛下。次元軍の一員として当然のことをしたまでのこと」

 ナオは――やや緊張しているようだったが――それでも飄々とした雰囲気をくずさない。

「恐縮です、陛下」

 ククリも言う。

「……わたくしも、同じく、ですわ、陛下」

 ルリハはそう答えた。

「ありがとう。そういえば――洲月家のシオン殿には皇帝陛下がお世話になっていましたね。彼女からよろしくとのことでした」

「――もったいなきお言葉です。そう聞けば祖母も喜びましょう」

ミツハは時間を惜しむように、次にアルフリーデに向き直る。 

「そしてアルフリーデ。あなたの申し出はありがたいことですが、我が帝律圏と同盟国の関係にも配慮が必要です。しかし、あなたの熱意には感謝を」 

 アルフリーデは微笑んだ。

「私は現在は帝律圏の星霊です。〈アルヴヘイム〉出身という出自は、私にとっては今や何の意味もございませんわ、陛下」

 ゲルトルードをにらみつけながら、彼女は言った。 

 ミツハは頷いた。

そして、最後に、義務と果たすように、そのゲルトルードに視線を転ずる。 

「さて、では外交的懸案を片付けておきましょうか、参事官閣下?」 

「どうかゲルトルードと呼んでくださいますよう。陛下と私は同じアルヴです」 

 親しみを込めた視線で、ゲルトルードはミツハを見遣る。 

「そうですか」 

 ミツハは言い、冷たい藤色の視線でゲルトルードを見る。 

「私は人間である皇帝陛下を愛する者です。また、人間である帝律圏市民すべてを家族のようにとても大切に思い、愛している……あなたがたの言うアルヴの定義が『人類を超越する高貴なる種族』であるならば、私は『同じ』アルヴではありません」 

「いいでしょう。貴国の立場は承知しております」 

 ゲルトルードは言う。ミツハは簡単に頷いた。 

「あなたがた党律圏は、我が帝律圏の星霊をアルヴと同じものとみなす……無論、艦艇や星律系を制御する知性体としては、そのとおりでしょう。しかし思想としては全く異なる。この件については、常々、貴国に厳重に抗議したいと思っていたところです。しかし私たちには時間がない。早速、参事官閣下が提起された問題について議論しましょう。――この場に大使閣下の同席も必要でしょうか?」

 ミツハがそう付け足すように聞いた。大使とは、大和帝律星第三惑星橿宮市にある〈アルヴヘイム〉大使館の主、ヴァルトラウテ・ヘルヴォルのことだろう。だが、ゲルトルードはおかしそうに微笑み、首を振った。

「不要です。我らが独裁官、ディートリンデ閣下の意思が我らの全てです。この場にいるのが大使閣下であろうと、私であろうと、話すことは同じでしょう。それよりも陛下、陛下の方は、宰輔卿閣下の同席は不要ですか? 両陛下の意思決定には、閣下の進言が必要と伺っておりますが」

「そうですね。私には、あくまで大和帝律星の防衛責任者としての権限だけが与えられています。故にここで定めることも現在の非常時に限った一時的なもの。恒久的な外交文書は、帝律圏政府を通じて締結されることでしょう」

 寧ろ誇らしげに、ミツハはそう言った。帝律圏政府によって代表される人間の意思を蹂躙することは――本来のミツハの力なら極めて容易であろう。それを律し、人類へ奉仕することを以て、彼女は自信の誇りとしているらしかった。

 逆に、ゲルトルードはそうしたミツハの態度に、侮りの表情を隠さない。だが、表面上は外交官らしく、丁寧な言葉で彼女は応じた。

「お教えいただき感謝いたします、陛下。では、アルフリーデ・フォン・ファグラレーヴが制御する戦闘機『ファグラレーヴ』のエンジン――『ラケータ』に関する、この場に限った協定として、定めさせていただきましょう。貴国はたしか、『時空噴進エンジン』と名付けておられましたね」 

 ゲルトルードの侮りの表情は、無論ミツハにも分かっているようだったが、そこに彼女は何も感じないようだった。 〈アルヴヘイム〉とはそのようなもの、と見做し、諦めているのか、突き放しているのか。星霊として平坦な感情を維持する能力を、最大限活かしているようにも見えた。

「――条件を伺いましょう、参事官閣下」

 単刀直入にミツハは聞いた。ゲルトルードの、相手を侮りながらも外交的にもってまわった言い回しに、そろそろ飽きてきたようだった。

「緊急時に鑑みて、条件付きで許可しましょう」

 ゲルトルードもミツハの態度に合わせ、単刀直入に言う。

「一つ。我が党律圏への攻撃に使用しないこと。――同盟国であるから当然ですが、我が国の国是に対し貴国はいろいろと思うところがおありのようなので念のためね。そして、もう一つ。貴国のいわゆる『配偶官制度』に基づき人類を操縦席に乗せた状態で使うことは遠慮いただきたい。この兵器はあくまで星霊アルヴのために造ったものですからね……。人類に使用されることは許しがたい。無論、貴国の人類は敵性人類でないことは承知しておりますが、人類は人類ですからね」

「それは貴国の統一した意思と考えて良いと?」 

「独裁官閣下の意志が我が党律圏のすべてです。所属する全星霊アルヴは閣下の股肱にすぎません」 

 ミツハは息を吐いた。

「――この場に限ったとしても、そのような申し出ならば我々としては拒否せざるを得ませんね。この話はこれで終わりです。お時間を取らせてしまいました」

 それから、無関心を保っていたゲルトルードに対し、一瞬だけ、感情をあらわにした。

「我々の、星霊と人類の絆を甘く見ないでもらいましょう」

(……これは……)

 ルリハは危機感を覚えた。

 アルフリーデという星霊の能力は今は喉から手が出るほど欲しいもののはずだ。それを、ミツハは帝律圏の自負を傷つけられたと考え、交渉を決裂させようとしている。イズナ、アズサもミツハの決定に反対しようとはしていない。ナオも、寧ろゲルトルードに怒っていて、ミツハの決定に全面的に賛成の様子である。

(この場は……私がなんとかしなければ……!)

2023/01/12/12:00更新【連載10】に続く


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