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解けなくても大丈夫! 取り組むだけで論理力が上がる『問題解決力がつく数学プロブレム』に挑戦(第1問解答篇)

地頭を鍛えたいビジネスパーソンから数学パズルのマニアまで、広いかたがたにお楽しみいただきたい弊社近刊、『問題解決力がつく数学プロブレム』収録の風変わりな出題を連続してご紹介しています。

 さて、第1問「謎のトレンチコート男を出し抜け!」にトライしていただけました? では解答をご覧いただきましょう。こちらです。

第1問解答
 謎の男の封筒に入っている金額を予想するチャンスが9回しかない場合、あなたは最初に745ドルと予想するべきだ。
 基本的な戦略は2つ。
(1)予想のチャンスが1回しかない場合、残っている選択肢が1個のみのケースなら必ずゲームに勝てる。予想のチャンスが2回の場合、選択肢が3個なら勝てる。3つの選択肢の真ん中の数を選んで、それが間違っていても、男は「もっと上」とか「もっと下」と言ってくれるので、2回めの予想で勝てる。
(2)最後の予想をしようとするときに、複数の選択肢のどれが正しいのかわからなければ、かならず最も大きな数を選ぶべきだ。もらえる金額の期待値が一番高くなるからだ(それが正解である確率はほかの選択肢と変わらない。ただし正解の場合にもらえる金額が高くなる)。
 一般的にいえば、上で説明したような戦略を使えば、予想のチャンスがN回の場合、予想の選択肢がM個のケースなら勝てるとすると、予想のチャンスがN+1回の場合には、選択肢が2M+1個のケースには勝てることになる(予想のチャンスが1回なら選択肢が1個、チャンスが2回なら選択肢が3個、チャンスが3回なら選択肢が7個のケースには勝てる)。予想金額を1回言うたびに、選択肢の数はほぼ半分になるので、予想のチャンスがn回の場合には、選択肢が2のn乗-1個のケースなら勝てる。したがって、予想のチャンスが9回ある場合、選択肢が511個のゲームであれば確実に勝てる。
 あいにくながら、あなたには1000個の選択肢がある。しかし(2)の戦略にのっとるなら、もらえる金額をできるだけ多くするのが一番だ。そこで、1から489までの数は存在しないと考えて、490から1000までの数に(1)の戦略を用いることにしよう(訳注:1000-511=489)。この場合、489/1000の確率で負けるが、負けるときはいずれにしても負けるのだし、この戦略では、あなたが負ける場合にもらい損ねる金額が最小限になる。したがって、最初の予想は(490から1000までの511個の選択肢の中央である)745とするべきだ(1000-(511-256)=1000-255=745)。その場合、もらえる金額の期待値は380.695ドルになる(745はもらえる金額の中間値なので、全体としての期待値は511/1000×745)(訳注:厳密には、封筒の中の金額が489ドル以下で負ける分も含めて、489/1000×0+511/1000×745である)。
(翻訳=熊谷玲美)

 いかがだったでしょうか。解けなくても、なるほど、と大きくうなずかされます。確率・統計的な考え方は、やはり戦略的な思考には欠かせないのかも。解答をツイートしてくださったかたがたのなかには、正答をしめされているかたもおられました。

次回、第2問の問題は1月29日に公開の予定です。お楽しみに。

問題解決力がつく数学プロブレム』(オリヴァー・ローダー編、熊谷玲美訳、予価1600円)は、弊社より2月下旬発売予定です(ここでご紹介する問題と解答が収録されますが、内容や文章は多少改変されることがあります)。