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祝・直木賞受賞!『地図と拳』『君のクイズ』小川哲の文庫化作品を一挙紹介

小川哲さんの『地図と拳』(集英社)が第168回直木賞を受賞! 
2022年には『君のクイズ』も大ヒットとなるなど、勢いが止まりません。

小川哲さんは2015年、大学院在学中に第3回ハヤカワSFコンテストで大賞を受賞してデビュー。現在ハヤカワ文庫から3作が刊行されています。『地図と拳』『君のクイズ』で小川さんを知った方も、ぜひお手に取り下さい! 

①衝撃のデビュー作『ユートロニカのこちら側』

小川哲さんのデビュー作は、全ての個人情報が共有された実験都市を舞台とする連作集。ユートピアでありディストピアでもある、SFだからこそ迫れる都市像・人間像が読みどころです。

『ユートロニカのこちら側』

巨大情報企業による実験都市アガスティアリゾート。その街では個人情報――視覚や聴覚、位置情報等全て――を提供して得られる報酬で、平均以上の豊かな生活が保証される。しかし、誰もが羨む彼岸の理想郷から零れ落ちる人々もいた……。苦しみの此岸をさまよい、自由を求める男女が交錯する6つの物語。第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉受賞作、約束された未来の超克を謳うポスト・ディストピア文学。解説/入江哲朗

②日本SF大賞受賞の超大作『ゲームの王国』

第38回日本SF大賞&第31回山本周五郎賞をW受賞、文学界全体を揺るがせた超大作。『地図と拳』が『百年の孤独』とするなら本書『ゲームの王国』は『族長の秋』というべき傑作、必読です。

『ゲームの王国(上)』

サロト・サル――後にポル・ポトと呼ばれたクメール・ルージュ首魁の隠し子、ソリヤ。貧村ロベーブレソンに生まれた、天賦の「ヴィンニャン」を持つ神童のムイタック。運命と偶然に導かれたふたりは、軍靴と砲声に震える1975年のカンボジア、バタンバンで邂逅した。秘密警察、恐怖政治、テロ、強制労働、虐殺――百万人以上の生命を奪い去ったあらゆる不条理の物語は、少女と少年を見つめながら粛々と進行する……まるでゲームのように。

『ゲームの王国(下)』

「君を殺す」――復讐の誓いと訣別から、半世紀。政治家となったソリヤは、理想とする〈ゲームの王国〉を実現すべく最高権力を目指す。一方のムイタックは渇望を遂げるため、脳波を用いたゲーム《チャンドゥク》の開発を進めていた。過去の物語に呪縛されながら、光ある未来を乞い願って彷徨うソリヤとムイタックが、ゲームの終わりに手にしたものとは……。第39回日本SF大賞&第31回山本周五郎賞受賞作品。解説/橋本輝幸

③入門にぴったり!直木賞候補の短篇集『嘘と正典』

小川さんの今のところ唯一の短篇集であり、第162回直木賞候補作。SFはもちろん、競馬やマジックをモチーフに驚きの展開を遂げる作品群は『君のクイズ』が刺さった方にオススメ! 以下で試し読みを公開中です。

『噓と正典』

マルクスとエンゲルスの出逢いを阻止することで共産主義の消滅を企むCIAを描いた歴史改変SFの表題作をはじめ、零落した稀代のマジシャンがタイムトラベルに挑む「魔術師」、名馬スペシャルウィークの血統に我が身を重ねる青年の感動譚「ひとすじの光」、音楽を通貨とする小さな島の伝説「ムジカ・ムンダーナ」など6篇を収録。圧倒的な筆致により日本SFと世界文学を接続する著者初の短篇集。解説/鷲羽巧

④未書籍化の〈SFマガジン〉短篇

昨年の〈SFマガジン〉8月号には、『地図と拳』刊行&『噓と正典』文庫化を記念した小川氏の書き下ろし短篇「魔法の水」が掲載されています。ある意味『地図と拳』スピンオフともいえる、歴史の構造をめぐる物語。

「魔法の水」
〈SFマガジン〉2022年8冊号

同誌には小川さんと、本屋大賞『同志少女よ、敵を撃て』の著者である逢坂冬馬さんの対談も掲載。同記事はウェブでも読むことができます。

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『地図と拳』が刺さった方は『ゲームの王国』『君のクイズ』が好きな方は『嘘と正典』、作家・小川哲の源流を辿りたい方は『ユートロニカのこちら側』がおすすめです。いま最も熱い作家の作品を是非この機会に!