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第10回アガサ・クリスティー賞関連作揃い踏み!

 第10回アガサ・クリスティー賞の受賞作及び惜しくも受賞を逃した候補作のひとつが出版されましたので、ここで改めてご紹介させてください!

【大賞】受賞作

地べたを旅立つ_帯付

地べたを旅立つ 掃除機探偵の推理と冒険
そえだ 信
早川書房 46判並製
1700円+税

 掃除じゃない、捜査だ! 受賞直後から「掃除機ミステリ」という前代未聞のパワーワードで話題を呼んだ、そえだ信氏の第10回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作『地べたを旅立つ 掃除機探偵の推理と冒険』(『地べたを旅立つ』改題)。
 気になるその内容は、札幌で刑事課に務める鈴木勢太が、暴走車に轢かれ、次に気づいたときには「スマートスピーカー機能付きロボット掃除機」になっていた! という奇想天外なもの。しかもすぐ隣の部屋には中年男性の死体が。どんなに信じられない状況でも、勢太には諦められない理由があった。亡き姉の忘れ形見として引き取った姪・朱麗のことだ。朱麗の義父だった賀治野は、姉と朱麗に暴力を働き接近禁止命令が出ていたが、勢太がそばを離れたとわかったら朱麗を取り戻しにやってくる。勢太の目覚めた札幌から朱麗のいる小樽まで約30キロ。掃除機の機能を駆使した勢太の大いなる旅が始まる。だが、行く手にたちはだかる壁、ドア、段差! 自転車、子ども、老人! そして見つけた死体と、賀治野と、姉の死の謎! 次々に襲い掛かる難問を解決して小樽に辿り着き、勢太は朱麗を守ることができるのか?
 選考委員たちも卓越したアイデアに驚き、大いに盛り上がった。その選考会の模様が垣間見られる選評はこちらの「クリスティー賞受賞の掃除機ミステリ『地べたを旅立つ』選評抜粋」から。併せてお楽しみください。

【優秀賞】受賞作

ヴェルサイユ宮の聖殺人_帯付

ヴェルサイユ宮の聖殺人
宮園ありあ
早川書房 46判並製
1800円+税

ドレス、化粧品、香水からデザートまで。物語を彩る――

 18世紀フランスの絢爛たるヴェルサイユ宮殿で、パリ・オペラ座の演出家を務めるブルジョワジーの刺殺体が発見される。手には旧約聖書「申命記」の紙片が握られ、カラヴァッジョの宗教画「聖マタイと天使」には血文字が残されていた……。
 鮮烈なシーンから開幕する『ヴェルサイユ宮の聖殺人』(『ミゼレーレ・メイ・デウス ー神よ我を憐みたまえ―』改題)は、第10回アガサ・クリスティー賞優秀賞受賞作。落日を迎えるブルボン朝の宮廷を舞台にした歴史ミステリ作品です。主人公のマリー゠アメリーはルイ16世のいとこにしてマリー゠アントワネットの元総女官長である「超」貴婦人。彼女の相方はアメリカ独立戦争から辛くも生還した傷顔の青年士官ジャン゠ジャックが務めます。
 著者の宮園ありあ氏は、千葉大学の大学院でフランス近世史を専門的に研究しており、往時のフランス文化&風俗への造詣が非常に深いです。

【最終候補作】

エゴに捧げるトリック_帯

エゴに捧げるトリック
矢庭優日
ハヤカワ文庫JA
920円+税

“いまから、「犯人は、あなたです」という催眠をかけます”
 それは、人類の存亡を左右するトリック――

 第十回アガサ・クリスティー賞の最終候補作に残り、惜しくも受賞は逃したものの編集部の目に留まり、このたび刊行となった矢庭優日『エゴに捧げるトリック』(『エゴにのみ通ずるヒュプノ』改題)。
 時は西暦2105年。突如世界各地に出没し、近代兵器が一切効かない怪物EGOの脅威に晒された人類は、EGOに唯一効果を発揮した「催眠術」の研究と、その行使者たる「催眠術士」の養成に総力を挙げていた。
 催眠術士の養成校に通う「僕」こと吾妻福太郎は、怪物EGOとの戦いに向け、級友のパイ、鋼堂タケシ、R王子、パートナーのイプシロンらと卒業試験に臨んだ。だがその最中、鋼堂が変わり果てた姿で見つかると、皆はなぜか「福太郎が犯人」と証言して事件を隠蔽しようとする。“真実しか話せない催眠”をかけあってなお覆らない証言や自身の曖昧な記憶に苦しみつつ、僕は事件の捜査を続けるが……。
 本書に仕掛けられた“人類の存亡を左右するトリック”を目の当たりにした時、あなたはきっと――。
新鋭が送る、大胆かつ巧妙な企みに満ちたミステリをどうぞお楽しみください。

 いずれも読み応えのあるフレッシュな才能あふれる作品です。この機会にぜひお手に取ってみてください!


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