芦沢央が描く“ワットダニット”とは?今村昌弘による「この世界には間違いが七つある」解説!
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本日ご紹介するのは、作家・今村昌弘さんによる「この世界には間違いが七つある」解説です。書店員さんの応援コメントとともにご一読ください。
「この世界には間違いが七つある」解説:今村昌弘
まず死体を転がせ、とはミステリの書き方として昔から聞く言葉だが、今作の始まりはまさにそれ。密室よろしく閉ざされた部屋で死体に戸惑う登場人物たちと、不可解な室内の様子。読者は不穏な状況に面食らうことだろう。この作品は、本格ミステリ的な言葉で表せばワットダニット。一体全体、何が起きているのかという謎が強い引力をもって次のページを捲らせる形式である。
短篇の中でもさくっと読めてしまう分量だが、最大の特徴は真相がある特殊な方法で明かされること。これをミステリとして成立させることだけでも見事なのだけど、特筆すべきは真相のみならず、それまで何気なく読んでいた会話や文に深い意味が隠されていたことが一瞬で理解できてしまう点だ。
所々欠けて見えていた物語が、閃きとともに想定外の色に塗り替えられる瞬間は滅多に体験できるものではない。
遊び心と奇想に溢れたこの物語をぜひ堪能していただきたい。