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『もっとホワット・イフ?』NASA出身コミック作家の名(迷)解答が炸裂する人気シリーズがカムバック!!

NASA出身のウェブコミック作家が、自身のウェブサイト(xkcd)に集まってくるぶっ飛んだ「もしも?」という質問に、マジメな科学と並外れた調査力、そしてたっぷりのユーモアで答えていく人気シリーズが、満を持してカムバック! 最新刊『もっとホワット・イフ?』(ランドール・マンロー、吉田三知世訳、早川書房)から、早速気になる「Q&A」のいくつかをご紹介します!

『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』(ホワット・イフ2)ランドール・マンロー、吉田三知世訳、早川書房
『もっとホワット・イフ?』早川書房

質問. ティラノサウルスをニューヨークに放したとすると、ティラノが必要なカロリーを摂取するためには、1日あたり何人の人間が必要になりますか? (質問者:T・シュミッツ)

答え. 約大人半分または10歳児1人。

ティラノサウルスはゾウ1頭と同じぐらいの体重がある〔*1〕。

恐竜が食べたものをいかに消化・吸収してエネルギーを生み出していた(代謝していた)のか、完全に理解している人は誰もいないが、ティラノサウルスがどれだけの食べ物を摂取していたかについての有力な説には、1日あたり40000キロカロリーほどだったというものが多いようだ。

恐竜の代謝は現在の哺乳類と同じだったと仮定すると、彼らは1日あたり40000キロカロリーよりもずっと多く食べていただろう。だが、最近の研究では、恐竜は現在のヘビやトカゲよりも活動的(おおざっぱに言って「温血」)だった一方で、超大型恐竜の代謝はおそらくゾウやトラよりコモドオオトカゲに近かっただろうと考えられている〔*2〕。

次にはっきりさせなければならないのは、1人の人間にはどれだけのカロリーがあるかだ。ありがたいことにこの数値は、『ダイナソー・コミックス』の著者ライアン・ノースが、人体の栄養表示をプリントしたTシャツを制作・販売して教えてくれている。ライアンのTシャツによれば、体重80キログラムの人間には約110000キロカロリーのエネルギーが含まれているので、ティラノサウルスは1日おきに人間1人を消費する必要があるということになる〔*3〕。

ニューヨーク・シティの2018年の年間出生数は115000人で、その数の新生児だけで約350頭のティラノサウルスを維持できる。しかし、この推測では人口の移動――とりわけ、この状況では大幅に増えるであろう人口流出――が考慮されていない。

全世界にある39000店のマクドナルドは、1年に約180億個のハンバーガーを販売している〔*4〕が、これは1店舗1日あたり平均で1250個に相当する。1250個のハンバーガーは約600000キロカロリーで、それからすると、ティラノサウルス1頭は1日に約80個ハンバーガーを食べるだけで生きていける。そしてマクドナルド1店舗は15頭を超えるティラノサウルスの食糧をハンバーガーだけで提供できることになる。

あなたがニューヨークに住んでいてティラノサウルスを1頭見かけたとしても、心配はない。犠牲になる友だちを選ぶ必要なんてない。代わりに80個プラスアルファのハンバーガーを注文すればそれでいい。

そして、もしもティラノサウルスがあなたの友だちのほうを選んだとしても、あなたはともかくハンバーガー80個が手に入る。

たぶん、友だちというよりただの知り合いだったのでしょう、正直なところ。

〔*1〕これについては、そうだとされているものの、ちょっと違うんじゃないかと私はずっと思っていた。イメージとしては、ゾウは自動車やトラックと同じくらいの大きさだが、ティラノサウルスは映画『ジュラシック・パーク』で描かれるように車を踏みつぶせるほどの大きさだ。しかし、グーグル画像検索で「自動車+ゾウ」をサーチしてみると、ちょうど『ジュラシック・パーク』のティラノサウルスのように、ゾウが自動車にのしかかろうとしている画像が見つかる。じゃあやっぱり言われているとおりなわけで、私はゾウも怖くなった。

〔*2〕大型の竜脚類(訳注:竜脚類は大型で首が長い植物食恐竜。ティラノサウルスは獣脚類に属し、肉食で、一般的な竜脚類よりは小型)に関してはそうに違いないとわかる。なぜなら、このタイプの恐竜が哺乳類のような代謝だったとしたら体が過熱してしまうからだ。しかし、ティラノサウルスぐらいの大きさの恐竜についてはよくわからないことが多々ある。

〔*3〕ティラノサウルスは、一度の食事で数日から数週間分を食べようとするだろうから、選択の余地がある場合、一度に大勢の人間を食べ、その後しばらく食べずに過ごすのではないかと思われる。

〔*4〕マクドナルドは1990年代中ごろに、看板の「N十億個を販売」の数字の更新を停止したので、これは大雑把な推測でしかない。


次の更新予定は2月24日(金)です

本書には他にもこんなとんでもない質問も!

|| この記事で紹介した本の概要 ||

『もっとホワット・イフ?』
著者:ランドール・マンロー
訳者:吉田三知世
出版社:早川書房
発売日:2023年2月21日
税込価格:1980円

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