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就活で「正解のない問題」に遭っても怖くない! 『問題解決力がつく数学プロブレム』に挑戦(第6問解答篇)

最近の入社試験では1週間かけて、相談・カンニングし放題で解かせる問題が出されるそうですね。そうした試練に対処するには付け焼刃ではダメです。2月20日に発売となった弊社刊、『問題解決力がつく数学プロブレム』のなかから、地頭力養成につながる興味深い「難問」をいくつか紹介しています。

お約束どおり、第6問スマートフォン落下耐久性実験」の解答をごらんいただきましょう。こちらです。

第6問 解答
 100階建てビルで実験する場合、14回落下させる必要がある。
 その戦略はこうだ。2台のスマートフォンをA、Bと呼ぶ。まず、スマートフォンAを14階から落とす。壊れなかったら、さらに27階、39階、50 階、6 0階、69階、77階、84階、90階、95階、99階から、壊れるまで落とし続ける。Aが壊れたら、その直前に落とした階(壊れなかった階)と現在の階(壊れた階)のあいだの階から落としてみる。壊れなかった階から1階ずつ上がりながらスマートフォンBを落としていき、Bが壊れるか、Aが壊れた階の直下の階に到達するかしたらやめる。たとえば、スマートフォンAを39階から落としたら壊れたとしよう(14階と27階から落としたときには壊れなかった)。スマートフォンBをまず28階から落とし、壊れなかったら1階上がってまた落とす。これを壊れるまで続ける。38階から落としてもBが壊れなかったとしよう。その場合には38階が、このスマートフォンを落下させても壊れない最上階だ。
 この戦略の特徴として重要なのは、スマートフォンAがどの階で壊れたとしても、最大でも合計14回落とせば、「壊れる階」を決められるということだ。たとえばスマートフォンAが最初の14階で壊れたら、スマートフォンBを最大で13回落下させる必要がある。この場合、最大の落下回数は、A で1 回、B で13 回の計14 回になる。一方、スマートフォンA が90 階で壊れた場合、Bを落下させる回数は最大5回だ。この場合もやはり最大の落下回数は、A で9回、B で5回、計14回になる。面白いことに、Aが壊れた場所にかかわらず、必要な最大落下回数はいつも同じになる。この戦略のなかで「よりうまくやる」ことはできない。
 この戦略を一般的な形にして、もっと階数が多いケースにも適用しよう。この戦略では、Aを落下させる階にきちんとしたパターンがあって、最初が14、それに13、12、11と階数を足していっている(つまり14+13+12+…+1)。100階のケースでの答えが14 になるのは、14は、1+2+3+…+n≧100となる整数nで最小だからだ(たとえば13回しか落下させないと、1+2+3+…+13=91なので、どの階で壊れるかを確実に調べられない)。この数列の和(級数)はよく知られていて、1+2+3+…+n=n(n+1)/2 になることがわかっている。f階あるビルなら、n(n+1)/2≧fとなる最小の数nを求めればいい。1000階の場合、答えは45回だ。注目したいのは、この級数はnの2乗に比例して増加することだ。そのため1000階のビルでは、階数は100階のビルの10倍なのに、「壊れる階」を見つけるのに必要な落下回数は約3倍にしかなっていない。1万階のビルでも、必要な落下回数はわずか141回だ。
 最後に、面白い応用篇として、スマートフォンが2台ではなく3台ある場合を考えてみよう。実をいえば、問題をさらに一般化させて、m台のスマートフォンとf階のビルの場合に必要な落下回数を求める、比較的シンプルな数式を見つけることが可能なのだ。これは読者のみなさんに考えてもらおう。
(熊谷玲美訳)

たしかにこの数列は見覚えがあります。なぜそこに行きつけるのか……

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