芦沢央が描く「愛」のカタチ。斜線堂有紀による「二十五万分の一」解説!
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本日ご紹介するのは、作家・斜線堂有紀さんによる「二十五万分の一」解説です。書店員さんの応援コメントとともにご一読ください。
「二十五万分の一」解説:斜線堂有紀
愛っていうのはこういう風にやるんだよ、と芦沢央に示されるような一作。エモーショナルで切ない書き出しをこう捻り、ど真ん中ストレートで万人に刺さる形に仕上げる手腕。強感情を扱う物語において何より必要なのは、その感情を納得させるだけの理屈。この物語を読むと、最小限の文字数で先輩を愛してしまう理屈がつけられていることがわかる。だって、一読してしまえば読者も先輩のことが大好きになっているから。この人の為に存在を掛けてもいいよなって、納得させられてしまうから。後輩が報われたと思ってしまう部分があるからこそ、そこには確かなキャラクターの魅力がある。世界のスケールの大きさと、二人の関係の一瞬の輝きの対比がいつまでも心に残る一作。SFも愛もミステリも何もかも、芦沢央に書けないものなんて無いことを、掌篇の形で叩きつけるのが格好いいんだ。