ヴァージニア・ウルフ「病気になるということ」片山亜紀訳/新訳・解説公開
編集部より
早川書房は、20世紀を代表する作家ヴァージニア・ウルフが1926年に発表したエッセイ「病気になるということ(原題:On Being Ill)」の新訳と訳者解説を全文公開します。
約100年前、世界各国で大流行したというインフルエンザ。1918年から20年頃にかけては「スパニッシュ・インフルエンザ(いわゆるスペイン風邪)」と呼ばれるインフルエンザが流行り、第一次世界大戦の末期から停戦後にかけ、世界中に蔓延したといわれています。
ヴァージニア・ウルフもスパニッシュ・インフルエンザに罹患したと推測されています。彼女はその前後の数年のあいだに繰り返しインフルエンザにかかりました。1925年にまたもやインフルエンザにかかった際に、個人的な病気との向き合い方や、病気のときに読むべき本などをエッセイに記し、パンデミックの記憶もまだ新しい当時の人々に提示しました。
本エッセイは、いわゆるパンデミックの惨状を伝えるような文章ではありません。しかし、ヴァージニア・ウルフが生きた20世紀前半と、2020年の現代で、時代は異なるものの「文学と疫病」という大きなテーマで考えた時、新型コロナウイルス感染症の影響下にある日本に生きるわたしたちも、ウルフが考えたことに共鳴する部分があるのではないかと考え、新訳を公開することにいたしました。
訳者は、「自分ひとりの部屋」といったヴァージニア・ウルフ作品を多数翻訳されている片山亜紀さんです。本エッセイと訳者解説は、ミステリマガジン7月号にも収録予定です。(5月25日発売予定でしたが、6月に発売を延期をさせていただきました。詳しくはこちらをご覧ください)
(早川書房編集部)
「病気になるということ」概要
まずエッセイ自体は一つの文章ですが、今回、読みやすさを考慮し、3つのセクションに分けてお送りいたします。原文にはない改行を加えていることもご承知おきください。3セクションと訳者解説の4記事を公開し、下記にリンクを記します。
セクション1では、病気(インフルエンザ)に罹ったウルフは、その時の意識を綴ったあと、文学が病気をテーマにすることがなかったとして、その理由を述べてゆきます。
セクション2では、インフルエンザ患者の心象風景を描き出し、さらにセクション3では、インフルエンザに罹った時の文学の楽しみ方を紹介しています。
全体を通してお読みになりたい方は、ぜひ5月25日発売のミステリマガジン7月号をご覧ください。
目次
セクション1
セクション2
セクション3
訳者解説
著者紹介
ヴァージニア・ウルフ(1882−1941)
イギリス・ロンドン生まれ。1915年、『船出』で小説家デビュー。主な小説に『ダロウェイ夫人』『灯台へ』『オーランドー』など。また『自分ひとりの部屋』『女性にとっての職業』といったエッセイ・評論などでも知られる。
訳者紹介
片山亜紀(かたやま あき)
獨協大学外国語学部教授。イースト・アングリア大学大学院修了、博士(英文学)。イギリス小説、ジェンダー研究専攻。訳書にヴァージニア・ウルフ『自分ひとりの部屋』『三ギニー』『幕間』『ある協会』など。