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「ちなみに没となった筆名には『ウェルダンこげめ』や『鰐淵ラコステ』などがありました」オーガニックゆうき『入れの子の水は月に轢かれ』が刊行されますよ。【11/20発売】

 第8回アガサ・クリスティー賞受賞作、オーガニックゆうきさんの『入れ子の水は月に轢かれ』が、11月20日(火)に早川書房より刊行されます。様々な意味で、クリスティー賞史上最大の問題作と言える本作品。舞台は那覇の猥雑な裏通りである「水上店舗通り商店街」です。ガーブ川を暗渠にして生まれたその場所で起きた連続殺人事件を解決するために、家出青年の駿、高齢フリーターの健さん、老女傑の鶴子オバアが駆け回ります。オフビートな沖縄ノワール小説、あるいは素人探偵トリオのバックストリート・ミステリ。注目すべきはペンネームだけはないのです。
 それでは、ミステリマガジン2018年11月号に掲載された「受賞の言葉」をご紹介しましょう。

第8回アガサ・クリスティー賞「受賞の言葉」 

 第8回アガサ・クリスティー賞に選んでいただき、本当にありがとうございます。素敵なご縁に恵まれ、純粋に嬉しい気持ちや、光栄に思う気持ちもありますが、驕らず粛々と精進して参ります。支えて下さった周囲の皆さまに、心より深く、深く感謝申し上げます。

 受賞が決まってからはハプニング続きでした。特に筆名に関しては、編集担当さんと揉めに揉めました。「真面目な名前にしましょう」ってこっちは大真面目なのに! と。そう激論を戦わせたのも、今はひと夏の思い出です。母が考えた名なので、大切にしたいと思います。ちなみに没となった筆名には「ウェルダンこげめ」や「鰐淵ラコステ」などがありました。いつか、使える日が来たらいいなぁと思っています。

 私生活では、賞が公表されてから早速、バイトをクビになりました。改稿に集中したいので、申し訳ないけども、今日で辞めさせてほしいと言うと、先方を怒らせてしまって。あれは、夏の恐怖体験でした。浮ついていたな、私。人として甘い、甘すぎる。けど悔しい、腹も立つし、云々……と、いろんな感情がないまぜになった瞬間でした。もういっそ快感を覚えるまで、業というものを考えたような気がします。

 でも全部ひっくるめて、こういう騒々しさは、嫌いじゃないのです。むしろ有り難いです。『入れ子』が刊行されるまで、この貴重な時間を少しでも楽しめたらと思うのです。

 まくとうそーけ、なんくるないさ。(担当編集注:「正しいこと、誠のことをしていれば、なるようになる」という意味)

 オーガニックゆうき、どうにも拙い身ですが、努力して参ります。
(ミステリマガジン2018年11月号掲載)

……それでは、11月20日の発売をお待ち下さい。ここまでお読み頂きまして、にふぇーでびたん。(担当編集


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