やってる感に死を。「リモートで仕事ができる人は、もともと仕事ができる人なのだ」
リモートワークでは、能力をごまかすことが難しい。
同僚とおしゃべりをする時間が減って仕事の成果が注目されるし、オンラインのリポジトリで成果物を集中管理するようになれば、作業の記録がすべて残るからだ。誰がどれくらいの時間で何をやったか、いつでもひと目で確認できる。
謙虚で仕事ができるタイプの人は、もう悔しい思いをしなくてすむ。
従来のオフィス文化では、大声で自分の成果を自慢しなければうまく評価されなかった。でもリモートの環境なら、黙っていても成果物があなたの能力を証明してくれる。一方、口先ばかりで仕事をしていなかった人は、もう逃げ場がなくなるはずだ。
リモートワークは、これまであまり注目されてこなかった真実を明るみにだすことになる。
リモートで仕事ができる人は、もともと仕事ができる人なのだ。
『ジョエル・オン・ソフトウェア』の著者ジョエル・スポルスキーは、「有能」かつ「仕事をやりとげる」人材に価値があると説いている。まさにリモートワークに求められる資質だ。
みんなの成果が目に見えるようになれば、誰が本当に有能なのかは一目瞭然。言葉にしなくても、暗黙のうちに共通の理解ができてくる。
もしも成果物が欠陥だらけなら、その人が有能でないことは明らかだ。時間がかかりすぎるなら、仕事をやりとげる力が足りないということになる。
毎日オフィスにいると、そういうことが見えにくい。仕事以外の印象で評価が決まることも多い。
〈遅刻や欠勤をしない〉+〈いい人〉=〈仕事ができる〉という、まちがった回路ができてしまうのだ。
もちろん、オフィスで働いていても、いずれは化けの皮がはがれてくる。ただし、問題が深刻になるまで放置されることがほとんどだ。だから多くのオフィスは、愛想と出勤態度だけは文句なしの、凡庸な人材で埋めつくされてしまう。
リモートワークになれば、使えない人材はすぐに明らかになる。経営はまず人選ありき。不適切なメンバーをすみやかにバスから降ろし、適切なメンバーをバスに乗せよう。
(ジェイソン・フリード&デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン『リモートワークの達人』高橋璃子訳、ハヤカワ・ノンフィクション文庫より抜粋)