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【刊行前から話題沸騰】幾原邦彦さん、寺地はるなさん、町田そのこさん、山内マリコさん推薦!『グレイス・イヤー 少女たちの聖域』担当編集&プロモーション担当よりメッセージ

11月16日(水)に発売したキム・リゲット/堀江里美訳『グレイス・イヤー 少女たちの聖域』。ニューヨーク・タイムズ・ベストセラーにランクインし、エリザベス・バンクス監督で映画化決定している超話題作で、『侍女の物語』×『蠅の王』のディストピア小説としても高く評価されています。

『グレイス・イヤー 少女たちの聖域』ポスター画像

発売からすぐに話題になっている本書について、担当編集とプロモーションからのメッセージを公開します!

〇担当編集Cより

『グレイス・イヤー 少女たちの聖域』の原稿を読んだ時から、忘れられないシーンがある。

主人公の少女ティアニーは『若草物語』のジョー・マーチみたいに結婚を拒んでいて、人生を一人で開拓していくことを夢見ていた。でも彼女の住む世界では、男たちの妻になることが正しいとされていて、そのためにいくつもの通過儀礼が存在する。彼女たちはあくまで男たちの飾りで、次第に女性間でも憎み合いが始まるようになる。そんな世界に嫌気が差していたいたティアニーに、花屋を営むある女性がこんな言葉をかける。

「いつかあんたも花をもらう。たとえ萎れかけていても、意味は変わらない。愛は既婚者だけのものじゃない、すべての人たちのものなんだよ」
この言葉は今を生きる多くの人が必要としている言葉じゃないんだろうか、と私は思う。自分の中の痛みや辛さ、苦しさに蓋をしながら生きている人。子どもの時に感じていた気持ちはもう忘れて、大人にならなければと思っている人。そしてなにより、悲しいことが続く世界でどうやって希望を持ち続けられるのだろうと感じている人。そういう人に届けたい、届けなければいけない作品だと、強く感じています。

〇プロモーション担当Nより

私には、死ぬ時に必ず棺桶に入れてもらうと決めている本が何冊かある。死後の世界を信じているわけでもないけど、ずっと一緒にいたいという本。
『グレイス・イヤー 少女たちの聖域』は読んですぐに棺桶に入れてもらおうと決めた。

本書の中では終始、少女たちが理不尽な目に晒される。少女たちが男を誘惑する”魔力”を持つと信じられている世界で、16歳になって"グレイス・イヤー"を迎えた少女たちは隔離されて共同生活を過ごす。彼女たちが生活するキャンプの外にも危険が待ち構えているにもかかわらず、彼女たちは仲間内でも”魔力”を持つ者/持たない者、そして妻として求められた者/求められなかった者で分断し、互いに争うようになる。
主人公のティアニーは”魔力”を信じず、自らの手でこの1年を生き抜く術を見つけようとする。その一方で最も早く”魔力”に目覚めたというキルステンを筆頭に、少女たちは”魔力”を盲信していく。彼女らは次第に対立を深め、次々にこの"グレイス・イヤー"からの脱落者が出始める……。

私自身はガーナー郡にはいないし、"グレイス・イヤー"を乗り越えてもいない。魔力もない。
でも、ティアニーやガーナー郡で生きる人々のように、性別や恋人の有無、老若や美醜などの些細なことで否応なく分断されては、対立を促されるような瞬間がある。そんな対立など馬鹿馬鹿しいと、その分断を引き起こしている社会自体に否を突きつけるべきなのだ。でも、その押し付けられた価値に傷ついてしまう時がある。自身の持つ性別やアイデンティティによって隔てられ、老いることに怯える。「かわいい」と言われることに優越感を持ち、恋人や配偶者がいないことはいることに比べて劣っているように感じてしまう時がある。

私たちは私たちが生きてきた人生を思う。それは苦々しい思いかもしれない、棘まみれの道を傷つきながら生きてきたのかもしれない。でも、その道はこれからの少女たちが生きていく道でもある。
私たちはその道を棘まみれにしておくことも、歩きやすくすることもできるはずだ。私はできる限り歩きやすい道にしたい。これからを生きるすべての人びとが、押し付けられた価値によって、分断によって、傷つき、苦しみ、絶望してしまわないように。
『グレイス・イヤー 少女たちの聖域』はたしかにそれができるという勇気をくれる本だ。この本が多くのひとに読まれ、少しでもあなたの生きていく道を照らしますように。

話題沸騰中の『グレイス・イヤー 少女たちの聖域』、ぜひ週末の読書にどうぞ!

装画/我喜屋位瑳務 装幀/早川書房デザイン室

〇あらすじ

「だれもグレイス・イヤーの話はしない。禁じられているからだ」

ガーナー郡では、少女たちに“魔力”があると信じられている。
男性を誘惑したり、妻たちを嫉妬に狂わせたりできるのだと。

その“魔力”が開花する16歳を迎えた少女たちは、
ガーナーの外に広がる森の奥のキャンプに一年間追放される。
“魔力”を解き放ち、清らかな女性、そして妻となるために。

この風習について語ることは禁じられていて、
全員が無事に帰ってくる保障もない。

16歳を迎えるティアニーは、
妻としてではなく、自分の人生を生きることを望みながら、
〈グレイス・イヤー〉に立ち向かう。

キャンプではいったい何が? そして、魔力とは?
生死をかけた通過儀礼が、始まる──。

〇著者について

アメリカ中西部出身。16歳の時にミュージシャンを目指してニューヨークに移り住み、ロックバンドなどのバックシンガーを務めた。40代で小説を書き始め、2015年にロマンス・ホラー小説 BLOOD AND SALT でデビュー。2019年に刊行された本作は長篇5作目にあたり、ニューヨーク・タイムズ・ベストセラーほか多くのリストにランクインし注目された。また、「チャーリーズ・エンジェル」の監督・脚本も務めたエリザベス・バンクス監督で映画化が予定されている。ロサンゼルス在住。

〇訳者について

堀江里美
翻訳家。訳書『ザ・ガールズ』エマ・クライン、『美について』ゼイディー・スミス、『ガールズ・オン・ザ・ロード』ニコシア&サントス、『黄金の街』リチャード・プライス他多数。


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