【ビデオメッセージ】『財政赤字の神話』著者、ステファニー・ケルトン教授から日本の読者のみなさんへ
発売即重版の話題作『財政赤字の神話: MMTと国民のための経済の誕生』の著者、ステファニー・ケルトン氏よりビデオメッセ―ジが到着! 本書に込めた思いや、アンダーコロナのMMTについて語って頂きました。ぜひご覧ください。
【字幕】
私の本が日本で大きな反響をいただき、本当に嬉しく思っています。「学ぶところが多かった」というメッセージもたくさんいただきました。
本書を書いたのは、日本のみならず世界中にはびこる「誤った考え」を正すためです。政府に何ができるか、どれほどの支出ができるのか、税についてどう考えるべきか、どうすればより良い経済を築くことができるのか。政治の世界、そして新聞やテレビのこれまでの議論には、重大な間違いがありました。順番が「逆」だったのです。
私は本書を通じて、実像を鮮明に見ることができる新たな「レンズ」を提供しました――財政赤字や政府債務を恐れるのをやめ、私たちが望む未来について生産的な議論をするために。
こうした誤った神話は私たちの手足を縛り、正しい政策の実行を妨げているのです。
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新型コロナウイルスの流行によって、本書の指摘する真実が改めて浮き彫りになりました。社会に政策を実行する生産能力があるとき、財政赤字がその障害にはならない、ということです。
今回のパンデミックを受け、政府は経済を支えるため大規模な支出を行ないました。その際、いつもなら支出をしない口実となる過去の財政赤字や政府債務の残高は問題になりませんでした。パンデミックによって、政府にはこれまで以上の財政支出ができるというだけでなく、支出を増やさなければ苦境がはるかに長引くことが明らかになりました。
つまり財政赤字は問題の原因ではなく、世界経済が現在直面している問題の重要な解決策の一つなのです。
政府が最優先すべきは、ウイルスを封じ込めることです。それなくして世界経済がコロナ以前の状態に回復することは見込めません。ただ、その間にも私たちの経済的苦境は続きます。政府にできるのは、必要な財政支援策をすべて実行し、家族やコミュニティを守り、雇用を回復することです。パンデミックが収束するまで、社会をしっかり支えるのです。
通貨主権を持つ政府にはそれが可能です。支出のために課税や借り入れをする必要はありません。政府は家計や企業とはまったく異なるのですから。
政府だけが、これから先の私たちの生活と経済を守るために必要なことを実行できるのです。
ステファニー・ケルトン(Stephanie Kelton)
ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校教授(経済学、公共政策)。1969年生まれ。MMT(現代貨幣理論)の主唱者として世界的に知られる。ミズーリ大学カンザスシティ校経済学部長を務めたのち、2017年より現職。2015年の米上院予算委員会で民主党のチーフエコノミストを、2016年および2020年の米大統領選(民主党予備選)でバーニー・サンダース上院議員の政策顧問を務める。ブルームバーグ「2019年の50人」、プロスペクト誌「2020年 世界のThinkerトップ50」に選出。