
全長25㎞の巨大宇宙船に隠された秘密!? アダム・オイェバンジ『ブレーキング・デイ ―減速の日―』発売中
世代宇宙船を舞台にした宇宙冒険SF、アダム・オイェバンジ『ブレーキング・デイ―減速の日―』(金子司 訳)、ハヤカワ文庫より発売中! 人工知能を禁じられた船内で、脳内のインプラントを操って船内ネットワークにアクセスするクルーたち。主人公は謎めいた少女を見たことをきっかけに、世代宇宙船に隠された秘密を解き明かすことに……。
AI統制下の地球を逃れ、植民船団で地球を脱出して132年。全長25キロ、居住区輪8つを備えた世代宇宙船3隻は、長い旅の終わりを目前にしていた。インプラントで機器を操るクルーは、目的地くじら座タウ星へと船を減速させるため、停止中のドライヴ機関を再稼働させる〈減速の日〉の準備に追われている。そんななか、機関部訓練生ラヴィは宇宙空間で一人の少女を見かけた……宇宙服なしの姿で!? 新時代の世代宇宙船SF。
本書のポイントは、なんといっても、舞台となる世代宇宙船〈アルキメデス〉。Rey.Horiさんにドーンと描いていただきました。上下巻を並べるとこんな感じです。

全長25キロの船体の前方に、8つの居住区輪があり、それぞれ回転して重力を生み出しています。装画に書いていただいたのは、この宇宙船の前方部分です。輪の中心を連なる軸は船体の後方に15キロ伸び、ドライヴ機関につながります。ドライヴ機関は(あらすじにあるように)現在は停止中です。ドライヴ機関は出発して1年くらい稼働して加速し、その後ほぼ停止させて130年がたちました。近く予定されている〈減速の日〉になったら逆方向にエンジンを稼働させて、1年くらいで目的地くじら座タウ星に到達という設定になっています。
主人公の士官候補生ラヴィは機関部訓練生で、物語の冒頭、この後方にあるドライヴ機関に一人、派遣され、〈減速の日〉を前にした点検をします。そのとき、船外から妙な音が! エアロックの窓から外をのぞいた彼は、思いがけない光景を目にします……。
そして、前方の居住区輪に話を戻して、装画の下巻側をご覧ください。一番手前にある8つ目の居住区輪の右側が大変なことに……!? 世代宇宙船になにがあったのか? ぜひ本書をお読みください。
Rey.Horiさんが、別構図バージョンイラストと、この絵に関してのコメントをツイートくださっています。
「ブレーキング・デイ −減速の日−」発売記念、「書籍に帯というものがなかったら、ホントはこの構図にしたかったなぁ」バージョン公開。別案ラフを仕上げたものです(あ、でも今回帯にも絵が入っているのはとても嬉しいです!)。 pic.twitter.com/TwmytjJjui
— Rey.Hori (@reyhori) June 6, 2023
宇宙船の作画に必要なスペックが全て作中に明記されているわけではありませんでしたが、居住輪の内/外径の比は作中の重力の比に沿っています。左回転の居住輪の標識灯は赤、右回転のものは緑、という勝手設定です。
— Rey.Hori (@reyhori) June 6, 2023
こんな超巨大な世代宇宙船を舞台に、物語は進んでいきます。下巻のあらすじは以下の通りですが……
ラヴィは腕ききハッカーのいとこボズとともに、船外で姿を消した少女の謎を探るが、ラヴィ以外に彼女を見た者はいないらしい。彼のインプラントの不調だろうか? 調査するうちに、二人は船の上級士官の不審な行動に気づく。そのうえラヴィたちは、船の減速の阻止を企む急進的活動家の陰謀に巻きこまれ……。彼らは無事に〈減速の日〉を迎えられるのか!? 世代宇宙船を舞台に新鋭が鮮やかに描く驚嘆の物語。解説/鳴庭真人
このあらすじに書ききれないさまざまなあれやこれやが起こります。たとえば、下巻の登場人物には……ドラゴンが? (ネタバレを避けるため、一部隠しました)

『ブレーキング・デイ―減速の日―』(上・下)
Braking Day
アダム・オイェバンジ 金子司 訳
装画:Rey. Hori 装幀:岩郷重力
解説:鳴庭真人
ハヤカワ文庫SF/電子書籍版
各1,496円(税込)
2023年6月6日発売