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出色のエドガー賞ミステリ『真珠湾の冬』読者からの感想第二弾公開――「圧倒的スケール」「最後に訪れる深い感動」「これは大河小説」「一冊の本で、ミステリ、歴史、警察、愛、全てのジャンルを駆け巡り、全てに決着をつける」


『真珠湾の冬』書影

エドガー賞受賞の傑作ミステリ『真珠湾の冬』が好評発売中です。刊行前に募集していた読者モニターの方々から本作へ寄せられた感想コメントの第二弾をご紹介いたします。

◆読者モニター感想

〔一括りのジャンルで語ることのできない大作でした! 〕〔最後に訪れる深い感動の余韻に浸っています。〕

〔警察小説? 戦争小説? 歴史小説? スパイ小説? 恋愛小説? いや、これは大河小説だ。 綿密な警察の状況が描かれ、そして、国際捜査から一気に戦争に巻き込まれていく主人公ジョー・マグレディ。どこまでも世界は広がっていく。最後の最後まで、終焉するのかというくらいに。 主人公はロマンティストであり、ストイックであり、そして、強靭なる意志と自らに課している正義がある。この小説は、人を読む小説であり、人と人の出会いと別れの小説でもある。〕〔 もう一度、ゆっくり読みたい。そして、人の優しさを感じたい小説である。〕

〔愛だろ、愛っ。読み終えた直後、思い出したのは30年前のこのCMコピーだった。戦争の前後で大きく人生が変わった末に主人公が手にしたのは紛れもない真実の愛だったからだ。そこにたどり着くまでレイモンド・チャンドラーを思わせる感情を抑制したハードボイルドな文体だっただけにラストシーンで高らかに描かれる愛が一際輝いて見えたし、パンデミックに沈む現在にはこのポジティブさはたくさんの人に勇気を与えるに違いない。個人的にはハワイ、香港、東京の戦前戦後の詳細な雰囲気を知れたことがとても大きな収穫だった。〕

〔太平洋戦争の渦中、翻弄される主人公が確かにそこに息づいていた。 アジアの街の喧騒、日本家屋特有の暗がり、空を埋め尽くす焼夷弾に、風に匂いを、肌に熱を感じた。〕

〔「かいもく、見当もつきません」「今後もわかるかどうか。ただ、わたしが言いたいのは、人の運命は不可思議だということです。何がどう転ぶかわかりません。ささいな決断すべてが分岐点になります」
 作中で最も印象深いこのセリフが示すのは、この長大で入り組んだ作品で語られる物語は岐路に立ち、選択し続ける人間を描いたものだということなのだろう。〕

〔凄惨で目を背けたくなる殺人事件から、このようなスケールの物語へと発展していくとは驚きでした。ハワイ、東京、香港など地理的に大きく動き、また、さまざまな人種、立場の人物たちと関わり合ううちには、何度か緊迫して息を詰めました。史実の間をマグレディが歩き回っているようで、複雑でリアリティのある作品になっていると思います。東京大空襲のことも、日本にいる視線で描かれていたのが印象的です。歳月を重ね地理を跨いで、ひとかけらの雪片のような美しいシーンへと辿り着く。読み応えありました。〕

〔『マグレディは魚から食べた。頭も、しっぽも、骨も残さず食べた。それから鶏肉に移った。炭火で焼いた肉に、塩味の効いたタレがたっぷり塗ってある。全て平らげると、新聞紙で手をきれいに拭いた。』 この一文に、心を掴まれた。 マグレディの性格、高橋の気持ち、物語の舞台の様子が詰まっている気がした。 「真珠湾の冬」を読んで、マグレディという論理的で職人的で知性的な人物を、好きにならない人間はいないのではないかと思う。自らに敵意を向ける者を躊躇わずに殺害できる、一見、残酷で冷たい性格の人物に思えるが、少し読めばそうでないことがわかる。愛する人を想い、命懸けで恩を返そうとする、熱い男だった。一冊の本で、ミステリ、歴史、警察、愛、全てのジャンルを駆け巡り、全てに決着をつける小説は読んだことがない。読み終えて、すぐに感想を書くことができなかった。読み終わった後、興奮して、涙が出てきた。 翻訳であるのに読みやすく、読み応えもある。内容も細部まで描かれているので、読書を好む人、歴史を好む人、壮大なドラマを好む人、幅広い読者が手に取るだろうと思った。〕

〔一人の刑事が執念で犯人を追う優れたミステリと同時に歴史に翻弄された人々を描く歴史小説でした。翻訳ミステリでありながら読みやすく、なにより主人公の造形がいい〕

〔ホノルル、香港、日本という圧倒的スケール。太平洋戦争勃発から刻々と移り変わる情勢。そんな中たった一つの真実を追い求め続けたマグレディによる執念。戦争、犯罪、ロマンスの絶妙な配置。情緒溢れる感涙のラスト。どこをとっても素晴らしく良く出来た作品でした。あらゆる感情がめぐり揺さぶられながらマグレディと共に壮大な旅を終えた感覚です。〕

◆あらすじ

太平洋戦争迫るハワイ、香港、そして日本。
彼は真実を追い求めた――

1941年ハワイ。アメリカ陸軍上がりの刑事マグレディは、白人男性と日本人女性が惨殺された奇怪な事件の捜査を始める。ウェーク島での新たな事件を経て、容疑者がマニラ・香港方面に向かったことを突き止めたマグレディはそれを追うが、折しも真珠湾を日本軍が攻撃。太平洋戦争が勃発する。陥落した香港で日本兵に捕らえられ、東京へと流れついたマグレディが出会ったのは……。戦乱と死が渦巻く激動の太平洋諸国で連続殺人犯を追う刑事の執念。その魂の彷徨を描く大作ミステリ。解説/吉野仁

【書誌情報】


■タイトル:真珠湾の冬 ■著訳者:ジェイムズ・ケストレル/山中朝晶訳 
■定価:2,200円(税込) ■ISBN: 9784150019860 ■刊行レーベル:ハヤカワ・ミステリ(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)


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