未必のマクベス_文庫_枠付

(後篇)「お詫びしたい気持ちでいっぱいです」 書店員、担当編集S、営業部員Oが謝罪!? 早瀬耕『未必のマクベス』(ハヤカワ文庫JA、9月21日刊行) 文庫化の裏話を公開!

早瀬耕『未必のマクベス』文庫化にあたり、書店員、担当編集、営業部員の座談会を開催。9月下旬の刊行に向け、白熱した議論が交わされました。書店員さんは、本作をどう読んだのか?「お詫びしたい気持ちでいっぱい」な訳とは?

●前篇はこちら→ https://note.mu/hayakawashobo01/n/ncee4aae78b2f

――読後の率直な感想はいかがでしたか?

U作品の持つ力は疑いがないですね。すごいですよ、『未必のマクベス』。

T:正直に話すと、営業さんに紹介してもらうまで、この本を知らなかったんですよ。
読む前にうちのデータベースで調べましたが、実績は伸び悩んでいて。
だから、この本を読んだあとだと、売れていないのが信じられなかったんです。
文章もすごく滑らかだし、手にすればみんなこの物語に入れると思うんです。
この物語はどういう風に決着するのか、全然読めないんですよね。目が離せない。

U:僕も「売れてないなんて噓だ!」と思った!

T:変な話ですが、僕にとって救いだったのは、この本が出た時、
僕は文芸担当じゃなかったんですよ。笑
読んだあと、営業さんにも言ったんですが、この本を知らなかったこと、
売れなかったことは懺悔レベルだと。
目利きと言われている書店員は多くいると思うんです。
その網のどこにも引っかからなかったっていうのが信じられなくて。
今回は本当にリベンジだし、腕の見せ所だなと思います。

S:私は、悲しい結末にしかならないということが行間から伝わって、ハッピーエンドにはならないんじゃないかと思ったんです。
でも、結末がどうあれこの本は最後まで読まなきゃいけないんだ、と強く思いました。

T:特に、物語を旅していく感じが好きでした。
今は、「泣ける」「笑える」というように「どういう効能があるか」という観点で物語が売られたり読まれたりすることが多いですが、そういう環境の中で、答えはないけれど、読んでいて「物語を一緒に生きる」という体験はなかなかないなと思いました。
営業さんにも送った感想なんですけど、「そこのあなたがこのタイトルも、著者も知らなかったらいいなと思います。前置きもどんな物語かも、何も知らないで読む方が、この物語はきっと楽しい。あなたもまた王であり、ひとりの旅人なのだから。」

S:素敵! 悔しいな、なんで私、そういうコメントが出せないんだろ。笑
私も単行本発売の時に編集さんの「ゲラ送ります」のツイートを見たんです。
入社して間もない頃で、書店員の知り合いもいないし、一番下っ端だったので、本を身内や取次さんの仲の良い方にとにかくプレゼントしました。
そして、贈った人に聞くと、「良かった」と言うんです。
「何がどう良かった」というのではなく、「良いものを読んだ」と言われて、これは最大の賛辞だなと思ったんです。
「泣けました」というような即物的な答えではなく、その人の中で色々な感情が巻き起こって、でもそれを一言では表現できない様々な感情の揺らぎがあった結果、答えが「良かった」に集約されたんだろうなと。

U:確かに「どう良かったか」を伝えにくいんですよね。この本。
僕は感想として「立ち尽くした」というのが本当のところ。簡単な言葉では言えないんです。
僕、すごい本に出逢うとPOPが書けないんですよ。
3000枚以上POPを書いてますけど、本当に良い本は「とにかく読んで」としか言えない。
『未必のマクベス』はそういう本です、間違いなく。
冒頭の「旅って何だろう?」というのが良くて。人生って旅なんですよね。
登山家とか冒険家に似てますよね。素晴らしい景色を見るために、命を危険にさらす。
絶景は言葉では言い表せなくて、行った人しかわからない。
それと同じで、読んだ人しかわからないものがあるんです。
最後の一行一文まで読んで欲しいと言うしかない。
すごい本ですよ。

S:以前、営業さんと私で感想を言い合ったことがありまして、
お互い微妙に感想が違うんですよね。

:面白いと感じたり、刺さったりする場面が違うんです。
僕も知り合いに読んでもらいましたが、やはり人によって感想が全然違う。
読書量の多い少ないでも違いますし、男女でも違う。

U:でも、これが営業さんの人生を変える一冊になっているわけでしょ?
究極ですよ、読書の。それだけの文字の力、活字の力がある。
それを届けたい。それ以上のことはないから。

:読んだら何かしら変わると思うんですよね。『未必のマクベス』以前・以後みたいな。

S:「その人がどういう人生を送ってきたか」によって感想が変わるんですよね。
多分私が一人でPOPを作るなら、
「読み終えたあと、あなたは何を感じましたか? 
ぜひ大切な人とそれを語ってください。」
と書きます。
昔、「本の形をしたラブレター」と書きました。センチメンタルすぎるかな?笑

――今回の文庫化で多くの人がはじめて手に触れますよね。
顔となる「表紙」が大切かと思いますが、文庫化にあたってご意見をいただけますか?

S:イラストはやめてほしいです。単行本のままが一番良いと思います。

:僕がこの本を買った時は、すごくすっきりとしていてデザイン性が高いところが気に入ったんです。
表紙の写真が撮られた時間帯が、黄昏時なのか、朝焼けなのかわからないのも綺麗で。
朝焼けだったらこれからどんどん良い方向に向かうし、黄昏時だったらどんどん闇に向かっていく。
どちらに向かっていくのかという期待感と装幀・タイトルのバランスがとても好みでした。
ちなみに、本を献本した書店員さんに伺うと、
単行本のままをご希望の方と変更をご希望の方が半分ずつでした。

T:僕はこの装幀のままが良いですね。この絵で色味を変えてみる、というのはどうでしょう?
もう少し時間を進めて夜にして、ミュシャの「スラヴ叙事詩」みたいな青さにしたり。

S:完全なる写真ではなくて、水面に映った部分だけ色が違うのも面白いですね。

――「こういう作家さんを読んでいる読者は好きなんじゃないかな?」というイメージは?

:森博嗣さん、村上春樹さん、佐藤正午さんとかでしょうか。
作品の持つ雰囲気が似ている気がします。それぞれの読者の方は読んでいただきたいなと。

:ちなみに、解説は北上次郎さんにお願いしています。帯に関しては今のところ白紙です。
ただ、個人的な意見ですが、表紙は単行本と同じにしたいんです。
タイトルの置き方や細部は、皆様のご意見を参考に調整しますので、帯も含めてお楽しみということで。

:では、今日は長時間にわたりましてお時間いただきありがとうございました。
刊行は9月下旬を予定しております。ぜひ店頭でのご展開、よろしくお願いいたします。

★9月21日発売★
『未必のマクベス』
著:早瀬 耕
価格:1,080 円(税込)
ISBN:9784150312947
http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013660/



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