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『正解するカド』プロデューサーインタビュウ特別公開(後篇)

作家・野﨑まど氏が脚本を担当したことでも話題のSFアニメ『正解するカド』。そのプロデューサーである東映アニメーション・野口光一氏のインタビュウを特別公開します(後篇)(聞き手:小林治、構成:編集部)

■「カド」での挑戦

──「正解するカド」はタイトルがとても印象的ですね。

野口 最初の、野﨑さんとのタイトル決めのときから、すんなりと「正解するカド」に決まっていましたね。僕たちも不思議なタイトルだなあと思って、どうやって英語にしようか少し悩みました(笑)。意味深なタイトルも、野﨑さんらしいと思います。

──PVを拝見して、「カド」はなかなかチャレンジャブルな企画だと思いました。

野口 「カド」は基本的に交渉劇で、最後に大きな展開、驚きがある物語です。まさに野﨑さんが小説で書かれてきたスタイルですね。そこに巨大な立方体や、謎の存在ヤハクィザシュニナとのファーストコンタクトの要素が加わりました。

 作品としては面白くなる自信はあるんですが、こういうアニメ作品がいままで日本にはなかったので、ビジネスとしては挑戦です。

 その意味では、「シン・ゴジラ」が出てきてよかったと思っているんです。シナリオは二〇一五年の末に終わっているんですが、外部の方に「どういう作品?」と聞かれたときに、「シン・ゴジラみたいなリアルな交渉劇です」といえば、わかっていただきやすくなりました(笑)。相手はゴジラではなく、巨大な立方体であり、どこかわからない世界から来た、人間に模した謎の存在ですが。

──今までのアニメのパターンにはあてはまらない話ですからね。今回発表されたロングヴァージョンのPVをみてビックリしたのは、冒頭が実写であることでした。


野口 宣伝プロデューサーが、他作品と違うというアピールポイントとして入れたんだと思います。シナリオの面白い展開はあるので、そこをどう映像化するかは監督の腕の見せどころですね。みんなでいろいろ考えて、映像的な面白さをつくろうとしています。

──「カド」の映像表現についてもうかがいます。CGのアニメというとアクションを中心に描かれるのかな、と思い浮かべます。でも本作は、先ほどもうかがいましたが、交渉劇がメインで、主人公は外務省官僚。会議のシーンも多いんですよね。

野口 そうですね。「楽園〜」のようにロボットが派手に動き回るアクションがあったり、露出度の高い美少女キャラクターが登場したりするわけでもありません。CG制作者からも、「なぜこの内容をCGでやるのか?」という疑問も投げかけられました。
 でも、いずれこういうアクションメインでないドラマをCGアニメーションでつくる時代が来るはずだから、それなら東映アニメーションが最初にやろうと考えています。五年経てば、こういう作品をCGで制作するは普通になっていくと思っているんです。

──なるほど。その交渉劇の中心となるであろう〝カド〟は、独特の模様が印象的ですね。

野口 総監督の村田和也さんのアイデアで、カドの表現には3Dフラクタルを使っています。あの表現は計算でしかできないもので、CG制作者にとっては少し古い技術ということもあり、誰もあれをエンターテインメントに使おうと思っていませんでした。まともに計算すると時間がかかるので、「カド」ではゲームのエンジンのUnityを利用しています。


──キャラクター描写はいかがでしょうか?

野口 二十人ほどのメインキャラクターはCGで、それ以外には作画(手描き)のキャラもいます。ところどころに、違和感が出ないように手描きを入れたりしています。

──出来上がりを見て、プロデューサーの立場から、期待通りといえるでしょうか。
野口 期待以上です。想像できないものを映像化してくれた、と思っています。

■ゴジラが導いた道

──本作は野口さんがはじめて挑戦するCGによるTVアニメシリーズですが、いろいろジャンルがあるなか、なぜSFなんでしょうか。

野口 単純に自分が好きだからですね。ぼくは特撮育ちで、VFXで映画をつくりたくて渡米もしました。技術と、映画を結びつけることが好きなんです。ですから、ある年齢に達してプロデューサーになって、なんの企画をやろうかと考えたとき、まずは好きなことをやろうと思いました。

──野口さんはそもそもどんな特撮がお好きだったんですか?

野口 いちばん最初に衝撃を受けたのは「ゴジラ対ヘドラ」ですね。小学校のころだったと思うんですけど、怖くてトラウマになりました。そのあと中学から高校の頃に「エイリアン」「ブレードランナー」「未知との遭遇」が公開されました。ああ、こういう世界があるんだと衝撃を受けました。〈SFマガジン〉さんには失礼ですが、ぼくにとってSFは映画だったんですよ!(笑)
「ゴジラ対ヘドラ」みたいなショックを、もう一度みなさんに、今度は製作側として提供したいという思いがずっとありました。なので、オリジナル作品を企画するときはSFをやってみようと決めていたんです。

──SFマガジンの読者に、「正解するカド」のアピールポイントをお願い致します。

野口 この作品はファーストコンタクトもので、未知の存在と出会ったときに人間はどう行動してしまうのかという面白さを味わっていただくとともに、どう行動すべきかというのを考えてもらいたいと思った作品なんです。意外と非常事態を気にしないで生活している人もいる一方で、政府はワサワサと動揺していたりする。それをシミュレーションしている作品なので、もし今後誰かがなにかとファーストコンタクトするとき、ちょっと思いだしてほしいなと思
います。

 SFは難しい、わかりにくいとよく言われますが、「インターステラー」が日本でもヒットしたことが自分の中ではターニングポイントで、SFの企画の筋が見えたと思っています。つまり、ヒューマンドラマをちゃんと描いたSFなら、受け入れられるんだなと。逆にいうとヒューマンドラマをちゃんと描かないと、SFではあっても、アニメとしてはヒットしない。そこをうまく、本作では実現できたかなと思っています。ご期待ください。

(二〇一七年一月二十六日/於・東映アニメーション)

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