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「ゲーム・オブ・スローンズ」製作総指揮デヴィッド・ベニオフ、D・B・ワイスは、早川書房から小説も出ていました。ふたりのオフィシャルインタビュー(後篇)

12月4日に早川書房より発売される『ゲーム・オブ・スローンズ:コンプリート・シリーズ公式ブック ~ウェスタロスとその向こうへ~』(紹介記事はこちら)。本書は大人気テレビドラマシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」の、ファン待望のビジュアルブックです。本記事では9月に来日した、製作総指揮デヴィッド・ベニオフ氏、D・B・ワイス氏のオフィシャルインタビューの後篇をお送りします(前篇はこちら)。両氏とも小説家としても活躍し、どちらの作品も早川書房から刊行されています!併せてぜひチェックしてみてください!

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■プロフィール

デイヴィッド・ベニオフ 1970年、アメリカ・ニューヨーク生まれ。2000年に『25時』で長篇小説デビューし、『卵をめぐる祖父の戦争』(ハヤカワ文庫)などを発表。その後『25時』の映画脚本や、映画「トロイ」などの脚本を担当。

D・B・ワイス 1971年、アメリカ・シカゴ生まれ。2003年に小説家として処女作『ラッキー・ワンダー・ボーイ』(ハヤカワ文庫)を発表。その後大学以来の友人であるデイヴィッド・ベニオフと共に「ゲーム・オブ・スローンズ」の脚本・製作総指揮を務めている。

■キャスティングについて

——この作品に出演した当初は無名だったキャストも多いですが、キャスティングのオーディションで印象に残っている事は?

D・B・ワイス 最初はキャスティング専用のウェブサイトで各自の動画を見たんだ。だからノートPC上での小さな映像が最初の印象だった。それが実際に会うとおかしな感じだったな。初めてエミリアに会った時の事はよく覚えてるよ。その頃僕らはデナーリスに合う役者が見つからずに困り果ててたんだけど、PC上の小さな画面でエミリアの映像を見て、彼女しかいないと思った。その後ロンドンに行って実際にオーディションをしたんだけど、面白い事に実際の彼女はとても陽気で常に幸せそうに笑ってて、よく冗談なんかも言ってたよ。本来の彼女はデナーリスとは似ても似つかないのに、”アクション”の声と共にカメラが回ると、まるでスイッチでもあるかのように本来の彼女とは全く違う人間に変わるんだ。そんな彼女の才能と、一緒に働く上で楽しいところが大きな決め手になったんだ。HBOのオーディションもあって、彼女はL.A.に来てオーディションを受けた。とても良い演技を見せて、オーディションは無事終了したよ。当時のHBOの社長マイケル・ロンバルドも感心してたね。それで最後にデヴィッドが「ダンスはできる?」って聞いたら彼女は踊り始めたんだ。ロボットダンスとブレイクダンスをね。全く動じる事もなく、恥ずかしがりもせず、ただ楽しいから踊っているという感じだった。彼女はそういう人なんだ。第一印象がすごく良かった。デナーリスとは全然違う? その通り。彼女は人を怒鳴りつけたりしないよ。

■撮影の思い出

——お2人それぞれが思うベストエピソードとは?

デヴィッド・ベニオフ 第六章第9話「落とし子の戦い」はすごく思い入れがあるね。監督のミゲル・サポチニクとの仕事は楽しかったし、戦闘シーンも見事だ。ラムジーを残してサンサが去る最後のショットは、みんなが現場で見守っていた。彼女はカメラの方へ歩いてきて通り過ぎる。小さく笑みを浮かべてね。夜の撮影だった。何度もやり直して、やっと成功した時、ミゲルを見て頷くと、彼も返してきた。そしてソフィーを抱きしめ、これは特別なシーンになると感じたよ。サンサが復讐する日をずっと待ってたし、あの時点で最も壮大なエピソードだった。だからとても誇りに思ってるよ。

D・B・ワイス 僕は第三章第9話「キャスタミアの雨」のエピソードに思い入れがある。正しく映像化できるかすごく不安だったんだ。もしこのシーンを正しく描ければ、登場人物に与える影響を印象付けられ、それがシリーズの成功の鍵となる。ドラマのラストまでの方向性を決定付ける重要なシーンだっただけに、すごい重圧だったんだ。監督したデヴィッド・ナッターは、誰よりも多くのエピソードを手掛けた人物だ。そんな彼にこのエピソードが託され、彼は予想以上のものに仕上げてくれた。まだ編集が荒い段階のものを見ただけでも、きちんと完成されている事が分かった。その時の事はよく覚えてるよ。最後のミシェル・フェアリーの恐ろしいショットを見た瞬間だ。彼女が倒れて、フレームの外へ消える。それは僕たち2人にとってとても大きな瞬間だった。きちんと映像化できたと確信した瞬間だったからね。

——これだけ壮大な世界観、物語を構築していくのは大変だったと思いますが、制作していく中で一番苦労した事は何でしたか?

デヴィッド・ベニオフ 世界観が壮大だから、全体をまとめるのに苦労したよ。それに欠点を探られるから何かひとつでも間違えると、全てが台無しになる恐れがあった。例えばもしミシェル・クラプトンが衣装担当じゃなかったら、あそこまで美しい衣装ではなかっただろうし、セットが正しくなかったり、また配役を誤ってこの世界観にそぐわない俳優がいてもダメだ。不適当なセリフがあったりね。実は実際にこれはあったんだけど、幸運にも編集できたから。とにかく規模の大きさに苦労したね。”不信の自発的停止”という古い言葉がある。フィクションは受け手を信じさせる事で成り立っている。その没入感を途切れさせたら作品が楽しめなくなるんだ。

D・B・ワイス コーヒーカップひとつでね。それだけで作品全体が永遠に不完全なものになってしまう。

デヴィッド・ベニオフ カップが映り込まないように細心の注意を払ってたはずなんだけどね…。

D・B・ワイス でもドラマ制作がいかに難しいものなのか、みんなに伝わったなら、たまにはいいかもね。

——逆に楽しかった思い出は?

D・B・ワイス 10年もあると、思い出は数えきれないよ。あまりに長すぎて、もう覚えていない事も多いし。重労働だったしね。でも初めてクロアチアに行った時の事は印象深いよ。キングズ・ランディングは第一章ではマルタで撮影してたんだ。あそこでロケに使える部分は全て使ったよ。その後より作品に合うロケーションを探してクロアチアに行き着いた。別に楽しかったとか、大騒ぎしたとか、そういう思い出じゃない。ただ、ドブロヴニクという古い町で第二章を撮って、そこはまさしくキングズ・ランディングで、現地にある場所をそのまま使ったシーンも多い。町を歩いていると、長年夢見た世界の中にいる気分になったよ。ドブロヴニクにある庭園は撮影で多用した。『サウスパーク』でネタにされるほどね。あの庭園でよく撮影した理由は、本当に美しい場所だったから。アドリア海を臨むよく手入れされた屋敷があって、もう仕事という感覚ではなかったよ。誰もが休暇を過ごしたくなるような場所なんだ。あまりに美しくて物語の世界にいるようだった。そこでイスに座って穏やかな気分でセットを眺めてた。背景にはアドリア海。衣装を着た役者たちは仕事だという事を忘れそうで、互いに今は仕事中だと言い聞かせ合ってたよ。それくらい素晴らしい場所だったんだ。

デヴィッド・ベニオフ 僕にとって一番の思い出は、アイスランドの氷河の上で、撮影後にスタッフやキャストのみんなで雪合戦をした事かな。冬のアイスランドの撮影が良かった点は、昼が短くて5時間くらいしか撮影できなかった事だね。スタッフは暗い中で後片付けや明日の準備があったけど、それでも作業時間は短かった。雪合戦の後はみんなで小さなモーテルに戻って酒を飲んでた。これがアイスランドの過ごし方だよ。撮影は少人数だったけど、本当に楽しかった。とても美しい国で素晴らしい時間を過ごせたよ。

——最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

デヴィッド・ベニオフ 「ゲーム・オブ・スローンズ」を観てくれて本当にありがとう。この作品は日本文化の影響も受けていて、ラニスター家の鎧は侍からヒントを得てる。僕たちは2人とも日本に憧れて育ったんだ。武士道とか、忍者とかね。僕が初めて持った武器は手裏剣だったくらいだよ。今、物語を作る上で、こうした事は僕らにとって、とても大きな糧になっているんだ。それは原作のジョージも同じで、だから日本の人たちに僕たちの作品を気に入ってもらえてすごく嬉しいし、光栄に思うよ。

D・B・ワイス 日本の人に気に入ってもらえる作品にすることがひとつの基準になってたんだ。それは僕たちにとって大きな目標だった。だから気に入ってもらえたことで僕たちの夢が叶ったよ。

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来週以降は、キャストのインタビューをお送りいたします!