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起業のスキルが身につく「三つの基本原則」を紹介!『すべては「起業」である』試し読み

起業の基本原則は、「発見」「解決」「拡大」の三つに集約される――そう説くのが新刊、『すべては「起業」である  正しい判断を導くための最高の思考法』(ダニー・ウォーシェイ、渡会圭子訳、早川書房)
本書が提案する黄金ステップを踏まえれば、ビジネスだけでなくあらゆる場面であなたの意思決定はよりスムーズになるはず。本書の第一章から一部を抜粋して試し読み公開します。

『すべては「起業」である  正しい判断を導くための最高の思考法』ダニー・ウォーシェイ、渡会圭子訳、早川書房
ダニー・ウォーシェイ[著]渡会圭子[訳]
『すべては「起業」である——正しい判断を導くための最高の思考法』 (四六判・並製)
刊行日:2023年11月21日(電子版同時配信)
定価:3,190円(10%税込)
装幀:OKIKATA
ISBN:978-4152102805

起業を志すすべての人が習得し応用できる、三つの基本原則

私が起業したスタートアップに共通する基本的な特徴を抜き出してみると、会社の目指すところがすべて同じだった。それは問題を解決する●●●●●●● ということだ。先ほど述べたとおり、私にとって最初のスタートアップで、アップルに売却したクリアビュー・ソフトウェアは、オフィスで働く多くの人々の頭痛の種だったデータ収集とデータ管理の問題を見つけ出した。私が共同設立した旅行雑誌とインターネットのスタートアップ企業であるゲートウェイズは、何百ものB&B(朝食付きホテル)が直面していた、自分たちのホテルにいかに客を呼び込めるかという問題に取り組んでいた。かくして、この特別なリベラル・アーツ、すなわちアントレプレナーシップをブラウン大学で教えるさいの焦点は、問題解決のためのプロセス●●●●●●●●●●●● となった。

私自身の起業体験だけを語っても、同じことはできないかもしれないし、適切でない可能性もあるので、厳密な調査やケーススタディを使ってこのプロセスを教えることにした。私は型にはまることなくアントレプレナーシップを定義し、より包括的なアプローチをとることができたので、その中心をなしていたビジネスやテクノロジーの分野だけでなく、より幅広い学問分野から題材を集めることができた。アントレプレナーシップが広く影響を及ぼす力を示す目玉として、最初のシラバスにインドのアラビンド眼科病院の事例を盛り込めたのは、喜ばしいことだった。

さらに学生やワークショップの参加者からなる公式のネットワークをつくり、それが継続的なフィードバック・ループとなり、私は彼らの起業体験に基づいて、「発見・解決・拡大」起業プロセスを改善、更新、向上させることができるようになった。卒業生にとっては、リアルタイムの議論を通じて常に最新の情報を得て、私から、そしてお互いから学び続けられるようになった。

その後の15年間で、私はこのプロセスを改良し続け、ブラウン大学をはじめ、世界中の何千人もの学生たちに教えてきた。この構造化されたプロセスには、起業を志すすべての人が習得し応用できる、三つの基本原則がある。

1.発見:満たされていないニーズを見つけて確認する。あなたが解決しようとする問題は何か。これがこの構造化されたプロセスで最も重要な部分で、思った以上の時間と労力をつぎ込むことが求められる。

2.解決価値提案バリュー・プロポジションを決定する。反復的なプロセスを通じて、小規模な問題解決策を考える。

3.拡大:サステナビリティ・モデルをつくる。解決策を拡張し、長期にわたって大きな影響力を持ち続けるものにする。

この構造化されたプロセスは、広範囲な問題に応用が可能で、さまざまな価値提案やサステナビリティ・モデルを生み出す。それは従来のビジネス分野にとどまらない。端的に言うと、「発見・解決・拡大」起業プロセスはイデオロギーではなく方法論として、研究所、平和を求めるNPO、米国大使館の経済開発構想など、ビジネスをはるかに超えた領域で、問題解決する力を与えてきた。この方法で多くの人が大金を稼いだのは確かだが、もっと多くの人にとって、もっと大きな意味を持つものだ。これら起業につながった解決策の多くは「善を行なうことによって業績をあげ」、世界をよりよい場所にするものなのだ。

従来のアントレプレナーシップの概念は、技術的な発明のビジネスへの応用が中心だったが、このプロセスはさまざま状況で問題解決を目指す人々にとって有用なものになっている。従来のアントレプレナーシップの概念は、ビジネスの結果を重視していた。このプロセスではビジネス・モデルについて、長期的に大規模な問題解決を可能にする、数多くあるサステナビリティ・モデルの一つに過ぎないと考える。

科学的手法を学んだからといって、私の教え子であるリベラル・アーツ専攻の学生たちの多くは科学者になるわけではなく、書き方を学んだからといって、誰もがプロの作家になるわけでもない。しかしこれらの基本的なスキルは、彼らが仕事をする上で不可欠なものである。「発見・解決・拡大」起業プロセスを習得したからといって、学生たちがテック・ビジネスという狭い分野での起業家になるとは限らない。しかしこのプロセスは、学生たちがさまざまな分野で活躍する上で必要不可欠なものだ。アントレプレナーシップは、いまやビジネスに限定されるものではなくなっている。

この「発見・解決・拡大」起業プロセスには、私自身のリベラル・アーツ出身の経歴が反映され、活用されている。そこには人文科学、アート、科学、社会科学などの要素が含まれ、アントレプレナーシップをリベラル・アーツとして扱っている。

本書にはスティーブ・ジョブズのような、よく知られた起業のヒーローだけでなく、アインシュタイン、パスツール、聖アウグスティヌス、マヤ・アンジェロウ(アメリカの詩人、公民権運動家)、数学者のルース・ノラー、ジェームズ・ボールドウィンなどの話も出てくる。さらに社会学者のバーティス・ベリー、植物学者のロビン・ウォール・キマラー、そしてチカナ(メキシコ系アメリカ人)文化論、フェミニズム論、クィア論の研究者であるグロリア・アンサルデュアなど、私が本書の執筆の過程で知った、さらに多様な、感動的な言葉を聞くことができるだろう。


起業にとどまらず、ビジネス一般や日常生活にも応用できる思考法とは? この続きは、本書『すべては「起業」である』でご確認ください。電子書籍も同時発売です。

書誌情報

『すべては「起業」である  正しい判断を導くための最高の思考法』
著者:ダニー・ウォーシェイ
訳者:渡会圭子
出版社:早川書房
発売日:2023年11月21日
本体価格:2,900円(税抜)

著者紹介

ダニー・ウォーシェイ Danny Warshay
ブラウン大学教授。ネルソン・センター・フォー・アントレプレナーシップの創設者。ブラウン大学在学中にクリアビュー・ソフトウェアのリーダーシップ・チームの一員として起業を開始。その後、ソフトウェア、先端素材、消費財、メディアなど幅広い分野の企業を共同設立。ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得。ロードアイランド州プロビデンス在住。

訳者紹介

渡会圭子 (わたらい・けいこ)
翻訳家。上智大学文学部卒業。訳書にデュヒッグ『習慣の力〔新版〕』、ウォーカー『スノーボール・アース』(以上早川書房刊)、オキーン『記憶は実在するか』、ブディアンスキー『クルト・ゲーデル』など多数。

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