
『円 劉慈欣短篇集』訳者・大森望さんによるちょい見せツイートまとめ
いよいよあす『円 劉慈欣短篇集』発売! 本作は『三体』ロスに陥っているみなさまにも、「『三体』に手を出したいけど、勇気が出ない……」なみなさまにも、大いにおすすめしたい短篇集です。劉慈欣の作家歴のほぼ全体をカバーしている本作は、入門篇としても最適。
いったいどんな作品が収録されているのか? 訳者・大森望さんによるちょい見せツイートをまとめました。
「郷村教師」大森望・齊藤正高訳
貧しい村で子どもたちの教育に人生を捧げてきた教師。彼の“最後の授業"が信じられない結果をもたらす……!
『円 劉慈欣短篇集』から「郷村教師」冒頭紹介https://t.co/UrLB1yr6is
— 大森望 (@nzm) November 8, 2021
最後の授業を前倒しにしなければ。
肝臓から激しい痛みがまた突き上げてきて、気が遠くなった。もはやベッドから起き上がる気力も残っていないが、なんとか窓辺に這い寄った。ガラスが月の光を反射して銀色に輝き、…
その小さな窓が別世界に通じる扉のように見える。向こうの別世界では、すべてがきらきら美しく輝いているはずだ。溶けることのない雪と銀とでつくられた箱庭のように。がたがた震えながら頭をもたげ、窓の外を見た。すると、幻想はたちまち消え失せた。
— 大森望 (@nzm) November 8, 2021
彼が生涯を過ごしてきた村が、遠くに見えた。
「詩雲」大森望・泊功訳
漢詩に魅せられた超高度な異星種属が、李白を超えるべく、あまりにも壮大なプロジェクトを立ち上げる!
『円 劉慈欣短篇集』、来週11/17発売。収録作「詩雲」の書き出し:
— 大森望 (@nzm) November 13, 2021
伊依(イー・イー)たち三人はクルーズ船に乗って南太平洋を航海しながら、詠詩の旅をつづけていた。旅の目的地は南極点である。数日後、つつがなく極点にたどり着けたら、そこから地殻をくぐり抜け、詩雲を見物する予定だった。…
… 空も海も澄み渡っている。ただ、詩作という芸術的営為にとって、きょうの世界はあまりにも透き通り過ぎていた。見上げると、ふだんはめったに見えないアメリカ大陸が天空にくっきり浮かび、世界を覆う巨大なドームの東半分にあって、そこだけ壁の漆喰が剥がれ落ちたように見える……。(p.179)
— 大森望 (@nzm) November 13, 2021
地球がどうしてこんなことになっているのか、主人公たちはどうして詩作クルーズをしているのかについては、「詩雲」本編をお読み下さい。『円 劉慈欣短篇集』は11月17日発売予定。全13篇。https://t.co/UrLB1yr6is
— 大森望 (@nzm) November 13, 2021
「円円(ユエンユエン)のシャボン玉」大森望・齊藤正高訳
円円は幼い頃からシャボン玉が好きだった。大きくなってもその想いは変わることなく……。少女の夢が世界を変える、愛と希望に満ちた物語。
発売中のSFマガジン12月号は、スタニスワフ・レム生誕100周年特集と、1500版到達記念のハヤカワ文庫JA総解説PART3(最終回)がメインですが、劉慈欣短篇集のサンプル的に、収録作の1篇、「円円のシャボン玉」が先行掲載されています。幼い頃からシャボン玉が大好きだった女の子が世界を変える話。
— 大森望 (@nzm) November 8, 2021
「円円のシャボン玉」書き出し付近の一節。「円円がはじめてシャボン玉を見たのは、生後五カ月のときだった。ママの腕の中でたちまち手足をバタバタさせて暴れ出し、その小さな瞳の中に、太陽や星々も色褪せるほどの輝きを爆発させた。まるで、このときはじめてほんとうに世界を見たかのようだった」
— 大森望 (@nzm) November 8, 2021
いかがでしょう、読みたい気持ちが止まらなくなってきたのでは……? 本短篇集では上でご紹介した3篇のほか10篇、全13篇を収録。『円 劉慈欣短篇集』はあす、11月17日(水)発売! どうぞお楽しみに!
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