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ボーヴォワールの未発表シスターフッド小説、半世紀以上の時を経て刊行。『離れがたき二人』(関口涼子訳)

代表作である『第二の性』で、「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」として、女性らしさは社会に作られたものであると批判し、女性の解放を説いたフランス人哲学者シモーヌ・ド・ボーヴォワール。生前に発表されることのなかった幻のシスターフッド小説を、7月1日に早川書房より刊行します。

離れがたき二人

装幀:名久井直子
写真:ザザとシモーヌ、ガーニュパンにて(1928年9月)
🄫Association Élisabeth Lacoin / L’Herne

著者:シモーヌ・ド・ボーヴォワール
訳者:関口 涼子
解説:中村彩(フランス文学研究者)
ページ数:216ページ
ジャンル:文芸
版型:46判並製単行本


●シモーヌ・ド・ボーヴォワール(1908-1986)

フランスの作家・哲学者。ジャン=ポール・サルトルのパートナーでもあった。1949年に、『第二の性』を発表。フェミニズムの古典として読み継がれている。1954年には『レ・マンダラン』でゴンクール賞を受賞。同年に執筆された本書『離れがたき二人』は、存命中に発表されることはなかったが、作品の扱いを任された養女が出版を決断。著者没後34年の2020年に日の目を見ることとなった。

●『離れがたき二人』出版の経緯

本書は1954年に執筆されるも、"個人的すぎる"としてシモーヌの生前に出版されることがありませんでした。また、サルトル自身が愛情の描写について批判したことで、シモーヌが出版を断念したという説もあります。しかし、近年になってシモーヌの養女が遺産相続したアーカイブから発見し、今回の刊行に至りました。

●あらすじ

今から約100年前のパリ。
9歳のシルヴィーは、アンドレが学校にやってきた日から、
すぐに彼女に魅了された。

教師への反抗的な姿勢や、美しい事柄に心を震わせて鳥肌が立つこと。
そんなアンドレを見て、シルヴィーは密かに思う。
彼女は「将来書物にその人生が記される天才少女の一人に違いない」と。

二人は共に成長し、
政治、正義、芸術、文学について何時間も語り合い、
彼女たちだけの世界を築いていく。

しかし、大学に入り、大人になるにつれて
周囲から“離れがたき二人”と呼ばれていた友情にも
避けることのできない終わりが近づき――。

シモーヌ・ド・ボーヴォワールの親友
エリザベット・ラコワン――ザザ――に捧げられて執筆されるも、
生前は未発表だった小説が、当時の書簡や写真資料、養女のあとがきを交え、半世紀以上の時を経て刊行。


●本書に寄せられた賛辞

エリザベット(本書でのアンドレ)、彼女こそが、カトリックのブルジョワ階級が女性に及ぼしている抑圧に対しボーヴォワールの目を開かせてくれた。ここで私たちは、単なるフェミニズムのみならず、ボーヴォワールにおけるフェミニズムの誕生に立ち会っているのだ。――フレデリック・ベグベデ(ルノードー賞受賞作家)

二人の少女の友情と、自分たちの世界を切り開き成長していく姿を描いた、感動的で心をつかむ青春小説”――《インデペンデント》紙

ボーヴォワール自身が、既存の価値観に期待されていた人物像にどう対抗していったか、そして彼女の知的で実存的な野望がどう生まれたかを描きだしている”――《ガーディアン》紙

ボーヴォワールの初期の人生のチャプターを描き、彼女のジェンダー格差やセクシズムに対する考えに影響を与えた重要な人物との関係を映しだす作品”――《ニューヨーク・タイムズ》紙

●訳者について

関口涼子

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🄫Felipe Ribon

1970年東京生まれ、翻訳家、詩人、作家。フランス語と日本語で創作を行う。2012年にはフランス政府から芸術文化勲章シュヴァリエを授与される。訳書に、P・シャモワゾー『素晴らしきソリボ』、ダニエル・ヘラー=ローゼン『エコラリアス』、M・ウエルベック『セロトニン』など。ピキエ社刊行の、食をめぐる日本文学の叢書「Le Banquet (饗宴)」編集主幹。

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『離れがたき二人』は早川書房より2021年7月1日に刊行予定です。




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