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『大江戸奇巌城』――ミッション・インポッシブルに挑む江戸の5人の少女たち

 奇想天外で荒唐無稽で、ワクワクドキドキさせられる冒険活劇――推理作家協会賞&本格ミステリ大賞受賞作家である著者が執筆を熱望した痛快時代劇小説、それが本書『大江戸奇巌城』(芦辺拓/著)です。
 日ノ本を支配しようする(妄想と奇説に取りつかれたかのような)巨悪に、少女たちがたったの5人で挑む。一人ではできないことも「五本の矢」であれば大きな破壊力となる――まさに強い決意で悪を撃ち抜く、清々しさに満ちた物語です。
 読みどころはなんといっても、ともに苦難を乗り越え、成長してゆく5人の友情・関係性。それぞれのスキルを組み合わせて難事に挑んでゆきます。本稿では「為れぬ密旨(ミッション・インポッシブル)」に挑む、5人の主役たちをご紹介します。


ちせ

■ちせ
 学問が大好きで、お人形遊びや、ままごとなどするかわりに、家じゅうに積み上がった書物を読み散らして育つ。結果、見よう見まねで簡単な医術や調薬ぐらいはできるようになってしまう。おかげで少し目を悪くして眼鏡をかけている。学問の便利屋、よろず知恵貸し所と言われる博識で奇行の父親を温かく目で見守る。


浅茅

■浅茅
 男装して昌平坂学問所に通う。生まれつき病弱な弟の代わりとして、前髪立ちの少年風に髷を結う。だが弟の犠牲となって自分の人生を差し出したのではなく、全ては自らの意志で男名前を名乗り、男として学ぶことを決めたことに誇りをもつ。学問所の試験も優秀な成績。危機を助けてくれた野風を、初めてわかりあえる友だと慕う。


アフネス

■アフネス
 長崎オランダ商館勤めの上級社員(阿蘭陀人)の父とそれなりの家の娘(日本人)との間に生まれる。龍の目を持ち、〝鬼女〟と呼ばれ、〝毒娘〟と見られ、恐れられてきた。サーベルの使い手で、鮮やかな乱舞で敵を切り倒す。出島の料理人直伝の「とある料理」を作るのがばつぐんにうまい。


喜火姫

■喜火姫
 青鴫藩五万石、太田原摂津守の末の姫として生まれ育つ。藩主の父の急病と、兄の急死がきっかけでお家騒動が勃発、理不尽にも放逐される。逃れ逃れて尼寺に世話になる。国家老の屋敷に潜入しようする行動派。銃器(西洋渡りのピストル)が大好きで銃の名手、百発百中の腕前。


野風

■野風
 青鴫藩の剣術師範の一人娘で、幼いときから刀だけでなく、棒術や体術などの武芸百般をおさめる。屋根裏に身をひそめるなどの隠密行動も得意で、どんなときも勇敢で、万事にためらいがない。別式侍と呼ばれ、「喜火姫様をお守りする」ことに命をかける。


 以上の5人が一人一人が主役格として活躍する短篇5話の前半と、5人が出会ってミッションに挑む後半という構成でおおくりする本書。大ボリュームの大活劇をお楽しみください。(編集部)


『大江戸奇巌城』芦辺拓・著単行本/早川書房刊/2,420 円(税込)
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