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「メタバース」への事業転換はなぜ行われたのか?(『フェイスブックの失墜』ダイジェスト)

「フェイスブックの広告ビジネスは、ユーザーがサイトで長く過ごせば過ごすほど、より多くのデータを取得できるという危険なフィードバックループの上に構築されていた」(本文より)

ニューヨークタイムズ紙記者、 セシリア・カン、シーラ・フランケル著『 フェイスブックの失墜 』(原題 An Ugly Truth: Inside Facebook's Battle for Domination)が刊行されました。 原書は昨年7月に刊行されるやニューヨーク・タイムズ・ベストセラーとなった話題作です。「メタバース」への大胆な事業転換はなぜ行われたのか。本記事は『フェイスブックの失墜』の読みどころをまとめたダイジェストです。

関係者400人以上の証言をもとに、世界人口3分1超のユーザーを抱える巨大ITプラットフォームの暗部を描く

本書は400人以上の人々への1000時間を超える取材によって完成した。取材に応えてくれた人の大半は、フェイスブック幹部、元および現従業員とその家族・友人・元同級生、フェイスブックへの投資家やアドバイザーである。(本文より)

創業者ザッカーバーグの欺瞞

フェイスブックがハーバード大学の女子学生の容姿を格付けするブログから始まったのはよく知られている事実であるが、2019年10月のワシントンDCにあるジョージタウン大学でのザッカ―バーグによるスピーチでは、イラク戦争に対するアメリカ政府の不信感から、フェイスブックという意見発信の場をつくったと述べた。

創業者マーク・ザッカ―バーグがCOOシェリル・サンドバーグをリクルートした経緯、またその後の2人の間の溝とは?

エンジニア出身のザッカーバーグと、元グーグルでフェイスブック広報担当のサンドバーグとの間には、社の方針に対して根本的な考え方の相違があり、ザッカーバーグは優秀なエンジニアを確保することに躍起になる一方で、サンドバーグは広報活動にもっと力点を置いた方が良いと考えていた。そして、サンドバーグはある役員に、自分にもっと経営のリソースを与えるようザッカーバーグに働きかけてほしいと依頼した。その結果、「ほとんどの幹部社員は事実上「シェリル派」と「マーク派」の二つの陣営に分かれ」、またフェイスブックは「交わることのない二つの指揮系統のもとで活動が行なわれている」という状況になった。

フェイスブックが、ユーザーの思想・政治的な対立を増幅させ、またトランプ大統領を生んだひとつのきっかけとなった

そして、選挙前に偽情報がサイト上に氾濫したことで今後フェイスブックは非難されるだろうと警告した。このオフィスで働く社員の一部は、内心では批判も仕方ないと感じていた。フェイクニュースに対する会社の取り締まりが甘かったせいでトランプの当選に貢献したのは事実なのだから。 (本文より)

フェイスブック(Meta)の行く先は

この本が世に出るころには、フェイスブックは大きく変貌している可能性がある。ザッカーバーグはCEOを退任し、慈善活動により多くの時間を費やすようになっているかもしれない。 (本文より)

ユーザーの滞在時間を増やすために設計された「危険なアルゴリズム」とは? Facebookとの付き合い方を考える上でも役立つ一冊!

●書誌情報●
■書名:フェイスブックの失墜
■著者:シーラ・フレンケル、セシリア・カン
■訳者:長尾莉紗、北川蒼
■本体価格:2,200円
■ISBN:9784152100948

●著者紹介●
シーラ・フレンケル(Sheera Frenkel)ニューヨーク ・ タイムズ 紙記者。サイバーセキュリティ を 担当。以前は、海外特派員として中東に滞在し、BuzzFeed 、 NPR 、 Times of London などの媒体に記事を 執筆していた。
セシリア・カン(Cecilia Kang) ニューヨーク・タイムズ紙 記者。 テクノロジーと 行政政策 を担当 。 以前は、ワシントン・ポスト紙 に在籍していた。
◎解説:古田大輔(ジャーナリスト、メディアコラボ代表)