「自分を変えたい」のなら、人間を超越せよ! 江永泉・木澤佐登志・ひでシス・役所暁『闇の自己啓発』1月21日発売
株式会社早川書房は、江永泉・木澤佐登志・ひでシス・役所暁『闇の自己啓発』を2021年1月21日(木)に刊行します。
闇の自己啓発会。「こんなことまで考えちゃっていいんだ!」「いま世界で一番おもしろい座談会シリーズ」「ものすごい熱量と圧力で、読者を熱力学的死に追いやるつもりか?」「とっ散らかったカオスが謎にポジティブな方向へ収斂してゆく感覚がめちゃくちゃ最高」などの感想が飛び交い、カルト的人気を博するnote連載読書会。書籍化にあたっては、note記事の中から6本を厳選し再構成しました。各回に大幅な加筆修正を施したほか4万字以上に及ぶ「脚注」を追加、さらに「闇の自己啓発会」発起人の江永泉氏による1万字超の書き下ろし補論「闇の自己啓発のために」を収載しています。
哲学者の千葉雅也さん(立命館大学教授)は、「世界には不快な〈闇〉がある。本書は、その〈闇〉をたんに批判するのでも面白がるのでもない。生きて死ぬことの意味を問い直すために、〈闇と共に〉思考する必要があるのだ」と熱い推薦コメントを寄せて下さいました。
本記事で、全容を初公開します。
第1部 闇の社会
法の支配が及ばないインターネットの暗黒領域・ダークウェブ。共産党が強大な権力をふるう監視国家・中国。両極端な2つの「社会」の様相が合わせ鏡となり、人間の作動原理を映し出す。議論は白熱し、「幸福」の定義が練り直される。
第1章 ダークウェブ
課題図書:木澤佐登志『ダークウェブ・アンダーグラウンド』
第2章 中国
課題図書:梶谷懐&高口康太『幸福な監視国家・中国』
―雑談① 『天気の子』と神新世―
第2部 闇の科学
健康と生産性を手に入れたければ、睡眠法を試すよりも身体を取り替えてしまえばいい。「ダイバーシティ」を求めるのなら、宇宙へとテイクオフしよう。最先端の科学技術がExit(出口)の扉を開く。デフォルトの外部をめぐる探検。
第3章 AI・VR
課題図書:海猫沢めろん『明日、機械がヒトになる』
第4章 宇宙開発
課題図書:稲葉振一郎『銀河帝国は必要か?』
―雑談② 『ジョーカー』のダンス―
第3部 闇の思想
やがて行きつく根源的な問い――私たちは生まれてこないほうが良かったのか? 反出生主義と向き合い、生きづらさ、人間関係、愛について考える。混沌の果てに、アンチソーシャルな「自己啓発」の可能性が浮かび上がる。
第5章 反出生主義
課題図書:『現代思想』2019年11月号 特集「反出生主義を考える」
第6章 アンチソーシャル
課題図書:レオ・ベルサーニ&アダム・フィリップス『親密性』
―雑談③ ゼロ年代から加速して――加速主義、百合、シンギュラリティ―
補論「闇の自己啓発のために」江永泉
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私の身体をこことは異なる地点に接続させる回路をつくること、私の身体をいまとは異なる時制に接続させる回路をつくること。自身と世界との間に、ディストピア的な世界/身体から逃れるような別のフィードバックの回路をつくり上げること。また、そのフィードバックの回路自体をモジュール化し、他者と共有したり、別の回路の一部に組み込んだりすることが可能な状態にすること。そして、そこから再び新たな回路を構築し、練り上げること。「闇の自己啓発」とはそのような営みに他ならない。それがもっぱら“闇"と呼ばれるのは、ただ既知を「わかる」と呼び、「わかりみ」を明るさで語る習慣からでしかない。“ここ"からの距離が遠くなるほど、言い換えれば不可知の圏域に私たちが近づけば近づくほど、光の速度が及ぼす支配力は弱まり、逆に闇はその本来の力能を増していくことだろう。
江永泉・木澤佐登志・ひでシス・役所暁『闇の自己啓発』(416頁、本体1900円+税)は1月21日(木)発売です。
【著者紹介】
江永泉 Izumi Enaga
1991年生まれ。「闇の自己啓発会」発起人。専攻は文化研究、文学理論。論考に「少女、ノーフューチャー――桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』論」(〈Rhetorica#04〉所収)など。
木澤佐登志 Satoshi Kizawa
1988年生まれ。文筆家。著書に『ダークウェブ・アンダーグラウンド――社会秩序を逸脱するネット暗部の住人たち』(イースト・プレス)、『ニック・ランドと新反動主義――現代世界を覆う〈ダーク〉な思想』(星海社新書)。晶文社のウェブサイトで「ビューティフル・ハーモニー」を、大和書房のウェブサイトで「失われた未来を求めて」を、〈SFマガジン〉(早川書房)で「さようなら、世界――〈外部〉への遁走論」を連載。
ひでシス hidesys
1991年生まれ。京都大学農学部→京都大学大学院農学研究科→ガジャマダ大学大学院農学研究科。化学メーカー勤務を経て、ソフトウェアエンジニアとして独立・起業。VTuber「リコピンめぐみ」としても活動、経済学者の松尾匡との対談「自動運転と経済学」が〈変革のアソシエ〉34号に掲載された。論考に「海外へ行ってみよう」(〈Rhetorica#03〉所収)など。
役所暁 Akatsuki Yakusho
1992年生まれ。Webライター・編集者。専攻は政治学。「闇の自己啓発会」では編集・構成を担当している。