やたら表紙がかっこいい『ガン・ストリート・ガール』装幀メイキング公開!【刑事〈ショーン・ダフィ〉シリーズ第四弾】
刊行以来、大好評いただいております『ガン・ストリート・ガール』(エイドリアン・マッキンティ/武藤陽生訳)。今回は装幀のメイキング記事をお届けいたします。
『コールド・コールド・グラウンド』から始まる刑事〈ショーン・ダフィ〉シリーズの装幀をすべて担当していただいているのはデザイナーの國枝達也さん(Twitterはこちら)。エラリイ・クイーン〈悲劇四部作〉(角川文庫版)やドン・ウィンズロウ『ザ・カルテル』、ダン・ブラウン『インフェルノ』といった海外ミステリ作品から、伊岡瞬『代償』芦沢央『罪の余白』など幅広いお仕事で大変著名なブックデザイナーです。小社作品では『熊と踊れ』『制裁』等のアンデシュ・ルースルンド作品のほか、マッキンティの『ザ・チェーン 連鎖誘拐』も手掛けていただきました。
〈ショーン・ダフィ〉シリーズはこれまでモノクロの、主に報道写真を表紙に使用してきました。例えば第一作の『コールド・コールド・グラウンド』の表紙は、北アイルランドで暴動が深刻化した1969年8月のロンドンデリーにおける警官と群衆の写真です。
↑これです。めちゃめちゃかっこよくないですか? ちなみに著者のマッキンティ本人からも当時この表紙に激賞をいただきました。
今回の『ガン・ストリート・ガール』では前作までのおおまかなフォーマットを踏襲しつつ、「1~3作目の3部作とはまた違った、シリーズの新たな展開」を感じさせる要素として、カラー写真にしようということになりました。
モチーフの選定については、作中で印象的な存在のヘリコプター〈チヌーク〉の写真を用いることも検討しましたが、ややミリタリ小説に見えるかも?との懸念から、1980年代の北アイルランドの風景を中心に検討。
打ち合わせた後にいくつかの候補をラフとして送っていただき、いちばんインパクトのあった表紙がこちらです。
↑めちゃくちゃかっこよいですよねこれ? (編集者にあるまじき語彙の少なさで恐縮ですが……)
使用されているのは、1980年代半ばのベルファストのリパブリカン地域で帰宅中の女子生徒と政治的な落書きを切り取った写真です。シリーズ作中でも「SS RUC」としばしばこき下ろされている王立アルスター警察隊が、この落書きではゲシュタポの姿で揶揄されています。
月村了衛氏からいただいた推薦文で帯も作成していただき、入稿。
印刷所から送られてきた色校刷り出しで色味をチェックしていただき、無事完成です!
國枝さんは毎回写真の切り取り方と文字の入れ方が絶妙なのですが、今回はシリーズでも過去最高にキレッキレのデザインを魅せていただきました。これまでのシリーズ未読の方も是非ジャケ買いしてみてください!
【あらすじ】
富豪の夫妻が射殺される事件が発生した。当初は家庭内の争いによる単純な事件かと思われたが、容疑者と目されていた息子が崖下で死体となって発見される。現場には遺書も残されていたが、彼の過去に不審な点を感じたショーン・ダフィ警部補は、新米の部下と真相を追う。だが、事件の関係者がまたも自殺と思しき死を遂げ……。混迷深まる激動の時代の北アイルランドを舞台にしたハードボイルド警察小説シリーズ、第四弾にして最高潮。
【書誌情報】
■タイトル:『ガン・ストリート・ガール』
■著訳者:エイドリアン・マッキンティ/武藤陽生訳
■本体価格:1,300 円(税抜)■発売日:2020年10月 ■ISBN: 9784151833069■レーベル:ハヤカワ・ミステリ文庫