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【SFマガジンインタビュー】奇才、フライング・ロータスとSF──『三体』から新作SF映画まで

今年8月のソニックマニア出演で来日していたフライング・ロータスをSFマガジン編集部が直撃! 彼の作品に影響を与えたSF小説から、今制作中のSF映画まで、お話をうかがいました。SFマガジン2023年12月号に掲載されているインタビューの冒頭を公開します。(インタビュー・翻訳/丸屋九兵衛)

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フライング・ロータスことスティーヴン・D・ビングリー=エリスンは、控えめに表現しても興味深い人物だ。エクスペリメンタル/エレクトロニック/ヒップホップ界の鬼才にして、サンダーキャット(ベーシスト)やカマシ・ワシントン(ジャズ・サックス奏者)からジョージ・クリントン(P ファンク軍団の総帥、アフロフューチャリズムの先駆者の一人)までを擁するレーベル「ブレインフィーダー」主宰。そして、問題作『KUSO』を含む何本かを監督した映像作家でもある。そういった作品や言動の端々から匂い立つSF 色とオタク感から目を離せなかった我々は、ついにフライング・ロータスへの取材を果たした。


早川書房会議室に現れたフライング・ロータスは、想像していたよりも大柄な男だ。聞けば、10回近い来日経験があるという。今回は、ソニックマニア出演の一週間ほども前から東京に滞在しており、渋谷の路上で滑って転んでケガをしたとのことで右腕に赤い包帯を巻いている。そのケガもさることながら、日本という文化が彼のソウルに残した爪痕も相当に深いものであることが徐々に明らかとなるのであった……。

 ──あなたは音楽プロデューサー、ミュージシャン、DJ、ラッパーであり、さらにジョン・コルトレーンのファミリー出身で、とても音楽的なバックグラウンドがあります。一方、わたしも元々は音楽評論のようなことをやっていました。でも、このインタビュウはS! F! マガジン! なので、あなたも思い残すことなくナーディに振り切れてください。というのも、あなたの作品は常にサイエンス・フィクションの匂いがあるので……「匂いがする」と言ってもいいですよね?

ロータス もちろん! 完璧な表現だ。


──まず知りたいのは、あなたにとってSFとは小説? コミック? 映画? アニメ?


ロータス
 全て。どれか一つを選ぶのはタフだ。アレハンドロ・ホドロフスキー原作のコミックブックもたくさん読んでるけど、強いて言うなら映画かな。特に『ブレードランナー』。数えきれないほど繰り返し見た。サウンドも完璧で、あの映画を見て音を聴きながら眠りにつくのが俺の習慣だった。

──続篇『ブレードランナー2049』についてはどう思います?

ロータス 素晴らしいと思うよ。初めて見た時は好きじゃなかったが、それを言ったらオリジナルの『ブレードランナー』だって最初は好きじゃなかったから。『ブレードランナー2049』は前作とヴィジュアルもフィーリングも違う。でも続篇には続篇独自のカラーがあるのもいいことだ。

映画といえば『デューン 砂の惑星PART2』も待ちきれない。それと、AIと人間が戦う『ザ・クリエイター/創造者』のトレイラーは見た? あれはクールだぞ! 『テネット』のジョン・デヴィッド・ワシントンが主演だ。あと、俺はシンヤ・ツカモト(塚本晋也)に会いたい! お願いしっぱなしで疲れてきたが、いつか会いたいんだ。『Tetsuo: The Iron Man(鉄男)』はクラシックだよ。


──ここからはSF小説について。というのも、あなたが『三体』に言及しているツイートを見たのですよ。


ロータス
 第一巻は読み終えた。難解だが、コンセプトはとてもクールだ。異星文明と接触しようとする試みは、とてつもなく悪いアイデアかもしれない。俺がそう考えたのは初めてだ。俺たちはずっと"異星人がいたらいいな、コンタクトできたらいいな"と思ってきた。他の全ての惑星を潜在的な脅威と見なす異星文明なんて考えもしなかったから。


──『三体』以外に好きなSF小説は?


ロータス
 ウィリアム・ギブスンの作品、『ニューロマンサー』とか。フィリップ・K・ディックも好きだ。特に短篇。他にも読みたいクラシックはたくさんある。"読み終えないと"と思っている本もある。『三体Ⅱ 黒暗森林』もそうだ。


──『三体』といえば、中国からあんなSF小説が出てくるなんて思ってました?


ロータス もちろん。誰しも語るべき物語を抱えているからね。それに、誰だって地球以外の世界を見ようとしている。


──あなたの作品に影響を与えたSF小説はありますか?


ロータス もちろん『三体』だよ! あの小説を読み始めてから、以前よりたくさん曲を作るようになった。他にはジェフ・ヴァンダミアの『全滅領域』。映画版『アナイアレイション ―全滅領域―』を見てから、原作に手を出した。『サザーン・リーチ』三部作だということは知っているが、まだ第一作しか読んでない。だが少なくとも、その第一巻は傑作だ。

デリバリ―で届いた餃子にご満悦のフライング・ロータス

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まだまだ続くフライング・ロータスとSFについてのインタビュー。この後、彼が影響を受けたSFアニメや、今まさに制作中というSF映画「Ash」についても掘り下げます。続きは10/25発売のSFマガジン12月号にて!


★話題にあがったSF小説


★フライング・ロータス関連リンク


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