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『 高い城の男』×『パシリム』メカの衝撃はここから生まれた!USJ著者インタビュー 第1回 ディック『高い城の男』の精神的続篇

第二次世界大戦で日独が勝利するという『高い城の男』を思わせる展開に、巨大メカが乱舞する『パシフィック・リム』的なビジュアルで、今年度最大の話題作ピーター・トライアスの『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』。その著者ピーター・トライアスのインタビュー、第1回の今回は、『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』の改変歴史の設定や巨大メカのアイデアはどこから来たかについて語ってもらった。

本インタビューは、『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』刊行時にcakesに掲載されたものの再録です。また、本インタビューの抜粋は、SFマガジン2016年12月号に掲載されています。(インタビュー&翻訳:中原尚哉・編集部)

『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』STORY
第二次世界大戦で日独の枢軸側が勝利し、アメリカ西海岸は日本の統治下にある世界。巨大ロボット兵器「メカ」が闊歩するこの日本合衆国で、情報統制を担当する帝国陸軍検閲局勤務の石村紅功大尉は、特別高等警察の槻野昭子の訪問を受ける。槻野は石村のかつての上官、六浦賀将軍を捜しているという。将軍は軍の高名な軍事シミュレーション・ゲーム開発者だったが、先の大戦で日独が負けた改変歴史世界を舞台とするゲーム〈USA〉を開発し、アメリカ人抵抗組織〈ジョージ・ワシントン団〉に協力しているのだという。石村は槻野とともに六浦賀将軍の行方を探ることになるが——

──『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』(『USJ』)を読む日本の読者にとって、フィリップ・K・ディックの『高い城の男』の世界観と、巨大ロボ「メカ」のビジュアルの組み合わせは興味深く感じられます。『USJ』の改変歴史のアイデアはどこから生まれたのでしょうか?

ピーター・トライアス(以下PT) 第二次世界大戦における太平洋戦線の歴史と悲劇について物語を書くことは、私の長年の願いでした。この分野はアメリカであまり知られておらず、探求されていないと感じるからです。理由はもうひとつあって、フィリップ・K・ディック(PKD)はじつは『高い城の男』の続篇を書くつもりでいながら、さまざまな理由から執筆にいたりませんでした。そのPKDによる数章分の草稿を読んだのですが、ドイツ側に焦点をあてた内容だったのでがっかりしました。私が読みたかったのはアジアと日本側だったのです。当時のアジア人はどんな人々だったのだろう……。それがアイデアの生まれたきっかけです。自分が育った1980年代~90年代に近い時代を舞台に、アジアと日本側に焦点をあてた精神的続篇を書いてみたらどうだろうと。
 リサーチをはじめて当時の文献を読むうちに、彼らの社会といまの私たちの社会との相似性に惹きつけられました。世界は経済不況に直面し、同時にテクノロジーが世界の姿を変えようとしていました。細部はちがえど、構造は不気味なほどよく似ているのです。改変歴史物を通して現在のできごとを描くことが、私たちの問題やジレンマにはっきり光をあてることになるのではないか。究極的にはこれは、戦争が最良の人々さえ変えてしまう物語であり、さまざまな個人が窮地でみずからの人間性をみつけようとする物語です。
 私は戦中を生きた高齢の親族と個人的な縁があり、彼らの体験談を聞きながら育ちました。それは歴史を知り、こんにちの世界にいまも影響をおよぼす巨大なできごとを学ぶ強力な旅でした。
 改変世界にはどんなテクノロジーがあるだろうと考えるのが私の楽しみのひとつだったという理由もあります。シリコンバレーが誕生するまえに破壊されていたらどうか? いまの一般的なPCやマウスはないでしょう。ではコンピュータすらないのか? その世界のビデオゲームはどんなものだったのか? 映画や自動車、さらに料理はどうなっていたのか? 『高い城の男』には納得できないところがあって、ドイツが日本よりはるかに進歩しているように描かれています。60年代ですでに宇宙旅行をし、他の惑星に植民しています。対して、日本帝国は支配権を維持するのがやっとです。その力関係を対等に描くのが、私のやりたかったことのひとつです。日本が対等か、むしろ優勢な軍事力を持っているのでなければ、ドイツが日本と領土を分けるはずはありませんから。日本帝国がメカ部隊を持っているのはそのためです。ナチスが侵入してきたらそれで撃退するはずです。

──この「メカ」はとても印象的ですね。「メカ」のアイデアはどこから来たのですか?

PT 私はアニメのファンで、『新世紀エヴァンゲリオン』『トップをねらえ!』『天空のエスカフローネ』『ガンダム』、最近の作品では『アルドノア・ゼロ』『シドニアの騎士』などが好きです。また、『USJ』のリサーチ中に第二次世界大戦で各国軍が製造した超大型戦車についても興味深く読みました。ドイツは巨大な列車砲をいくつか製造しましたし、大日本帝国陸軍も120~150トンとされるオイ車(大型イ号車)を試作しました。前後2門の砲を持ち、乗員約11名といわれる巨大戦車です。大型潜水艦も建造中でしたし、“Z装置”と呼ばれる殺人光線を発する兵器も研究中だったといわれています。これらの要素が頭のなかで合体したのは、侍のシンボルを考えていたときです。厳密にいえば、1876年の廃刀令で武士階級は消滅しています。しかしメカは、過去と未来のシンボルにぴったりです。戦車の装甲を身にまとい、きわめて強力で機動性の高い巨大機械は、侍の名誉を現代技術であらわしたものです。運用には大きなエネルギーを必要とするので、重要な局面でしか使えません。
 世界初のメカは、どちらかというとシンボル的な意味合いのミサイルランチャーで、敵に恐怖心を植えつけるためのプロパガンダとして使われます。しかしだんだんと強力になり、いつでも姿を見せるようになると、敵が恐れはじめます。戦争をちらつかせることで平和をたもつという二律背反を背負った帝国のシンボルなのです。

第2回「想像力をかき立てる「メカ」イラスト作成秘話」につづく


『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』待望の続篇、『メカ・サムライ・エンパイア』は4月18日に刊行します。前作『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』のように、ハヤカワ文庫SF(上下巻)新☆ハヤカワ・SF・シリーズの同時発売です。

※書影はAmazonにリンクしています。

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