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堂場瞬一の新訳でよみがえる警察小説の金字塔『キングの身代金〔新訳版〕』、この8月刊行!

警察小説の金字塔、エド・マクベインの『キングの身代金』を、堂場瞬一さんの新訳で、この8月、ハヤカワ・ミステリ文庫より刊行いたします!

かつて全米を席捲した長大な警察小説のシリーズがありました。警察小説の巨匠エド・マクベインによる、ニューヨークに似た街アイソラを舞台に刑事たちが奮闘する〈87分署〉シリーズ。1956年~2005年まで、およそ50年にわたり全56作が書き続けられ、アメリカのみならず、日本でも多くの作品が映像化されました。

その映像化のなかでも、日本でもっともヒットしたのは、黒澤明監督の映画「天国と地獄」、原作は『キングの身代金』です。

〈87分署〉シリーズの代表作といえば、第1作の『警官嫌い』をはじめ、『10プラス1』、市川崑監督の映画「幸福」の原作となった『クレアが死んでいる』、そして『キングの身代金』などいくつもあります。

一昨年の2022年、堂場瞬一さんの『小さき王たち』三部作を早川書房より刊行させていた折、堂場さんが、翌2023年に還暦を迎えられるに当たって、新しいジャンルの仕事をしてみたい、ついては昔から興味のあったミステリの翻訳をしたいとお話をいただき、そういうことであればと、堂場さんに相応しい作品を編集部で探し始めました。

そこで、警察小説の第一人者である堂場さんに、警察小説の金字塔を訳していただいたら激熱では!? と編集部で盛り上がり、いくつかの候補を出しましたところ、堂場さんから、貧富の格差からくる社会の分断をテーマにしているところが現代読者にもアピールする『キングの身代金』を、ぜひやってみたい、とお返事をいただき、翻訳をお願いするに至ったのでした。

堂場さんの記念すべき初翻訳作品であり、久しぶりの〈87分署〉シリーズの復活ですから、出すべきときを見定めておりましたところ、2024年2月にビッグニュースが飛び込んできました。

なんと、黒澤映画の「天国と地獄」を、A24&Apple製作で、スパイク・リー監督が、デンゼル・ワシントン主演で、リメイクするというではないですか! 遠く離れた日本とアメリカで、この作品をいま再び世に問うべきだと考えが一致したことに、驚きを禁じえませんでした。え、堂場さん、すごくないですか?

しかも、先日入ったニュースによれば、すでに映画は撮了したとのこと。これから編集に入るのでしょうけれど、公開の日は意外と遠くないかもしれません。

この嬉しい報せと共に、『キングの身代金〔新訳版〕』を8月に読者のみなさまにご紹介できることを、本当に光栄に思います。

気になる堂場さんの新訳ですが、堂場さんの小説のように読みやすく、またマクベインならではの生き生きとした人物描写、息詰まる犯人と警察の攻防が描かれ、現在にも通じる格差社会の問題がドラマ全体を通底し、とても素晴らしい1作に仕上がっています。特に、ラストの遣り取り、見事な回収があるので、どうぞお見逃しなく!

改めて、『キングの身代金〔新訳版〕』の内容をご紹介します。

【内容紹介】
製靴メーカーの役員ダグラス・キングは、社長の引退に伴う社内闘争で密かに株を買い占めて、勝利を目前にしていた。しかし、幼い愛息と間違われて、お抱え運転手の息子が誘拐されてしまう。身代金を払えば、残りの株を買えず、ライバルに負けてしまう。一方、捜査のため、キング家に赴いた87分署のキャレラ刑事らは、当然、キングが身代金の用意をすると考えていたが……

書誌情報
キングの身代金〔新訳版〕
エド・マクベイン(著)
堂場瞬一(訳)
ハヤカワ・ミステリ文庫

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どうぞ8月の発売をお楽しみしてください。

また、9月から3カ月連続で、堂場さんの政治マスコ大河小説『小さき王たち』三部作を文庫化していきます。
併せて、よろしくお願いいたします。

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【著者略歴】
エド・マクベイン
1926年ニューヨーク生まれ。エヴァン・ハンターなど別ペンネームを多数もつ。代表作に〈87分署〉シリーズ、〈ホープ弁護士〉シリーズがある。 1986年にアメリカ探偵作家クラブ賞巨匠賞、1998年に英国推理作家協会賞ダイヤモンド・ダガー賞を受賞している。2005年没。

【訳者略歴】
堂場瞬一
1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。新聞社勤務のかたわら小説を執筆し、2000年秋『8年』にて第13回小説すばる新人賞を受賞し、2001年に同作でデビュー。2013年より専業作家に。〈警視庁失踪課〉シリーズなど映像化作品多数。著書に『over the edge(オーバー・ジ・エッジ)』『under the bridge(アンダー・ザ・ブリッジ)』(以上ハヤカワ文庫)『小さき王たち 第一・二・三部』(早川書房)など。また熱心な海外ミステリのファンとしても知られる。