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話題の新刊『アディ・ラルーの誰も知らない人生』読者モニターの感想ご紹介! (その2) 「情景・心情描写が見事」 「読み応えと読後の余韻が半端ない」

V・E・シュワブ『アディ・ラルーの誰も知らない人生』(高里ひろ訳)、おかげさまで好評発売中です。そのゲラ先読みキャンペーンに参加された読者モニターの方々から本作へ寄せられたコメントを紹介する企画の第2弾をお送りします。いくつか長文の、熱いコメントをいただいています(ありがとうございます)。

前の記事はこちら:
話題の新刊『アディ・ラルーの誰も知らない人生』読者モニターの感想ご紹介! 「読みながら場面のひとつひとつが鮮やかに映像になって浮かびました」 「人生の解像度が上がったように思います」

※以下、ネタバレと感じられる要素もあるかもしれません。ご注意ください。

***作品のあらすじについては、こちらの記事もご覧ください***
・高殿円さんに推薦コメントをいただきました。『アディ・ラルーの誰も知らない人生』2022年2月16日発売!

 闇と取引してしまったことで記録や記憶に残らなくなってしまったアディの300年の遍歴。過去と現在を往き来する構成が巧みで、読み始めたら止まりませんでした。ファンタジーでありながらアディの葛藤や喪失感がしっかりと伝わる情景・心情描写が見事でした。説教臭さのない人生讃歌となっていて多くの人にオススメできる良い作品だと思います

読者モニターT. N.さん

 ひそやかで、でも決して屈しない女性の物語で、とても面白かったです。
 そもそも、アディは自分の人生に多くを望んだわけではありません。自分の人生を生きることを望んだだけなのにそれすら許されず、「自由」と永遠の命と引き換えに人々の記憶に残らないという代償を支払うことになります。
 絶望して生きることをやめてしまってもおかしくない状況で、それでも諦めずにいることができるのはアディが「夢見る者」だからです。小説の中にあった「夢見る者でいるということは、抵抗するということだ」という一節がとても印象的でした。
 この言葉の通り、アディは新しいことを楽しむこと、そして今ここではないどこかを、今ここにない何かを夢見ることは絶対にやめません。そして自分の代わりに「考え」の種を世界に散りばめていきます。

  ロマンティック・ファンタジーとして、とても美しい小説でもありました。
 届かない思い、片思いはある種の美しさを持っていると思います。そして恋の物語は、その恋がいつかはなくなることによってその唯一無二性が保証されているとも言えるかもしれません。相手に覚えていてもらうことのできないアディの片思いは、決して成就することがないが故に、そして「アディは覚えている」からこそ、切なさを増し、一つ一つのエピソードがかけがえのないものになっていると思います。
 
 一方で、物語の根幹を成り立たせているのはそのようなある種のカタルシスではありません。アディにとって恋は、届かない思いを抱き続けることではなく、「夢を見ること」だからです。夢を見て、種を蒔いていく彼女の姿は、悪魔と取引したどんな男性よりも芸術家であると思います。(中略)

 アディのように悪魔と契約しなくても、記録にも記憶にも残らず、いないことにされた女性たち/人たちは歴史上に無数にいます。一方で、そんな人たちが持っていた「考え」の種がどこかで芽吹いているかもしれないと夢想することは救いでもあります。
 もちろん、アディの人生はアディのものであり、そんな無数の誰かを彼女に代弁させることはできません。しかし、語られることも語られないことも共に暴力であるのだから、アディにはいつか、そこから自由に生きていってほしいなという傲慢な願いを抱いています。

読者モニターK.I.さん

 海外の本関連のインスタグラマー/ツイッタラーが騒いでいて気になってた作品だった。
 悪魔との取引により永遠を生きながらえることになったアディ。が、その代償として人に覚えてもらえず、自分の痕跡を何一つ残せなくなってしまった彼女が時を超え、国境を超えたくましく生きていく。彼女がもう十分生きたと思い、悪魔に魂を引き渡す時まで。
 ファウストミーツモダンワールド。上記で書いたようにあらすじはざっくりファウストと一緒だが、ファウストと決定的に違うのはアディーはたった1人の人に出会ってしまったから。300年生きていて初めて感じさせてくれた生への、愛への執着を彼女は捨てられなかった。
 自分が心から信じたものを最後まで手放さなあと戦う彼女は美しい。私はやっと見つけた感情をここまで強く抱きしめられるだろうか。ファウストですらできなかったのに。自分の元に来いと魅惑的な悪魔の魅力に平伏してしまうんじゃないのか。
 逆境になっても少しずつ試行錯誤して自分の生きる道、否、生きられる道を模索し、生きたい道に変えて行く。天晴れアディー。最後の数章は完全にしてやられたよ。初めの部分が少し冗長に感じたけと、上巻の半ばを過ぎたぐらいからページをめぐる手が止まらずワクワクしっぱなし。ただ思ったよりファンタジー色が強かったかな。

読者モニターM.T.さん

 ファンタジーであり、ラブストーリーであり、哲学であり、大河小説のようでもあり、読み応えと読後の余韻が半端ない作品でした。
 一貫してアディとリュックの心理戦がひりつくなか、「死とは、生とは、」ではなく、自己の存在証明とは、「生きているとはどういうことか」を問いかけられるような前半と、加速度的に焦りが生じる後半と、決して飽きることがなく、先を早く知りたいけど終わってほしくない複雑な気持ちで読み終えました。とてもスリリングな読書体験でした。
 他人軸ではなく、自分軸で生きろ、なんて現代社会では聞きますが、自分の輪郭は他人がいるからこそ保たれるのかなと思いました。他人に(全く)干渉されないしないのは確かに自由だけれど果たしてそれで生きていると言えるのか… どこかの民族に「記憶から消えたときに人は死ぬ」みたいな死の概念があったような気がしますが、生きているというのは肉体的な条件に加え、記憶でもあるんだと見せつけられたような気がします。すごく苦しかった。
 歴史を垣間見ている感覚や、「芸術は考えである」といった件もとても印象的です。
 それにしても人間は欲張りで、言葉は難しい…
 チャプターが細かくわかれていたため、とてもテンポ良く読め、面白さも相まって一気に読んでしまう作品でした。 作者が児童書やヤングアダルトファンタジーを書いているからか、はたまた高里さんの翻訳があっていたのか、文章もわかりやすく、情景が思い浮かびやすく映像的にも楽しめました

読者モニターA.K.さん

1714年、フランスの小さな村。
無限の時間を得た代償にアディは誰の記憶にも残らなくなった……
300年にわたる、ひとりの女性の物語

Ⅴ・E・シュワブ『アディ・ラルーの誰も知らない人生』(上下)
高里ひろ 訳
  装画:ゲレンデ  装幀:早川書房デザイン室
単行本 四六判並製 各1870円(税込)
2022年2月16日発売