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短い旅に出た元夫婦。思い起こされるのは過去の怒りや涙、そして確かに存在していた絆──ピュリッツァー賞作家エリザベス・ストラウト新刊『ああ、ウィリアム!』

26歳の作家デビューから今日まで、発表した作品は計9作と寡作でありながらも、現代アメリカ文学界で確固たる地位を築いている作家、エリザベス・ストラウト。2008年刊行の『オリーヴ・キタリッジの生活』ではピュリッツァー賞を受賞しドラマ化もされ注目されました。

そんなストラウトの新作で、2022年ブッカー賞の最終候補にもなった『ああ、ウィリアム!』が小川高義さんの翻訳で12月5日発売されます。『私の名前はルーシー・バートン』の姉妹篇にあたる本作は、ルーシーの元夫であるウィリアムとの今、そして過去を描くことで、確かに存在していた二人の絆を見事に映し出します。

装画:船津真琴
装幀:日髙祐也


私の最初の夫だったウィリアムのことを、 いくらか話しておきたいと思う。

このところ、ウィリアムはつらい目に遭っている。 そんな人はめずらしくもないとして、 いまの私はどうしても言わずにいられない。現在、彼は71歳。

二度目の夫となったデイヴィッドは、昨年、世を去った。 その悲しみのさなかにウィリアムのことでも悲しくなった。まあ、 その、悲しみというのは、自分一人で抱えるもので、 だから恐ろしいのだと思う。たとえて言えば、 ずっと続くガラス張りのビルの外壁を伝っていって、 それが誰の目にも見えていない──。

ともかく、いま話したいのはウィリアムのことだ。

エリザベス・ストラウト『ああ、ウィリアム!』(小川高義訳)より

〇あらすじ


ルーシー・バートンと元夫のウィリアムは、
離婚してからも穏やかな付き合いを続けていた。

ある日、亡き母の秘密を知って動揺するウィリアムに助けを求められ、
ふたりは短い旅に出る。

家族という、時に厄介で時にいとおしい存在は何なのか。
結婚とは、人を知るとは何なのか。
静かな感慨に満ちたブッカー賞最終候補作。

〇著者について

エリザベス・ストラウト

©Leonardo Cendamo

1956年にメイン州ポートランドで生まれる。ベイツ大学を卒業後、シラキュース大学法学部で学位を取得。26歳のとき作家としてデビュー。2008年に発表した第三長篇『オリーヴ・キタリッジの生活』でピュリッツァー賞(小説部門)およびバンカレッラ賞を受賞。同書はフランシス・マクドーマンド主演のドラマ版もエミー賞を受賞するなど好評を博した。2016年に第五長篇『私の名前はルーシー・バートン』を発表。本書はその姉妹篇にあたり、2022年のブッカー賞最終候補に選出された。ニューヨーク市在住。

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〇刊行イベント


12月9日(土)、新刊刊行にあたり、著者(zoom出演)・訳者(現地)登壇イベントを、渋谷のSPBS本店さんにて行います。会場は25名限定、オンラインの配信もございます。この機会をお見逃しなく!


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