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『グレイス・イヤー』の次はこれ! フェミニスト・ディストピア小説のおすすめを紹介

16歳になると"魔力"が開花する少女たちを、一年間、森の奥のキャンプに追放するという謎の風習を持った世界を描く、話題のディストピア小説『グレイス・イヤー 少女たちの聖域』(キム・リゲット/堀江里美訳)。本作はアメリカで、フェミニスト・ディストピア小説としても高い評価を受けています。

『グレイス・イヤー 少女たちの聖域』
キム・リゲット/堀江里美訳

現代社会における女性への抑圧や、男女格差を、フィクションという形を通して浮かび上がらせるフェミニスト・ディストピア小説。今回は、そのジャンルに属する小説のおすすめをご紹介します。

●マーガレット・アトウッド『侍女の物語』(鴻巣友季子訳)


マーガレット・アトウッド/鴻巣友季子訳

ギレアデ共和国の侍女オブフレッド。彼女の役目はただひとつ、配属先の邸宅の主である司令官の子を産むことだ。しかし彼女は夫と幼い娘と暮らしていた時代、仕事や財産を持っていた昔を忘れることができない。監視と処刑の恐怖に怯えながら逃亡の道を探る彼女の生活に、ある日希望の光がさしこむが……。自由を奪われた近未来社会でもがく人々を描く、カナダ総督文学賞、アーサー・C・クラーク賞受賞作。

●マーガレット・アトウッド『誓願』(鴻巣友季子訳)


マーガレット・アトウッド/鴻巣友季子訳

『侍女の物語』続篇、ブッカー賞受賞作。
〈侍女〉オブフレッドの物語から15年後。〈侍女〉の指導にあたっていた小母リディアは、司令官たちを掌握し、ギレアデ共和国を操る権力を持つまでになっていた。司令官の娘として大切に育てられるアグネスは、将来よき妻となるための教育にかすかな違和感を覚えている。カナダで古着屋の娘として自由を謳歌していたデイジーは、両親が何者かに爆殺されたことをきっかけに、思いもよらなかった事実を事実を突きつけられ、危険な任務にその身を投じていく。まったく異なる人生を歩んできた3人が出会うとき、ギレアデの命運が大きく動きはじめる。

●クリスティーナ・ダルチャー『声の物語』(市田泉訳)


クリスティーナ・ダルチャー/市田泉訳

アメリカのあらゆる女性から、言葉が奪われた――。大統領の強制的な政策のもと、すべての女性の手首に、一日100語以上を喋ると強い電流が流れるワードカウンターがつけられた。女性たちは日常生活を制限され、出国することも禁じられた。認知言語学者だったジーンは、夫、息子たち、幼い娘とともに暮らしていたが、ある日彼女の前に大統領の側近たちが現れる。かつて失語症の研究をしていた彼女に、事故で脳に損傷を負った大統領の兄を治療する研究を、ある条件と引き換えに依頼したいというのだが……。“21世紀版『侍女の物語』"と激賞を浴びた、いま、この時代に読むべきディストピアSF。

●アナリー・ニューイッツ『タイムラインの殺人者』(幹 遙子訳)


アナリー・ニューイッツ/幹遙子訳

2022年、時間旅行装置〈マシン〉によって過去への旅が可能となった世界で、ある歴史改変闘争が起ころうとしていた。それは、過去にさかのぼって女性の権利を制限する歴史修正を企む〈コムストック信奉者〉たちと、彼らを止めようとする秘密結社〈ハリエットの娘たち〉の闘いだった──『侍女の物語』×『銀河ヒッチハイク・ガイド』と評された新世代タイムトラベルSF!

●ラリーン・ポール『蜂の物語』(川野靖子訳)


ラリーン・ポール/川野靖子訳

果樹園の蜂の巣で、最下層の蜂として生を享けたフローラ七一七。女王を崇めて労働を称える教理により厳重に管理される蜂社会で、フローラはほかの蜂とは異なっていた。育児室の世話をし、花蜜を集めることになった彼女は、巣の存続の危機が迫るなか、女王にのみ許される神聖な母性を手にしたのだ……。蜜蜂の実際の生態をもとにして蜂の巣の全体主義的社会を描き、『侍女の物語』になぞらえて評された驚くべき物語。

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