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“古生物天国・日本”を新たな視点でめぐる旅! ハヤカワ新書『古生物出現! 空想トラベルガイド』試し読み①

恐竜・古生物ファンの皆さん、お待たせいたしました! 『古生物出現! 空想トラベルガイド』(土屋健 著、ハヤカワ新書)がいよいよ6月20日(火)に発売となります。
今は化石でしか見ることのできない古生物が、もしも現代の日本に蘇ったとしたら、どこでどのように暮らしている? あなたを「if(もしも)」の世界へといざなう、本書冒頭の「はじめに」を特別公開します!

『古生物出現! 空想トラベルガイド』土屋健、ハヤカワ新書(早川書房)
『古生物出現! 空想トラベルガイド』土屋健、ハヤカワ新書

はじめに:古生物のいる世界をあなたに

日本橋といえば、江戸の昔から五街道── 東海道、中山道、甲州街道、奥州街道、日光街道の起点だ。江戸の時代には、木造の太鼓橋。現代では、石造二重アーチがかけられている。
現代の日本橋は、5車線の道路と、その両脇にある広い歩道で構成されている。高さ数メートルの位置にある首都高環状線の高架がやや威圧感あるものの、将来的には首都高は川の底に移り、日本橋の上には青空が戻るらしい。

そんな日本橋は、この数年、しばしば通行止めになる。
厳重警戒の中、日本橋を歩いて渡るのは、どこぞの国の元首……じゃない。
のっそり、のっそりと、ときには1頭の、ときには複数頭のゾウがやってくるのだ。

そのゾウは、肩の高さが2階建てバスより少し小さい程度。長い牙がゆるい弧を描きながら伸びていて、牙の先端は鋭く内側を向いている。
ゾウ、とは言っても、動物園で見る「アジアゾウ」や「アフリカゾウ」じゃない。
このゾウの名前は、「ナウマンゾウ」

アジアゾウと同じ「ゾウ類」に属するけれども、アジアゾウたちとは祖先がちがう。
ちがいは頭部に現れている。ナウマンゾウの頭部には、額から側面にかけて小さなでっぱりがあるのだ。まるで、ベレー帽をかぶっているように見える。ナウマンゾウは、そんなオシャレなゾウだ。

ナウマンゾウは、日本橋を渡るとどこかへ消えていく。誰もその行き先は知らない。
日本橋はナウマンゾウに出会うことができる有名ポイントの一つ。規制線の外で、多くの観光客がカメラやスマートフォンで撮影している。
もっとも、観光客の多くは外国からの訪問客だ。ナウマンゾウは「日本を代表するゾウ」として、海外からの観光客に人気が高い。

もともとナウマンゾウは中国大陸を起源とし、かつての〝対馬陸峡●● 〟を通って日本へやってきた。その後、九州から北海道に至る各地に生息するようになったゾウ類だ。その化石の一つは、日本橋でもみつかっている。
ナウマンゾウは、〝こちらの世界〟では、太古の昔に滅んだ生き物である。
この本で案内する〝あちらの世界〟では、そんな生き物たちが、なぜか●●●現代に〝出現〟している。

あなたが日本で暮らしているのなら、あなたの住む地域にもナウマンゾウは〝出現〟しているかもしれない。
日本各地には、たくさんの化石が眠っており、研究者や愛好家、ときに土木工事の事業者などによって、日々発見されている。
今は化石でしか見ることができない【古生物】が、「もしも●●●現代に〝出現〟したとしたら、どこでどのように生活しているのか」。
そんな「もしもの世界」──〝あちらの世界〟を旅してみよう。

本書制作にあたり、日本各地の博物館の協力を得た。
これからあなたが旅する〝あちらの世界〟では、古生物は現代世界に生き、私たちと共存している。無数の古生物が蘇る中から、各地の博物館の〝推し〟を紹介していこう。
本書を読み終えたとき、あなたの眼には新たな〝こちらの世界〟が広がるはずだ。

本書に登場する古生物の例
本書に登場する古生物の例(本書帯より)

この続きは6月20日発売の『古生物出現! 空想トラベルガイド』でお読みください!(電子書籍も同日発売。いずれも以下リンクから予約可能です)

■著者プロフィール
土屋 健(つちや・けん)
サイエンスライター。2003年金沢大学大学院自然科学研究科博士前期課程修了。修士(理学)。科学雑誌「Newton」の編集記者、部長代理を経て、現在はオフィス ジオパレオント代表。 著書に6万部を突破した『リアルサイズ古生物図鑑 古生代編』や、ファンから「古生物の黒い本」と呼ばれる〈生物ミステリー〉シリーズなど多数。2019年、サイエンスライターとして初めて「日本古生物学会貢献賞」を受賞。

「エピソード2 神奈川県」より イラスト:谷村諒

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