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7/20刊行〈ローダンNEO〉第1巻『スターダスト』。嶋田洋一氏の「解説」を先行公開!

いよいよ7月20日の刊行せまる〈ローダンNEO〉第1巻『スターダスト』。
第1巻に掲載される、嶋田洋一氏による「解説」を先行公開します!
嶋田氏は、正篇である〈宇宙英雄ローダン〉シリーズの翻訳に2007年から参加し、現在も主要な翻訳者のひとりとして活躍されています。
〈ローダンNEO〉シリーズの成立の経緯、ローダン世界の奥行きの深さなどを、初心者にもわかりやすく説明していただきました。新しいローダンを、まさに今、読み始めるべき理由が分かります。

    解  説

                         翻訳家 嶋田洋一  
 
《宇宙英雄ローダン》シリーズの第1話、K・H・シェールの「スターダスト計画」Unternehmen Stardustが本国ドイツで刊行されたのは、1961年9月8日のことだった。
 当時としては10年後の未来に当たる1971年、ペリー・ローダン少佐、レジナルド・ブル大尉、クラーク・G・フリッパー大尉、エリック・マノリ博士の4名が、人類初の有人宇宙船《スターダスト》で月に向かうところから物語は始まる。
 現実世界では、初の人工衛星であるソ連のスプートニク1号の打ち上げが1957年、ソ連のボストーク1号による人類初の有人宇宙飛行と、アメリカによるアポロ計画の開始が1961年、アポロ11号による人類初の月面着陸が1969年と、まさに宇宙開発がもっとも熱を帯びていた時代といっていいだろう。
 そんな時代の熱気の中でスタートし、週刊形式で今もなお継続しているペリー・ローダンの物語だが、第1話から60年近くが経過した現在から見ると、初期の設定はやはり古びてしまっている感が否めない。
 たとえば〝コンピューター〟といえば、当時のイメージでは建物ひとつを丸ごと占拠して、市松模様のパネルが明滅し、オープンリールのテープが動いたり止まったりをくり返す、といったものだった。てのひらサイズにまで小型化されたコンピューター(スマートフォン)がこれほど普及し、話しかければ音声で情報を提供してくれるという、まさに〝巨大ロボット脳ネーサン〟のようなことができるようになるとは、想像もつかなかった。
 逆に、まさか21世紀にもなって月面基地のひとつさえ存在しないとは、やはり思ってもいなかった。
 現実とフィクションの乖離が大きくなりすぎたら、どうすればいいか? 現実は変えられないから、フィクションのほうを変えてしまえばいい……と思ったのかどうかは知らないが、舞台を現代から見た近未来に移してリスタートしたのが、この《ローダンNEO》シリーズである。
「あらためて始まる未来“Die Zukunft beginnt von vorn”」をキャッチフレーズに構想されたこのシリーズは、当初は〝秘密プロジェクトX〟と呼ばれ、オリジナル・シリーズの開始から50年後の2011年9月30日に第1巻『スターダスト』Sternenstaubが刊行された。
 ローダンたちが月に向かう時期は2036年になり、当然だが人類初の有人宇宙飛行という設定も変更され、連絡の途絶えた月面基地の調査に向かう形となった。全体として話の大枠に変更はないものの、NASAを取り巻く環境や国際政治状況などを21世紀に合わせて調整したものとなっている。
 さて、まずはこの巻の著者であり、《ローダンNEO》全体の方針を決めるプロット作家でもあるフランク・ボルシュのことを紹介しておこう。
 ボルシュは1966年、南ドイツのプフォルツハイム生まれ。現在はフライブルクに住んでいる。学生時代からさまざまなアルバイトを経験し、アメリカン・コミックスなどの翻訳者やインターネット・メディアの記者を経て、1998年に《宇宙英雄ローダン》シリーズの作家陣に加わった。初登場は2206話Gesang der Hoffnungなので、邦訳が現在のペースで続いたとして、日本での刊行は2041年ごろ? 今のところ正篇18話、《ローダンNEO》9話を書いている。今後もローダン世界に留まりつづけると言明しているので、引きつづき主要作家として活躍を続けると思う。
 正篇同様、《ローダンNEO》も人気は高く、現時点で最新刊は2017年6月15日刊の第150話Sprung nach Andromedaとなっている。刊行は隔週で、雑誌形式のいわゆる〝ヘフト〟のほか、電子書籍版とオーディオ・ブック版もある。4話分を1冊にまとめたハードカバーも出版されている。執筆は正篇と同じく複数作家によるローテーション方式で、話の大きな区切りである〝サイクル〟は、NEOでは〝シーズン〟と呼んでいる(原語ではStaffel=チーム、隊列)。邦訳は今後、第1シーズンに当たる第8巻までが、8カ月連続で刊行される予定である。
 因みに、正篇のほうはすでに2912話Der letzte Ga-lakt-Transfererに達していて、邦訳も549巻(1097・1098話)『石の使者』が本書と同時刊行されている。
 ところで、正篇には《アトラン》シリーズという、アトランを主人公とする派生物語群が存在する。《宇宙英雄ローダン》シリーズとは別の、ひとつの独立したシリーズを形成しているものの、その物語が展開するのはあくまでも同じ宇宙である。
 これに対して《ローダンNEO》のほうは、正篇とは無関係の、別の物語群として扱われている。登場人物の特性なども解釈しなおしたということで、ローダンやブルたちの性格も微妙に異なっているようだ。いわばパラレル・ワールドにおける、〝ありえたかもしれないもうひとつの未来〟ということだろう。
 わたしはもともと《宇宙英雄ローダン》シリーズを読んでおらず、2007年に翻訳を担当することになって、あわてて1巻から〝目を通した〟口だ。いわば資料として大急ぎで斜め読みをしたわけで、とても物語を楽しんだとはいえない。その意味では、最初から読み続けていた読者には、途中で脱落した方たちにさえ、嫉妬のようなものを感じていた。
 それが今、こうして新たに最初から物語を楽しんで読み進める機会を得ることができた。まったく白紙の状態で、というわけにはいかないが、今からわくわくしている。古強者のローダン読者のみなさんも、途中で脱落した方たちも、もう一度この〝あらためて始まる未来〟を楽しんでみてはいかがだろう。
 そしてまた、ペリー・ローダンの物語を読んだことがなかったみなさん、この心躍る宇宙活劇の世界を、ぜひいっしょに楽しんでみませんか。
 あ、正篇の邦訳もまだまだ続きますので、あちらもよろしくお願いします。

 人類をはるかにしのぐ科学力を持ったアルコン人。月面に不時着していたその宇宙船を発見し、アルコン人のクレストとトーラと接触したローダンは、超文明の力をどう扱うべきか苦悩する。彼が出した結論とは……
 というわけで、次巻では〝ローダン無双〟が展開するはず。個人的には序盤の最大の見せ場のひとつと思っているので、お楽しみに!

嶋田洋一(しまだ・よういち)
1986年から翻訳者として活動。英米独の数多くの作品を翻訳。ケン・マクラウド『ニュートンズ・ウェイク』、ダン・シモンズ『ザ・テラー―極北の恐怖』、カリン・ロワチー『戦いの子』、スティーヴン・L・ケント〈共和国の戦士〉シリーズ、デイヴィッド・エディングス〈エレニア記〉シリーズ(以上、ハヤカワ文庫)、ダン・シモンズ『エデンの炎』、マイクル・フリン『異星人の郷』、ピーター・ワッツ『ブラインドサイト』他多数。2003年、マーク・Z・ダニエレブスキー『紙葉の家』でBABEL国際翻訳大賞・日本翻訳大賞を受賞。

〈ローダンNEO〉第1巻『スターダスト』は7月20日発売!
著/フランク・ボルシュ 
訳/柴田さとみ 
翻訳協力/静川龍宗(クロノクラフト)


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