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劇場アニメ『僕愛』『君愛』ヒロイン・蒔田彩珠インタビュー「普段SFになじみがない人でも楽しめる」

乙野四方字さん原作の劇場アニメ『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』の公開まで、あと1日! 本欄では、SFマガジン2022年12月号に掲載予定、蒔田彩珠さんの独占インタビューを先行掲載します。

まきた・あじゅ
2002年8月7日生まれ。神奈川県出身。2012 年に出演した是枝裕和監督のドラマ「ゴーイング マイ ホーム」で頭角をあらわし、以降も「海よりもまだ深く」(ʼ16)、「三度目の殺人」(ʼ17)、「万引き家族」(ʼ18)で重要な役どころを演じた。映画「朝が来る」('20)で第45 回報知映画賞助演女優賞ほか多数の映画賞を受賞。その他の出演作にNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」、 TBSドラマ「妻、小学生になる。」などがある。

■二作品のヒロイン、それぞれの強さ
──蒔田さんが演じられた栞は、『僕が愛したすべての君へ』(以下、『僕愛』)『君を愛したひとりの僕へ』(以下、『君愛』)の物語の切なさを象徴しているキャラクターですね。役づくりで意識されたポイントを教えてください。

蒔田 最初は、暦に甘えている妹っぽい女の子なのかなと思っていたのですが、じつは栞の方がしっかりしていて、精神的に暦を支えているんですよね。そういった芯のある女性としての部分と、儚さのバランスが難しかったです。

──アフレコを見学させていただいたのですが、蒔田さんの繊細な声が栞のキャラクターにぴったりでした。

蒔田 ありがとうございます。映像と違って、声だけでお芝居をするときは自分のビジュアルから離れた役も演じられるので楽しいですね。栞のおしとやかで可愛らしいところは、素の自分にはない部分だと思うので演じていて新鮮でした。

──お気に入りのシーンはありますか。

蒔田 「二人で逃げよう」と言って、暦と栞が大分のさまざまな場所を巡る場面ですね。親同士が再婚することで、自分たちは恋人になれないと思い込んでしまう。二人ともまだ子どもで、知識がないからこそ勢いで行動してしまうんですが、大人にはないまっすぐさを感じて胸が熱くなります。泣く演技があったんですが、そのタイミングが難しくて、一番苦労したシーンです。

──声だけでのお芝居でも、涙が出てくるのですか。

蒔田 感極まってウルっときました。

──アフレコでは、暦役の宮沢氷魚さんと一緒にブースに入ってお芝居をされたんですよね。

蒔田 やっぱり言葉を交わすことで気持ちが動くので、目の前に相手役がいてくれてずいぶん助けられました。栞はおとなしそうなキャラクターに見えて、意外にも感情をあらわにする場面が多くて難しかったんですが、暦くんとのやりとりでは自然な雰囲気を醸し出せていたら嬉しいです。

──栞というキャラクターを演じていて、印象的だったことはありますか。

蒔田 栞は、自分だけがずっと交差点にいて辛いはずなのに、いつも笑っているんですよね。泣くのではなく笑うという選択をするのが素敵だし、栞の強いところだなと思います。和音のように直接的に暦を引っ張って支えているわけではないのですが、暦にとっては栞の笑顔が精神的な支えだったんじゃないかなと思います。子どもなんだけど、大人の余裕のような、ちょっと達観したところがある人ですね。そこに暦は惹かれたのかもしれないですね。

■映画の楽しみ方
──原作小説と同じく、映画も「どちらから観ても楽しめる」ことが魅力のひとつとなっていますね。

蒔田 私は『君愛』の方から読んだので、ピュアな恋愛のストーリーにハッピーエンドで大満足でした。ただ橋本愛さんから「『僕愛』から読むと、さらにエモい」と言われたので、そちらの順番でも読んでみたかったですね。映画を観る方も迷いどころだと思いますが、自分はどっちの終わり方が好きなのか、じっくり考えてみていただければ(笑)。二作品は監督もスタジオも違うので、それぞれに違った魅力が出ていると思います。

──「並行世界」の設定についてはいかがでしたか。

蒔田 ひとつひとつの出来事や、選択の積み重ねによってまったく違う結果になる、というのは現実でもそうですよね。あの時こうしていれば今は別の仕事をしていたかも、とか想像することは私もよくあります。なので、『僕愛』『君愛』は普段SFになじみがない人でも世界観をスッと想像できて楽しめるのではないでしょうか。

──どんな人に観て欲しいですか。

蒔田 TikTokを見ていたら、この映画の宣伝が流れてきたんですよ! すごく面白そうでした(笑)。なのでそういったSNSをよくチェックするような、私と同世代の方にはもちろんおすすめです。映画では恋愛要素だけでなく、いろいろな親子の関係性も描かれているので、自分の母くらいの世代の方の感想にも興味がありますね。親目線と子ども目線では、また見え方が違ってくると思います。
(二〇二二年八月十七日/於・都内某所)

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