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【ご当地・北海道で売れてます!】北海道、そして留萌本線に捧ぐ郷愁のミステリ『留萌本線、最後の事件 トンネルの向こうは真っ白』刊行記念、山本巧次インタビュー

4月16日頃から山本巧次さんの新刊留萌本線、最後の事件 トンネルの向こうは真っ白が発売になります。ご自身も「鉄チャン」である山本巧次さんは何度も北海道を訪れて本作を執筆されました。またいつか北海道を旅したい、という思いも込めて、著者インタビューを公開致します。(イラスト:草野碧)

留萌本線、最後の事件 トンネルの向こうは真っ白』山本巧次

Q:今回、留萌本線を題材にしたきっかけを教えてください。
山本:早川書房から、廃止路線を題材にという提案があり、ならばと検討しました結果、やはり北海道のローカル線が、旅情的にもいいだろうと思いました。実際に廃止が提案されている路線の中から、線形や風景に変化のある留萌本線を選びました。犯行の舞台に使えるトンネルがあったことも理由です。

Q:本作執筆にあたって、取材はどのようにされましたか?
山本:車で一度、沿線をくまなく走って道路側からの情景と全駅の様子を確認しました。後日、実際に乗車して、通信の具合や窓からの景色を確かめました。留萌警察署の外観と周囲の様子も見ましたが、さすがに中へは入れませんでした。

深川駅

深川駅の様子(写真:山本巧次)

Q:今回、鉄道ならではの“トンネル密室”が登場します。こうした仕掛けはどんなときに思いつくのでしょうか?
山本:ハイジャックという事案ですから、警察が容易に接近できないシチュエーションが必要でした。そういう場合、列車を止めておくのはトンネルか鉄橋しかないな、と考えていたのですが、今回は恵比島駅~峠下駅間にちょうど適当なトンネルがあったので、「ここだ」と思いました。

Q:留萌本線の魅力、車両の魅力を教えてください。
山本:留萌本線は比較的地味な路線ですが、広大な農地の中から人家もない山の中へと、景色が大きく変化します。山の木々は秋には綺麗に色づくので、意外なほど美しい車窓になります。使われているキハ54型車両は作品中でも解説していますが、国鉄時代最末期の製造で、最近の新車にはない重厚さがあります。いかにも鉄道車両、という雰囲気がいいですね。新幹線0系の座席が、生地を張り替えて使われているのも嬉しいです。

キハ54形車両

留萌本線の車両(写真:山本巧次)

Q:北海道、留萌の土地では、どんなところに魅力を感じていますか?
山本:北海道の魅力は、なんと言ってもその雄大さでしょう。国内では北海道以外で味わえない空と視界の広さに、訪れるたび癒されます。留萌周辺には目立った観光地はないのですが、夏はどこまでも青く、冬は時に荒ぶる日本海の海景と、海の幸が堪能できます。

Q:ご自身も「乗り鉄・撮り鉄」の山本さんがお薦めする、留萌本線の写真撮影スポットはありますか?
山本:障害物が少ないので比較的どこでも撮りやすいですが、峠下駅とその周辺がよく紹介されています。峠下では上下列車の行き違いもあるので、そのシーンを狙うのもいいでしょう。季節は秋の紅葉(10月頃)か、冬の雪景色がいいと思います。

峠下駅

峠下駅付近(写真:山本巧次)

Q:本作では留萌本線に愛着がある人、廃線になるかもと知って乗りに来た人、ネットに動画を上げたかっただけの人など様々な人物が乗車しています。こうしたキャラクターはどのように設定されたのでしょうか。また、特に気に入っている人物などはいますか?
山本:「鉄チャン」している人たちの中に、実際にいるキャラです。中でも「鉄チャン」の特徴を凝縮した感のある浦本には、即感情移入できます(笑)。

Q:本作は警察小説でもあります。北海道を舞台に警察の活躍を書くうえで、気をつけたことはございますか?
山本:佐々木譲さんの〈道警シリーズ〉が有名ですので、道警を描くのは僭越なのですが。何しろ北海道は広大で、道警の下に普通の県警本部並みの管轄区域を持つ方面本部があります。さらにその下の所轄署や交番の担当区域も非常に広い。そのあたりに留意しましたが、あくまでフィクションですので、ストーリーの都合を優先していますから、実際の道警の動き方とはだいぶ異なると思います。ご容赦のほどを。

Q:北海道を走る鉄道の中で、他にも山本さんが興味のある路線はありますか?
山本:日本三大車窓の狩勝峠がある根室本線、釧路湿原を通りタンチョウヅルや流氷も目にすることができる釧網本線などです。いずれも北海道の鉄道でしか見られない景色です。

Q:読者へ一言お願い致します。
山本:このたびは留萌本線を舞台にしましたが、北海道の鉄道には他にない魅力がいっぱいあります。是非、北海道の鉄道旅を楽しんでください。また、ローカル線は数字だけでは割り切れない、地元をはじめとするさまざまな方の思いを乗せています。そのこともあわせてご理解いただけたら、幸いです。

留萌本線、最後の事件 トンネルの向こうは真っ白』山本巧次

鉄道ファンの浦本は廃線前の撮りおさめのため、北海道・留萌(るもい)本線に乗車した。だが発車後まもなく発生したハイジャック事件に巻き込まれ、乗員乗客4名とともに車両内に閉じ込められてしまう。前代未聞の事態に頭を悩ます北海道警察の安積(あさか)らのもとに、犯人から連絡が入る。「北海道議会議員の河出(かわで)を交渉役に、身代金として1億7550万円を要求する」犯人はなぜこんな事件を起こしたのか? 鉄道を愛する著者がおくる、郷愁のミステリ


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